記者インターン

世紀を超えたづんだ「村上屋餅店」

記者インターン 記者インターン
441 views 2014.02.28
一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。3月5日から春の回が始まるのを前に、昨年8月と10月に参加した学生たちが仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪

世紀を超えた「づんだ」

若草色の生地に「づんだ餅」と白抜きされたのれんをくぐると、ショーケースに餅や大福、まんじゅうが整然と並ぶ。仙台市青葉区北目町にある村上屋餅店は、今では仙台名物となった「ずんだ餅」を初めて商品化した店として知られる。

表記は「ずんだ」が一般的だが、ここでは「づんだ」。「豆を打って作る豆打(づだ)」がなまったという由来を大切にしている。

1877年の創業以来、手作りを売りにしてきた。これも店主、村上康雄さん(59)のこだわりだ。

▲『だれにも真似できない』と伝統の味に自信を持つ村上康雄さん=仙台市青葉区北目町の村上屋餅店

仕込みは毎朝早くから村上さんが一人で行っている。つきたての餅を同じ重さになるように手でちぎる。づんだとなる枝豆の薄皮もひとつひとつむいて、すり潰す。絶妙な甘さの中に、しっかりと豆の味が生きている。

「こんな時こそ甘いものが食べたい」。東日本大震災の2日後、食料や物資が入ってこない状況で、再開した店の前には長蛇の列ができた。甘さに安らぎを求めた被災者の期待に応えるべく、休むことなく在庫の限り餅を練った。「材料があったから。やらない理由はなかった」

栄養価の高い餅を被災地石巻までわざわざ届けに行く客もいた。2年5カ月たった今でも、「あのときはありがとう」と店を訪れる客が後を絶たない。

手作りだからこそ生み出せる味。常連客の女性(76)は「あたしのひいおばあちゃんのころから通っているのよ」と誇らしげに話した。一緒に来ていた娘は「村上さんのづんだは特別。他の店のずんだは“づんだ”じゃないよね」とうなずきを返した。

本物の味を求めて全国から足を運ぶ人が多く、客足は10分と途切れることはない。伝統を受け継ぐ変わらぬ味は世代や距離を超え、愛される。

かつては伊達家御用達の和菓子屋だった。137年の歴史を紡いできた村上屋餅店だが、村上さんの娘二人は、それぞれ家業とは別の道を歩んでいる。だからといって、代々受け継いできた技を他人に教ええるつもりはない。「俺が死んだら、終わりだよ。だから生きてるうちに食べに来て」

河北新報社インターンシップC班
笹山 大志(立命館大 2年)
ボハーチ ダービッド(東北大博士課程 2年)
遠藤 有紗(山形大 1年)
佐藤 知佳(東北学院大 3年)
※名前をクリックするとその人の個人原稿が見られます。
next_action

この記事を書いた人

記者インターン
記者インターン
一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪