記者インターン

「PHOTOスタジオONE」写真で紡ぐつながり

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140 views 2019.04.11

2019年2月から3月にかけて、一般社団法人ワカツクと河北新報が主催した記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が執筆した記事を紹介します!

写真で紡ぐつながり

「はい笑ってね~もうちょっと!」。斎藤正善さん(66)は、カメラの前に緊張の面持ちで立つ着物姿の女性に声をかけ、自然な笑顔を引き出す。
「良い表情でしょう」。プレハブの店内に掲げられた写真を、誇らしげに眺める。
名取市美田園にある写真館「PHOTOスタジオONE」は、東日本大震災で被害にあった店が集う仮設商店街にある。
祖父の代から87年続く店の店主である斎藤さんは、“その人らしさ”を撮ることを大切にする。
「このおじいさんは煙草好きだから、煙草も写真に入れたんだ」。お客さんとの会話から、個性や人柄を引き出す。

震災により発生した津波で、家族は助かったが、美田園から沿岸部へ7、8キロ離れた名取市閖上(ゆりあげ)にあった店舗兼自宅は、跡形もなくなった。
たった1台のカメラが残った。「記録として保存しておかなければ」。震災直後から瓦礫であふれた閖上の姿を撮り続け、知人の後押しもあり、後世に残すために写真集として出版した。
避難していた人や、支援で訪れた人がうわさを聞いて、斎藤さんの元へ買いに来ることもあった。「家族は無事だったか?今はどちらに?」と、会話の中で被害状況を確認し合った。

「写真が人とのつながりをつくってくれた」。店をもう一度やりたいという思いが沸き立った。
カメラマン仲間による支援のおかげで、最低限の機材が整い、2012年2月に仮設店舗で再開した。大切な写真が傷つき、心を痛めた経験から、写真の強度を高めるラミネート加工も取り入れた。
客足も徐々に戻り、震災前に来てくれていたお客さんが、子どもを連れて小学校入学の記念撮影にやってきた。「通い続けてくれるのはうれしいな」とはにかむ。

震災から8年目の今年、転機を迎える。12月の仮設商店街の閉鎖に伴い、かさ上げされた閖上に店を再建予定だ。
「地元をこれからも見守っていきたい」。地域の笑顔を撮り、写真に残していく。昔馴染みのお客さんが見つけやすいよう、店名を元の「さいとう写真館」に戻し、シャッターを切リ続ける。

取材後記

「写真への愛」と「地元とのつながり」がにじみ出る記事にしたいという思いで執筆しました。スマートフォンなどの電子機器で手軽に写真が撮れる時代ですが、「写真館」で撮ってもらう写真にしかないものがあります。お客さんとの会話を大切にしながらシャッターが切られ、現像された写真は、細部まで綺麗な上に想いが込められていました。

斎藤さんは、地元でのつながりを大切にされていて、「写真」という形で残していくことに強い想いを持っていらっしゃる方でした。その想いを丁寧に描写していく執筆活動はエネルギーの要るものでしたが、同時にやりがいも感じられました。「人々の笑顔を撮り続けたい」と語って下さった斎藤さんの笑顔が、とても印象的でした。

期間中、4回も取材に応じてくださり、本当に感謝しています。会うたびに冗談めいた会話が増え、楽しく取材をさせていただきました。記者という職業の魅力を身を持って体験することができ、大変嬉しく思っています。このご縁を大切にし、閖上に新しく建設される予定の写真館を訪れ、写真を撮ってもらいたいです。

取材協力

PHOTOスタジオONE(旧 閖上さいとう写真館)

文・写真

河北新報社インターンシップ19期E班 
横浜国立大学2年 江頭 香暖(2019年3月当時)

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この記事を書いた人

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一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪