テラス

「有限会社まるしげ」佐藤智明さん【いぐするテラス】

長崎 陽平 長崎 陽平
825 views 2019.04.18
今年度最後のいぐするテラス。ゲストは、飲食店「漁亭浜や」を運営する、有限会社まるしげ(名取市)の代表取締役、佐藤智明さん(56)です。

浜やの歴史がまとめられた動画を、参加者みんなで視聴した後、お話を聞きました。
※動画は、浜やのホームページからも見られます。

苦難の経営、震災を経て得たもの

佐藤さんは宮城県涌谷町出身で、ドライブインを経営する家の長男として生まれました。学生の時は、やんちゃな生活を送っていたといいます。

料理人としての修行を経て、名取市閖上(ゆりあげ)の鮮魚店の婿養子となり、1993年には飲食業に参入して「漁亭浜や」が開店。
2001年からは代表取締役として、経営に力を入れてきました。震災前には社員数が20名ほどいて、資金面でゆとりのある経営ではありませんでした。

そして、2011年3月11日に東日本大震災が発生。佐藤さん自身、ギリギリのところで生き延びることができたものの、店や自宅がすべて津波で流されました。
3月25日の給料日。かき集められるだけのお金を集めても給料の3分の2までしか届かず、社員1人1人を思い浮かべて心が苦しくなりながら、各社員の家を周って解雇を告げました。

その2日後、3月27日に開催された「ゆりあげ港朝市」。解雇されたはずの社員の皆さんが、佐藤さんを手伝いにやってきました。そして、お客さんの「朝市を心待ちにしていた」という言葉を聞き、社員の方々やお客さんの愛を感じたといいます。

佐藤さんは、会社存続を決断。さまざまな人たちの協力もあって物件や資金を確保し、震災からわずか5か月後の8月、仙台市長町に見事にお店をオープンさせました。

夢を実現するためのヒント

佐藤さんは、経営者の先輩に誘われて、代表取締役になった2001年から、水曜の朝5時に開催される「異業種勉強会」に参加しています。

初めは、朝早くから何のために参加するのかわからず、講演や他の参加者と話す機会があっても、話されている内容が理解できなかったりうまく話せなかったりして、悔しい思いをしたといいます。

しかし、佐藤さんは持ち前の負けず嫌いを発揮し、勉強会に通い続けました。
「まずは得意な“話を聞くこと”からチャレンジして、話を聞いていくうちにだんだんとプラス思考が身につくようになり、勉強会で言われたことをやってみる…というのを繰り返しました。今思えば、そうやって成長できたんだなと」。

夢を叶えるための一番の秘訣は、「目標を具体的に思い浮かべ、達成の日にちを決め、毎日それを達成するために唱和すること」だといいます。
「人間は、思い浮かべたことしか目標にできないし実行できないので、できるだけイメージしやすいようにしておくことが重要だ」。

佐藤さん自身、震災があっても会社やお店を続けてきたり、仙台市内のマンションに住んだりと、立てた目標を実現してきました。

佐藤さんが生きていく上で大事にしている考え方は、「目に見えないものを積み上げる」ということ。目に見えないものというのは、文字通り“数値化しにくい人間力”と呼ばれるものです。これらは、仕事、家庭、生活、倫理から構成され、バランスよく積み上げていくことが必要だといいます。

この「目に見えないものを積み重ねること」によって、追い込まれた時や予想がつかない場面での対応に、大きな違いが出てくると佐藤さんは語りました。

取材を終えて

これまで様々なゲストの方から仕事内容や働き方、仕事への思いはたくさん聞いてきましたが、生き方や生活に関することはなかなか聞くことがなかったので、お話を聞けて良かったです。

震災ですべてを失ったにもかかわらず、社員やお客さんが離れなかったというのは、佐藤さんの人間力のたまもので、自分もそのような人になりたいと思いました。また、自分自身、人の上に立つ機会が多くなってきているのですが、佐藤さんのように自らの経験を語ることによって、人を鼓舞できるような人になりたいと思いました。

「夢を明確に思い描いて、叶える日付を決めて、毎日唱和する」という方法を毎日続けて夢を叶えたと聞いて、言霊の力、潜在意識の大切さを感じました。目に見えない力は身につけにくいもので、学生はスキルなどにとらわれてしまいがちなので、バランス良く伸ばしていきたいです。

取材協力:有限会社まるしげ
文章:長崎 陽平(東北大学4年)
写真:寺尾 まりえ(ワカツク)

4月25日「かわまちてらす閖上」グランドオープン

名取市閖上の新たな商業施設「かわまちてらす閖上」が、4月25日(木)にオープンします!浜やをはじめ、地元の飲食店や水産加工品などの販売店が、20店舗あまり軒を連ねます。

閖上地区には、すでに閖上港朝市や水産加工団地・小中一貫校や復興住宅などが立ち並んでいます。この商業施設には、生まれ変わった閖上のまちを照らし、川辺の憩いのテラスとなるよう願いが込められています。

ぜひ訪れてみてください!詳しい情報は、かわまちテラス閖上のFacebookページで発信されています。

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この記事を書いた人

長崎 陽平
長崎 陽平
富山出身、いつまでも食べ盛りの大学生。仙台は安くて、食べ物の量の多い店がたくさんあるので、誘惑と戦う日々を過ごしています。目標は仙台のラーメン店制覇!最近は自炊に奮闘中。