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「東北食べる通信」成影沙紀さん

長崎 陽平 長崎 陽平
809 views 2019.07.25

東北食べる通信、成影・新編集長の生き方

6月19日に仙台市のファイブブリッジで開催された【みやぎ「食ひと」交流サロン】に、学生記者として参加してきました。

ゲストは、5月1日に「東北食べる通信」の新編集長に就任した、成影沙紀さん。


東北食べる通信とは…独自の哲学でおいしい食べものを作り続ける東北各地のスペシャリストたち(生産者)にクローズアップした特集記事とともに、その方々が収穫した食べものをセットでお届けする月刊誌です。

東北食べる通信では、生産者の方々の過去の出来事や思いを、“根掘り葉掘り”取材するという成影さん。

自分自身のことはあまり語ってきませんでしたが、今回は自分と向き合い、生い立ちや仕事への思いをお話ししてくれました。

秀才からの転落

成影さんは、京都出身の4人姉妹。学業優秀で、中学では成績トップ、京都で1番の進学校に進みました。

京都じゅうから秀才が集まる高校で、布団に机と勉強道具を持ち込むほどの勉強漬けの日々…メンタルを病み、閉鎖病棟に入院するほどでした。
同じ病棟に入院している人が、両親へ強く当たっている様子を見て「このままではだめだ」と思い、そこから本をたくさん読むようになったといいます。

22歳の時に、北海道の大学に入学。選んだ学部は「農学部」で、人と話すより植物と話したいという理由からでした。

自分のことがどうでもよくなる社会問題に出会う

20歳の時、東日本大震災が発生。
多くの人が現地へボランティアに行く中、踏み出せないでいましたが、友人に言われた「偽善でも行かないよりはまし」という言葉を受けて、24歳の時に福島県南相馬市を訪れました。

以前は畑で、震災後に原発事故の影響で使えなくなってしまった土地を訪れた際に、原発による事故は「私たちにも責任がある」と感じ、この問題を解決していきたいと思ったといいます。

食べる通信の新編集長へ

一度は就職し営業の仕事をしていましたが、東北食べる通信の初代編集長・高橋さんとの出会いをきっかけに、東北食べる通信の仕事に就きました。

当初、高橋さんが記事を執筆していましたが、成影さんはその記事に対して不満を持っていたといいます。
「もっと生産者の皆さんの深い思いを書きたい」との思いから、現在は最低3回は生産者のもとに出向き、過去の出来事から現在の思いまで根掘り葉掘り取材しています。

▼たくさんの取材ノート

東北食べる通信は「エッセンス(本質)」と、そこから得られた「教訓」を軸としていています。
その理由は、成影さん自身の“良く生きるためのヒントが欲しい”というところから始まっているといいます。

人生に意味なんて必要ない

参加者から成影さんへの質問タイムに、「人生の軸はなにか?」という質問が出ました。
この問いに対する成影さんの答えは、「人生に目的を設定するのは割に合わない。辛いものが多すぎる」。

これは、何事にも全力で走り続ける成影さんだからこそ生み出せる、エッセンスが詰まった言葉だと感じました。

そんな成影さんは、「今の仕事への満足度は?」と聞かれると、はっきりと「100%」と答えました。「人(生産者)の人生を語っているのに、100%といえないのは失礼に当たる」というから理由です。

インタビューに最低3回は通うという、成影さんの思いの強さを感じ取れる言葉だと思いました。

取材協力:東北食べる通信
文章:長崎 陽平(東北大学4年)
写真提供:小野 悠介(当日参加された方に撮影いただいた写真です)

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この記事を書いた人

長崎 陽平
長崎 陽平
富山出身、いつまでも食べ盛りの大学生。仙台は安くて、食べ物の量の多い店がたくさんあるので、誘惑と戦う日々を過ごしています。目標は仙台のラーメン店制覇!最近は自炊に奮闘中。