テラス

「佐々木酒造店」佐々木洋さん・「ワンテーブル」本多凛さん【いぐするテラス】

長崎 陽平 長崎 陽平
484 views 2019.03.14
2月20日のいぐするテラスは特別版!名取市の企業2社からゲストを迎え、それぞれの企業に直接訪問してきました。震災からまもなく8年を迎える、名取市閖上(ゆりあげ)の様子も見学しました。

参加したのは、仙台市内の大学や、復興庁事業のインターンシップで滞在している首都圏や関西などの大学生、あわせて8人。

震災の被害に負けない、日本酒への思い

1人目のゲストは、「有限会社 佐々木酒造店」専務取締役の佐々木 洋さんです。

「有限会社 佐々木酒造店」は明治4年に創業し、名取市閖上にお店を構えていました。ところが、2011年3月11日の東日本大震災で酒蔵が被害を受け、操業ができなくなりました。

崩壊した酒蔵を見ながら、佐々木さんは「絶対にもう一度、閖上で日本酒造りをやろう」と決意したと言います。酒造りに必要な機材は、何もありませんでした。しかし、全国の酒蔵から支援を受け、仮設工場で酒造りをスタートさせることができました。

今年8月には、元の場所に店舗を再建し、10月には新しい酒蔵で日本酒造りがスタートする予定です。

お酒の力で、地域を活性化

佐々木酒造店の日本酒は、すべて県内の原料からできています。これは、地域のものを使い、地域の特長を生かした製品を作ることによって、地域活性化に貢献するという佐々木さんの思いからです。

特に、若い世代に向けてのメッセージとして「地域を楽しむセンスを身につけてほしい」と話す佐々木さん。若い世代の人たちが、日本酒を飲み、地域のことを知り、シナジーを生み出してほしいというのが、佐々木さんの願いです。

最後に、他の日本酒に負けないところを尋ねると、佐々木さんは「マインド!」と力強く答えてくれました。

就活をしないで、始まったキャリア

続いてのゲストは、「株式会社ワンテーブル」の社員、本多 凛さんです。

ワンテーブルは、“地域の資産を生かし、新しい価値を生みだす”を理念に、都市型農業の開発とコンサルティング、地域風土の再生・商業施設のプロデュースを行っています。また、東日本大震災をきっかけに防災事業もはじめ、JAXAと協力し、全く新しい防災用・備蓄用食品の開発も行っています。

大学4年の時、同級生が就職活動をする中で、本多さんは就活をするつもりがなく、留学をしようなどと考えていました。しかし、偶然会うことになったワンテーブルの社長と話すうちに、社長の下で働いてみたいと思い、社員になったと言います。

本多さんは、ワンテーブルが運営する飲食店で働いています。働いてすぐの20代前半で、人をまとめる立場に就きました。そこには、多くの苦労がありました。自分よりも年上の従業員をまとめ、常に周りを見ながら、そしてお客さんからの視線も意識することは大変です。従業員をまとめる上では、常にコミュニケーションをとり、相手が考えていることを想像して話しやすい雰囲気を作ることを心がけていると言います。

お客さんを悲しませない、お店づくり

本多さんが働く中で大事にしていることは、「お客さんを悲しませないようにすること」。この意味は、お客さんに商品や接客に対して「安いから、悪くても仕方ないよね」と悲しい思いをしてもらいたくないというものです。

「お客さんを喜ばせること」というのはよく耳にしますが、「悲しませないように」というのは新鮮でした。

取材を終えて

今回は、珍しく仙台市外でのいぐするテラスの開催で、普段は行かないような場所に行くことができて楽しかったです。酒造りに熱い思いを持つ佐々木さんと、自分とは同世代でありながら珍しいキャリアを歩む本多さんという、個性溢れる方々のお話を聞くことができました。
自分は東北の出身ではないので、震災の影響を直に感じることはあまりありませんでしたが、いまなお震災の被害と闘い、地元の名産品としての日本酒で復興を進めようという佐々木さんの熱い思いに触れ、これから就職を考える際にそのような仕事と巡り会ってみたいと思いました。

取材協力:有限会社 佐々木酒造店株式会社ワンテーブル
文章:長崎 陽平(東北大学3年)
写真:寺尾 まりえ・稲葉 史恵(ワカツク)

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この記事を書いた人

長崎 陽平
長崎 陽平
富山出身、いつまでも食べ盛りの大学生。仙台は安くて、食べ物の量の多い店がたくさんあるので、誘惑と戦う日々を過ごしています。目標は仙台のラーメン店制覇!最近は自炊に奮闘中。