お客様の期待に応え続ける「イシイ株式会社」
〝働く人〟のために働き続けて53年
イシイ株式会社は1961年に現社長の石井吉雄さん(71)のお父様が染物屋「石井次雄商店」として創業したのが始まり。2代目の石井さんが時代の流れに合わせて業務内容を変えながら、1代で売り上げ50億円、従業員130名を抱える企業に成長させました。
現在、会社を支える軸となっているのがユニフォーム事業。企業や学校向けに制服や実習服の開発、販売、レンタルを手掛けています。ユニフォーム業界では売り上げシェアが東北1位を誇り、自治体、大学、民間企業など延べ約1万件の取り引きがあります。
ほかにも17店舗を展開する「ダブルストーン」の運営や、企業のサービスを利用した人に配る景品や雑誌の付録といったノベルティ商品の製造にも携わっています。近年は環境にやさしい製品の開発など環境事業にも取り組んでおり、さまざまな角度から〝働く人〟を支えています。
明るく広々とした雰囲気のお店の中には、大量の商品が所狭しと並んでいます。キャラクターを描いた手書きの広告で商品を紹介したり、工事現場などによくある赤色の三角コーンを店内の装飾に使うなど演出も工夫されています!
お店の大半を占めるのは作業用品コーナー。ヘルメットや工具、手袋、長靴など充実の品ぞろえです。同じ用具でもデザインや色が違うさまざまな商品を取りそろえています。
作業着は布地に柄が入っていたり、春らしいパステルカラーだったりと選ぶのが楽しくなりそう!
特に作業靴は若い人向けにおしゃれなものが多くなってきているらしく、見た目はスニーカーのようにカラフルでデザイン豊富です。鉄鋼先芯が入っていて、きちんと機能性も持ち合わせています。その店づくりからは、若者からベテランまで、全ての働く人の需要に応えようという意気込みがうかがえます!
「お客さまのために」。商売人の底力を発揮
「さあ、店を開けるぞ」。東日本大震災が発生した翌日朝、仙台市若林区卸町の本社に石井さんの声が響き渡りました。混乱が続く中、「ダブルストーン」の営業を決心したのです。
震災による津波で塩釜店と石巻店は骨組みだけになり、気仙沼店に至っては土台ごと流されました。石井さんを突き動かしたのは「どんな時でもお客さまの期待に応えたい」という強い気持ちでした。
本社前には約30人の社員が集まり、それぞれ長靴や軍手、カッパなどありったけを車に積んで各店舗へ向かいました。ギリギリのところで被害をまぬがれた石巻市の蛇田店前には100人近くのお客さんがおり、物資を持った社員の到着を拍手で迎えたそうです。
はだしで十数キロ歩いてきた人、着る物がなくビニール袋を体に巻いた人もいました。当初、所持金がなかった人にはそのまま商品を渡しました。
石井さんは「震災後は嵐のように忙しい日々だったよ。でも『苦しい時にやれば結果が出る』と信じていたから続けられたんだ」と当時を振り返ります。
物資の調達は長年かけて築きあげたネットワークを存分に生かしました。主に秋田、果ては大阪から米やガソリンなど主要な物資を集めました。普段は扱うことのないおむつ、生理用品、カップラーメンなど、役立ちそうなものは何でも取りそろえたそうです。
営業を続けていたことが口コミで広まり、店の外まで行列ができました。停電が続きレジが動かない状況の中、手作業で精算にあたる従業員。我慢強く会計を待つお客さんがいる一方で、商品を持ち逃げする人もいたそうです。
「従業員からは『持ち逃げする人を見るとやりきれない気持ちになるから、これ以上はやめてけさいん』と営業を続けることに対し反対の声が上がるようになったんだ」といいます。
「それでもとにかくやるしかない。自分たちを待っている人がたくさんいるのだから」。その決意は変わりませんでした。
広がる「ありがとう」の輪
震災発生後、1日も休むことなく店舗の営業を続けました。自衛隊や警察、ボランティアも「ダブルストーン」の商品を必要としており、次々と注文が入りました。変わらず一般の人にも商品の提供を行いました。震災の混乱が一段落した後も「えらい助けらっだ」「ありがとう」と店頭にやってくるお客さんから感謝の声が寄せられるようになりました。
震災前と震災後で社員の士気の変化を実感しており、ある社員は「社長、こんなに感謝されたのは初めてです」と涙声で話したそうです。
「初めは営業に反対していた社員も自分が今できることは何か、そのためには何をやるべきかを純粋に考えるようになっていました。社内の団結力は以前にも増して格段に上がりましたね」と石井さんは胸を張りました。
震災による痛手は予想以上でした。自社の3店舗が被害に遭ったほか、約300件の取引先を失いました。現在でも未回収のお金もあり、逆風に負けず立て直している最中です。
しかし「今になっても震災発生当時の事に対する感謝の声は広がり続けており、結果的に売り上げアップにもつながっています」とのこと。震災に負けずお客さんのために商売を続けた「結果」は着実に生まれています。
物を大事に!父の教え守る
イシイ株式会社では近年、環境事業にも熱心に取り組んでいるそうです。
除菌や消臭に役立つ高機能水「ステリPRO」、非常事態に役立つ蓄電池の「エネレージ」、省エネに繋がるLEDといった製品の企画、販売に取り組んでいます。
新事業に取り組むきっかけについて「この何が起こるか分からない時代に現状維持していては20年後会社が生き残ることはできない」という石井さん。目先のことに囚われず、常に10年先、20年先の長期的なスパンで経営戦略を立てているそうです。「生き残るためには時代の変化に応じて、常に自分たちも変化を続ける必要がある」と挑戦を忘れません。
では、なぜ環境事業なのでしょうか?それは「まだ小さいころ、父親に『物は大事にしねえといけねぇ』と繰り返し言い聞かせられたからなんだ」といいます。
石井さんによると、「物を大事にしない=ゴミが増え、大気や水が汚染される」ということ。「環境事業に取り組むことで尊敬する父の教えを守っている」そうです。
今後、従来のユニフォーム事業と並行しながら、環境事業も東北を中心に拡大していく予定です。
▲環境にやさしい活動を継続的に行っている企業に与えられる国際規格ISO14001。中小企業が新しく構築したシステムにおいて申請されることが多いです。イシイ株式会社は2002年に取得しました。(上の写真が認定書)
事業拡大へ求む新卒!
イシイ株式会社ではどんな人材を求めているのでしょうか。
石井さんは「チームで仕事をすることを大事にできる人」と真っ先に挙げました。「震災が起こってから今まで1日も休まず営業できたのは、従業員全員で力を合わせたから」といいます。「『自分さえよければいいや』の考えではできるものもできなくなってしまう。だから思いやる心を忘れないでほしいですね」と強調しました。
今後は新規事業拡大に向け、新卒採用枠も積極的に増やす予定だそうです。イシイ株式会社の挑戦は始まったばかりです!
人が集まってくる人ってどんな人だろう。この取材を通して少し分かった気がします。石井さんは常にサービス精神を忘れません。1時間の予定だった取材に3時間近くもこたえてくれたり、こまめに飲み物を出してくれたり、初めての取材で緊張していた私の心をほぐしてくれるような話をしてくれたり。
「相手を喜ばせよう」と普段からさりげなく行動できる石井さんだからこそ、震災発生時もお客さんのために営業を続けることができたのだとわかりました。
創業 | 1961年 |
従業員数 | 130名 |
住所 | 〒984-0015 宮城県仙台市若林区卸町二丁目7-6 |
電話番号 | 022-284-2211 |
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