身近な大人に聞いてみた はたらくってどういうこと?
ワタシゴト

豊かな人間性を育むダイバーシティ教育で、地域社会の再興を

斎田涼裕 斎田涼裕
760 views 2019.02.28

横田智史さん ペンギンインターナショナルスクール

訪日外国人が初めて年間3000万人を突破し、外国人労働者の受け入れ拡大が進むなど、最近、身のまわりで外国人を見かけることが多くなったのではないでしょうか?これから先、英語でのコミュニケーションが、日本でも日常的に行われるかもしれません。
名取市にある「ペンギンインターナショナルスクール」では、英語はもちろんのこと、“コミュニケーション”に重点を置いて独自の教育を行っています。代表取締役の横田智史さん(39)に、事業内容や想いについてお話を聞いてきました!

特色あるインターナショナルスクール

杜せきのした駅から歩いて10分ほど、ショッピングモールにほど近い住宅地の脇に台形の建物が見えてきます。

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中に入ると、子どもたちが「ハーイ」と元気に出迎えてくれます。

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ペンギンインターナショナルスクールは創立3年で、現在55人の園児が名取市周辺や遠くは福島県からも通っています。保育士は14名いて、帰国子女や外国人、留学経験のある人など、出身地や経歴はさまざまです。

「英語のシャワーを浴びせたい」横田さんは、会話を中心にいろいろな人たちとコミュニケーションを取ることができるようにカリキュラムを作っています。

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1つ目は「異年齢教育」です。一般的な保育園では年齢でクラス分けをしていますが、ここでは年の違う園児同士でクラスを作り、一緒に遊んだり食事をしたりしています。「一人っ子が多い時代、年の違う園児同士がきょうだいのように関わり合ってほしい」という横田さんの思いからです。実際、けんかの時には年上の子が仲裁したり、年上の子から年下の子に教えたりすることも多いと言います。

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2つ目は「保育園外の人たちとの交流」です。高校生のボランティアや大学生のインターンシップなどを受け入れて、一緒に遊んだり英語で会話をしてもらったりしています。地域のお年寄りとの交流も多く、外の散歩中に出会った人と話したり、園内に来てもらって一緒に過ごしたりもします。

「閉鎖的なイメージがある保育園だけど、うちでは園内の人の出入りを活発にして、ななめの関係づくりを大切にしている」と横田さん。これらの教育法を「ダイバーシティ教育」と呼んでいます。英語はもちろん日本語でもコミュニケーションを取れること、人との関わりを重視していることが、他のインターナショナルスクールとの違いです。

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教員・塾長を通してたどり着いた幼児教育

横田さんは、中学校の恩師に感銘を受けて、高校時代から教員になることが夢でした。大学の体育学部を卒業し、22歳で教員になりました。その頃の夢は、自身がサッカー部だったこともあり「サッカー部の顧問になって、部員を全国大会に連れていくこと」でした。

しかし、最初の赴任先は、特別支援学校でした。「自閉症などの子どもたちに接する中で、自分の中での教育の幅が広がった」。

自分のやりたい教育を求めて、25歳で福島県内の学習塾へと転職。大学生のアルバイトと一緒に、塾長として勉強を教えていました。学生たちが教える様子を見ている中で、横田さんはあることに気づきました。
「学生たちは、勉強は教えられているが、コミュニケーションはあまり取れていない。子どもたちは、勉強の楽しさを知らずに、勉強している」。

危機感を持った横田さんは、どうしたら子どもたちに勉強の楽しさを伝えられるかを考え、「勉強を始める前に楽しさを知らなければ、意味がない」と“幼児教育”に注目しました。

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ちょうど保育園事業を始めていた、学習塾の前塾長から声をかけられ、27歳で保育園の園長に。幼児教育に携わる中で「英語教育も取り入れられないか」と考え、現在のダイバーシティ教育の原型を考案しました。

ダイバーシティ教育をさらなる世代へ

ペンギンインターナショナルスクールの「ペンギン」は、「共働き・共育て・コミュニティ内での助け合い」という皇帝ペンギンの特徴から取っています。
「子どもたちには、答えは1つじゃない、自分以外はみんな違うといった、多様な観点から物事を見ることを学んでほしい」。横田さんの一番の思いです。

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ダイバーシティ教育をより多くの子どもたちに伝えるため、横田さんにはビジョンがあります。
今年4月には、名取市美田園に1~2歳児のための「ペンギンナーサリースクール」が開園します。さらに、3年以内に「ペンギンインターナショナルエレメンタリースクール(小学部)」を設立し、ゆくゆくは岩手・宮城・福島の被災3県の待機児童の解消を目指して「保育園の増設」を目標としています。

ダイバーシティ教育は今、全国の保育園から注目されていて、横田さんはコンサルタントとしても全国を駆け回っています。「ダイバーシティ教育を多世代に伝え、地域社会の復活を目指したい」と意気込んでいました。

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今、夢と掲げても、突然違うことになることもある。今は夢がなくても、これから夢ができることだってある。だから“今やりたいこと”と“やるべきこと”のどっちもやろう。人は、やりたいこととやるべきことが両方あるとき、ついついやるべきことを優先してしまいがち。プラン漬けになるのではなく、思い立ったらまずチャレンジしてみよう。

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ペンギンインターナショナルスクールは、英語教育と地域の人との交流が共通の教育目標になっていることが、斬新だと思いました。人としてやはりコミュニケーションが大切で、「人との繋がりが希薄になった」と言われて久しい現代の日本だからこそ、ダイバーシティ教育は広まってほしいと思いました。僕自身、国際交流や英語でのコミュニケーションを重視してきましたが、遠くに目が行き過ぎて、近所付き合いなど地域の人たちとの交流がほとんどないなと気づかされました。横田さんの語るように、まずは近くの人たちとの交流も大切にすべきだと思い直しました!
斎田涼裕斎田涼裕東北大学
文章:斎田 涼裕(東北大学4年)
写真:長崎 陽平(東北大学3年)
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この記事を書いた人

斎田涼裕
斎田涼裕
「さいたあつひろ」と読みます。栃木県のとある田舎町出身。
バリバリの理系で、現在は研究室で実験の日々。
研究室の外の世界を見るべく、色んな企業を見て回りたいです。