学生記者がお仕事の魅力を発見!仙台イケてる会社訪問
イケ社

人の手で社会を支える「株式会社JOINTECH」

斎田涼裕 斎田涼裕
609 views 2020.07.02
斎田涼裕 斎田涼裕 東北大学
社会には私たちの生活を支えているけれども、なかなか日常生活を送る中では関わりがない仕事が多くあります。そのような仕事を就職前に1つでも知りたいと思い、今回取材したのがインフラの点検・補修を行う「株式会社JOINTECH(ジョインテック)」です。
高速道路や高架橋、ダムなどについて、私たちはあまり意識することがないと思います。しかし、インフラが無ければ私たちの今の生活は成り立ちません。そんなインフラを支える仕事の素顔に迫ります。

JOINTECHってこんな会社

仙台市街地から車で20分、名取市の閑静な住宅街の一角に、ひっそりと事務所を構えています。

社長の重光明秀さんから、お話しを伺いました。

JOINTECHは、高架橋やダム、風力発電機などのインフラの点検・補修を行う会社です。人が簡単に歩いて立ち入れない場所に、ロープで吊り下がることによって近づきます。点検では、主にコンクリートのひび割れや剥がれ落ちているところがないかを、目視やハンマーで叩くことにより確認します。

点検・補修の依頼は、国土交通省や地方自治体、電力会社などから入り、元請け会社を通して受託します。依頼は宮城県内や東北にとどまらず、北は北海道から、南は九州まで全国へ出張します。宮城県内では、過去に「鳴子ダム」を手掛けました。

元々は、京都で同じ仕事をしていた重光さん。東北からの依頼も受けていましたが、京都からの交通費がかかってしまうので、なかなか使ってもらえない技術になっていました。
そこで「東北に事業所を構えた方が、より使ってもらいやすい技術になるのでは」と考え、独立をして、2016年に仙台市でJOINTECHを立ち上げました。

現在、従業員は8名で、20~40代の若手が活躍しています。

仙台の企業魅力

手に職をつけて働ける

ロープでの点検・補修には、「特殊高所技術」が利用されています。この技術、もともとは洞窟探検で使われていたものなんです!
「従来の技術では点検が難しかった構造物の部分にも、近づくことができる」、「費用や工期を抑えられる」などの利点があります。2007年に初めて用いられて以来、資格を持つ人はは現在、全国で100名ほどと極めて専門性の高い資格です。
JOINTECHでは、この技術を習得するために、はじめは会社の1階にある倉庫で、2mの高さから訓練を積み、その後、京都にある特殊高所技術協会で2週間かけて基本動作を身に着けます。


△ロープの安全な結び方などを習得していきます


△めまいを起こしそうな高さでの作業

現場は数10メートル、場合によっては100メートル以上の高さでの作業になります。安全を確
保できるようになれば、高さは関係なく、特別な経験・能力を問わず技術は身につくといいます。
屋外で体を吊られた状態での作業になるため、体力が必要と思われますが、重光さんは「身体の使い方に慣れると、吊り下がっている状態での作業なので負担は意外と少ない」といいます。そのため、一度技術を身につけると、40代、50代以降も仕事を続けられるし、女性にもできるといいます。体得した技術を手に、身ひとつで全国を回る、職人さながらの仕事スタイルです。

〇1日のスケジュール例(出張)
 ・9時 集会・朝礼
 ・9時15分 準備・作業開始
(昼食で一度下りることも)
 ・16時 作業終了(日が落ちると作業ができないため、夕方には作業を終えます)
 ・16時~ ホテル・事務所へ戻り、報告書の作成など


△背後の美しい眺めに思わずうっとりしてしまいます

先端技術との共存

JOINTECHは、風力発電機のブレード(羽)部分の点検も行っています。以前は人が登り、
目視で破損がないかを確認していましたが、他社と共同で、ドローンを使った空撮の実用化に成功しました。これにより、人の手では1日に風車1台の点検にとどまっていたのが、3~4台できるようになりました。
風力発電機の羽はFRP製であるため、黄砂などにより損傷が起こることもあり、それが運転停止に繋がることもあります。迅速な検査が、電力供給を支えることになります。


△風力発電機の点検

ドローンで撮影した写真を、AIによる画像解析により、破損の有無を調べる技術も開発中です。職人の技術のみに頼るのではなく、先端技術も導入しつつあります。
昨今話題になっているように「今後、人の仕事がAIに代替されるのではないか?」という疑問もわきましたが、重光さんは「AIと人の業務がうまく棲み分けをして、より効率良くなるのではないか」と話していました。

将来の社会を支える働きがいある仕事

現在、インフラの大部分は「高度経済成長期」以降に建てられたもの。建設後およそ50年が経過しており、老朽化が進んでいます。
定期的な点検と補修は、これからも私たちが安心して道路や橋を利用するために、欠かせません。重光さんは「これからさらに需要がある仕事で、むしろ人手不足ですらある」と言います。
例えば、道路の橋では建設後50年が経過したものは2018年では全体の約25%ですが、15年後の2033年にはなんと約63%にのぼります(国土交通省による)。現在の2倍以上になるわけで、前述した100名ほどの「特殊高所技術」の技能者では支えるのが難しく、より多くの人材が求められています。今後さらに必要とされる、社会的な意義のある仕事といえます。


△高架橋の点検

若い人にぜひこの業界に来てほしい


「とにかく需要に対して供給が追いついていない状況」と重光さんは話します。
インフラは長期的なメンテナンスを必要としています。JOINTECHは設立からまだ日が浅いため、これまではすべて中途採用でしたが、今後は新卒採用を検討しています。
コロナ禍で就職難が囁かれている中、人手が足りない、人手を必要とする業界は、今後就活をする方にとっては選択肢の1つになりそうです。
重光さんは、自身の経験も踏まえて「これだと思った会社を選んでほしい」と学生にエールを送ります。

‟高所恐怖症”気味の私にとっては、ハードルの高い業務に感じられましたが、全国各地を飛び回って、自分の経験と技術で社会を支える、誇り高い仕事だと思いました!また、高架橋やダムからの眺めも良いそうで、一度は吊り下がってみたいなと思いました(重光さんはそれにも慣れると言いますが)。まずはバンジージャンプに挑戦して、適性を調べてみるのもありでしょうか(笑)
また、AIはこんなところにまで利用されているのかと驚きました。今後、老朽化の進むインフラは確実に増えていきます。AI産業がさらに進出する可能性は高そうですが、うまく棲み分けができると、人とAIとの共存のモデルケースになりそうです。

斎田涼裕斎田涼裕東北大学
文:齋田涼裕 東北大学修士2年
写真:寺尾まりえ ワカツク
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株式会社JOINTECH
https://jointech.co.jp/

この記事を書いた人

斎田涼裕
斎田涼裕
「さいたあつひろ」と読みます。栃木県のとある田舎町出身。
バリバリの理系で、現在は研究室で実験の日々。
研究室の外の世界を見るべく、色んな企業を見て回りたいです。