放射能に立ち向かう男!べこらぼ仙台・津田和俊さん②
※こちらの記事は、放射能に立ち向かう男!べこらぼ仙台・津田和俊さん①からの続きです。
セシウム牛と放射能
元々震災があったころは瓦礫撤去のお仕事というかボランティアをされていて、そこから放射線の測定をしてほしいという需要が出てきてからは測定のお仕事を始めたという。
津田さん
ですね、もっと言うと、7月頃にもう大学の研究室に出入りしていたんですけども。その頃大学の先生方はみんな福島支援のために出てしまっていて、全くこちら(宮城県)に手が回らなかったんですよ。
根本:あぁー、そうだったんですね。
津田さん:で、7月頃だともう各地の放射線量は測ってたんですけど、登米市は低かったんですよ。栗原市は若干高かったんですけど。
根本:あー、そうですよね。栗原市の話は少し聞いたことがあります。
なぜここから?セシウム牛の謎
津田さん:ええ。登米市は仙台市とほとんど同じ線量で、だからなんでこんなところでセシウム牛が出るのかみんな分からなくて。分からなかったらちょっと行ってきて調べるしかないよね。ちょっと手伝ってくれない?と言われたのが最初ですね。
根本:へぇー、そこでセシウム牛のことに取り組むことになった。……僕、あまりその事件について詳しくないんですけども、あの事件というのは……牛が食べていた餌に問題があったんですか?
津田さん:餌です。何が起きていたかというと、稲刈りした後の藁がありますよね。それを秋口に回収して餌にすると、サシ(脂)の入ったうまい肉ができるそうなんですね。
根本:へぇー。
津田さん:それもその時に初めて知ったんですけど(笑)で、震災の前の年の秋がたまたま天候不順で、秋に藁が乾かなくて、そのままほっといたんだそうです。
根本:はい。
津田さん:で、春先までほっといて、春に乾いた藁を収穫したそうなんですよ。
根本:その稲というのは、全て登米市の?
津田さん:そうですね。
根本:登米市の線量自体は低いんですよね?
津田さん:ええ。そこで何があったかというと、田んぼ一面に敷いてある藁に、わずかですけどセシウムが降ってきた。
根本:はい。
津田さん:密度は薄いんですけど、広く散らばってるところをガサッとかき集めちゃった。
根本:あぁー!なるほど…少ない量でも大量に集めたことで線量が高くなってしまう。
津田さん:そうなんですよ。このへんの土とかも、セシウムというのは表面にしかいないんですよ。雨とかで降ってきたのが主なので。だから今の除染作業というのも基本的には表面の砂を薄くはぎ取る。そうするとセシウムというのは底の方までは浸透してないので、その場所の線量を低くすることができる。
根本:なるほど。
津田さん:それで今、はぎ取った土が集まるととても高い濃度になるので、その土をどこにやるかという問題が起きているんですけど、偶然それと同じことを藁でやっていたという……その集めた藁を、知らずに牛に食べさせてしまった。
根本:なるほどなぁ…。
通達内容と想定外
津田さん:当時、一応農水省から『放射線の高い地域から出た牧草はやらないでください』という通達は出ていたんですけど、この通達には2つポイントがあって。
根本:はい。
津田さん:1つは『放射線が高いところってどこか?』もうひとつは『藁って牧草なのか?』
根本:うーん。
津田さん:この2点が盲点だったわけですよ。
根本:そうか…。農水省でも警戒はしていたけども、その警戒の範囲に漏れていた。
津田さん:そうですね、その頃もう(当時線量の高かった)丸森町の牧草などはやらないようになってはいたんですけど、『まさかこんな低いところでそんなこと気にする必要がないだろう』というところでそういうことが起きた。
根本:なるほど。数字だけ追っていると本当に気づかないことですよね。
津田さん:そうなんですよ。これも地元の農家の方々に藁の摘み取りなどいろいろ聞いて、このぐらいの田んぼ一面にこのくらいのセシウムが降って、集めるとどのくらいになるというのを計算すると確かにその通りになる。
根本:あー、それで起きたことが証明されたという。
津田さん:そうですね。
薪ストーブの灰と放射能
根本:そういった中で放射線を測らなきゃいけないという要請と需要が少しずつ出てきたと。
津田さん:そうですね、その頃(セシウム牛騒動)は大学の機材を借りていたんですけど、やっぱり自分で調べるときに色々持っていないと、ということになって機材をそろえ始めたのが11月頃ですね。今うちでよくやっているのがこれかな。
根本:これは…。
津田さん:薪ストーブの灰ですね。
根本:はぁ。
津田さん:林業なんかで廃材がいっぱい出て、でその廃材を燃料として薪ストーブを使っているご家庭があったんですけど、どうもその薪の汚染というのが看過できないレベルになっているという話から始まったんですけど。
根本:はい。
津田さん:大学でも一応(薪ストーブの灰を)測ってはいたんですよ。ただそれを住民の人からも請け負うとパンクしてしまうので、津田さんの方でやってもらえないかという話をもらって、ちょうどその頃機材も購入していたので、わかりました、ということで始まったんですよ。
根本:なるほど。
津田さん:行政や大学で手が回らないこと、やっていないことをカバーしようと思いまして、こういった薪ストーブや、土なんかを測ってたんですね。
根本:事業化したのはこれが初めてですか?
津田さん:そうですね。事業としてやったのはこの薪ストーブの測定が初めてですね。
濃縮という盲点
根本:灰の測定というのは…環境的には薪ストーブがいい、みたいなお話もお聞きしますけど。
津田さん:えーと、震災前には、地球温暖化の対策に石油燃料を使わない薪ストーブが良いということで使っていた人もいたわけですけど、これが薪に放射能が微量にあると、濃縮されて、灰がすごい濃度になってしまうという。だいたい(濃度が)200倍になるんですよ。
根本:200倍……。
津田さん:今のストーブってすごく性能がよくて、炭じゃなくて本当に真っ白い灰になるんですよね。
根本:そこに、セシウムが残ってしまう。
津田さん:そう。セシウムは金属なんですが、沸点が1000度を超えていて、若干は気化するんですけど薪ストーブくらいの温度だとほとんどが灰に残ってしまうという。
根本:はー、なるほど……セシウムが金属だっていうことをそもそも認識していなかったです。
津田さん:そうですか(笑) ナトリウムとかカリウムとかの仲間なんです。アルカリ金属なんですよ。
根本:なるほど。なんか、津田さんとお話していて、ものすごく勉強になってます。
津田さん:ははは(笑)
根本:すると、そういう形で、灰がどんどん濃縮されて危険になるのを危惧していた。
津田さん:そうです。一番警戒したのは、肥料としての利用。草木灰っていう昔肥料として使っていた灰があるんですけど、たとえば線量の高い灰を畑に撒いてしまったら畑のセシウム濃度がどんどん高くなる。それが野菜に移行して、人の口に入るということになると、これはリスクになってしまうので。
根本:なるほど。
津田さん:それを気を付けてください、というのを一昨年の冬頃に始めて、テレビなどにも紹介されて、ある程度は認知されたのかなというところですね。
根本:そうだったんですね。
より身近に! radio active cafe べこらぼ仙台 OPEN
根本:冬ころまではそういったことをされてたということなんですが、2012年の3月11日に『radio active cafe べこらぼ仙台』をオープンされたということで、その経緯というのはどういったものだったんでしょうか?
津田さん:えーと、それまでは、口コミというか大学の先生方が調査していた丸森であるとか一部の住民から受け付けていたんですけど、もっと一般の人からも受け付けようということで、それまでは柏木のワンルームマンションで仕事していたんですけど、お客さんが来たり荷物が届いたりした時に面倒だということで、たまたま家賃が安くなっていたここにオープンしたという感じですね。
根本:なるほど。ここにオープンしたのは、放射線を測定したいという人がふらりと訪れられるように、という感じですかね。
津田さん:そうですね。まぁ、今は行政が無料で測定しているところが増えましたから、お客さんはほとんどいなくなっちゃいましたけど(笑)今は幼稚園の土なんかを定期的に測っていますね。
貝と放射能
津田さん:ちなみにこれ、ずっと気になってたんじゃないかと思うんですけど(笑)
根本:あ、はい。ずっと気になってました(笑) これは、貝ですか?
津田さん:これは2年前に測ったホッキ貝ですね。2年前に仙台湾で漁が始まる時に、大学経由で依頼を受けたんですけど。
根本:へぇー。……貝のセシウムを測るというのはどうやればいいんでしょう?
津田さん:えーとですね、これ(測定器)には入らないので……はじめ何をやっていたかというと、抜き身にして測らないといけなかったんですね。さばいてミンチ状にして測っていたんですけど…初期の頃、2年前の秋くらいだったんですけど、(貝の線量は)1kgあたり30べクレルくらいあったんですね。
根本:それは……高いですね。
津田さん:まぁ、それを高いとするかどうかはまた色々あるんですけど。『これ何とかしなきゃいけないね』ということになって、ちょっと生きたまま測ってみようかということをやりまして。
根本:はい。
津田さん:どうやったらセシウムが出てくるのかを、ちょっと測ってみようということでですね…この遮蔽(厚さ30mmほどの鉛板)を若干拡げて組み直してですね、そうするとこの貝が4つ入るんです。で、これもたまたまなんですけど、ホッキ貝は丘の上にあげても生きてるんですね。
根本:へぇー。
津田さん:その状態で1日くらいは生きているんだったかな…それで色々な方法で測って、どうやったらセシウムが抜けていくのかを実験したんです。
根本:はい。
意外な打開策
津田さん:で、結論から言うと、買ってきた貝を砂吐きさせなきゃいけないじゃないですか。(砂吐き:貝を海水につけて、含んでいる砂を吐き出させること)すると砂と一緒に泥とかも混じってて、それと一緒にセシウムが出ていた。
根本:へぇ!
津田さん:で、あさりとかと同じように『砂抜き』をさせればセシウムも出ていって、身のところには…つまり食べるところにはセシウムがないということが分かった。
根本:はー!そうなんだ。
津田さん:どうやって対策すればいいかというと理屈は簡単で、水揚げした後しばらく海水の中につけておけばいいわけです。
根本:なるほど!いやー、それが分かったって、本当にすごいことですよね。
津田さん:そうですね。
根本:すごいなぁ。
次回の記事では、津田さんのバックグラウンドに迫ります。
この記事を書いた人
この人が書いた記事
- ニュース2015.03.09【動画】「なんかおもしろい」を日常に! 「合同会社チームサンタ」
- お仕事2015.02.06【動画】日々を漫画にする!『てづくり漫画工房』
- テラス2015.01.21NPOで働くリアル!「NPO法人東北みち会議」安藤美樹さん
- お仕事2014.12.05【動画】仙台・まちなか映画館~桜井薬局セントラルホール~