お仕事

放射能に立ち向かう男!べこらぼ仙台・津田和俊さん③

根本 もっさん
663 views 2014.02.07

第三回では、一般市民の方向けに放射線を測定する「べこらぼ仙台」津田さんが、
今のお仕事をはじめるまでの経緯をご紹介します。

前回の記事はこちらからどうぞ。
前回の記事①
前回の記事②

今の仕事を始めるきっかけ

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根本:今回『仙台での働き方』ということで、津田さんが就職活動をしたことがない、というお話を前回、宗形さんにお聞きしたんですけれども。

津田さん:あぁ、そうですね。学生時代…オーバードクターが長かったんですけど、論文書けなかった時期にアルバイトしてどうしても食わなきゃいけなかった時があったんですね。

根本:あー、なるほど。

津田さん:その時にアルバイトでしていたものをそのまま事業として立ち上げてしまったんですけど。

根本:なるほどなるほど。ちなみにその時はおいくつでしたか?

津田さん:28とか9とかそのくらいだったかなぁ。社会に出てる人だと中堅レベルくらいになっている時ですね。

根本:あぁ、たしかに。

津田さん:まぁ、あと、たまたま理学部にいてコンピューターとかの能力はあったので。あっち(コンピュータ業界)は腕一本で食っていける世界ですから、それでたまたまなんとか仕事としてやっていけるようになったという。

根本:では、初めのアルバイトというのはコンピュータ関係、もしくは全く別の?

津田さん:全く別ですね。印刷会社とか、都市計画とか、生協とか。生協は東北大学の生協ですね。

根本:なるほど。そこから手に職を生かして?

津田さん:そうそう。あの~、最初に東北大生協のホームページを立ち上げたのが僕なんですよ。

根本:へぇー!それって、いつ頃ですか?

津田さん:えーっと…1995年くらいかな…何年前だろ。

根本:もう20年くらい前ですね。

津田さん:あぁ、本当にホームページというか、WEBというのが出てすぐくらいの時につくったので。

根本:すると東北大生協第1号のホームページなんですか!

津田さん:そうですね。というかその頃、民間企業でもホームページを持っているところはほとんどなかったんじゃないかな。

根本:そうですよね。……1995年というと、僕5歳ですね。

津田さん:ははは(笑)そういう世界ですか(笑)

根本:そうですね(笑) ホームページっていつ頃から触りだしたかなぁ、とか考えていたのですけど、たぶん小学4年くらいでゲームの攻略サイト見なきゃと思って使い始めたんですね。…やはり95年というと使っている人はいなかったですかね?

津田さん:ほとんど大学関係者しか使っていなかったですね。ちょうど『Windows95』が出たころで、一般の人も使い始めて利用者が少し増えてきたという。

根本:なるほどなるほど……そこで大学と関わってパソコンの仕事みたいなことをやって、そこから『これは仕事にできるんじゃないか?』と思うようになったという感じでしょうか。

津田さん:そうですね。あとはその前に…「東北大内の学内LAN」で「TAINS」ってあったじゃないですか。

根本:TAINS…

津田さん:あ、文学部だと学生さん使えないんだよね(ライター根本は文学部)

根本:あ~、はい!ありました!無線で飛んでたんですけど使えませんでした。

津田さん:あれ(TAINS)のケーブル貼りやってたんですよ。

根本:へぇぇ!

津田さん:それが1989年くらいですね。学生時代にアルバイトでやってたんですけど、一番初めの作業がそれですね。

根本:ではそこから始まって、実際にコンピューターというか、WEBサイトつくりの仕事を始めていくという。

津田さん:そうですね。WEBサイトのシステム作りから。当時サーバーと言われるようなコンピューターがなかった頃で、それこそもう1000万円とかする世界だったので、それを『ワークステーション』という100万円くらいのやつでなんとかできないかということを…。ついでに言うと、一番最初に立ち上げた時はMacintosh LC2でやったんですよ。

根本:へぇぇ!

津田さん:その時はMacOSがSystem6で、68Kの頃のですね。

根本:……もう分からないですね(笑)

津田さん:だんだんこういう昔話が通じなくなってるんだけど(笑)

根本:今のOSは10ですかね?

津田さん:うん、その頃は6だったんです。

根本:なんというか、本当にインターネットの黎明期ですね。

津田さん:そうですね。

根本:そのあたりから、パソコンというかインターネットが普及していく一番初めの時期に、パソコンの技術を持っていたことで、それ以降も仕事としてやっていっているという感じでしょうか?

津田さん:はい、そうですね。

根本:具体的なお話をお聞きしていこうと思うんですけど、データベースを作る、というのはどういうところから仕事の依頼があるんですか?

津田さん:えーと、学会とか研究所とかからですね。

根本:そういったところから『データベースを作ってくれ』と依頼があって、それを請け負って、データベースを作っているんですね。

津田さん:そうですね。

根本:具体的にはどういったデータベースを作るんですか?

津田さん:うーんとですね、業績評価の、たとえば研究者の紹介サイトとか、論文の紹介サイトとか、そんなものを作ってますね。

根本:なるほどなるほど。たとえばCiNii(CiNii:論文データベースサイト)のような?

津田さん:そうですね、CiNiiの各研究室版みたいなものです。

根本:なるほど…。そうですよね、誰かが作らないと出来上がりませんものね。

津田さん:そうですね(笑)

仙台で働く理由

根本:仙台で活動されているということで、その理由をお聞きできればと思ったのですけれども。

津田さん:仙台でっていうのは東京ではない理由だとか、そういう感じでいいですか?

根本:はい、そんな感じで。

津田さん:えーと、東北大入る時に仙台に来たんですけど、仙台という土地がとても気にいってしまいまして、そのままここに住んだという。

根本:そうなんですね。

津田さん:仕事というよりもやっぱライフスタイルですね。自然が豊かで、海も近くて山も近くて、食べ物も美味しくて。

根本:本当ですね。

津田さん:あと僕、就職活動を経ずに仕事を開始してしまったんですけど、電車とかで通勤通学したこともないんですね。生まれは栃木だったんで、そこでも自転車通学でしたし、大学でもバイクで通学していて。で、今から東京に行ってそういう生活できるかと言ったら絶対できない(笑)

根本:なるほど(笑)僕もいわきの山ん中出身なので電車に乗ったこともほとんどなくて、『満員電車とか絶対無理だよ』って思ってる人間です(笑)周りは就職で東京に行くんだ、と言っていたんですけどそれも全然ピンとこなくて……やっぱり、ここは過ごしやすいですよね。

津田さん:ええ。住んでいる場所と働く場所が近くて、通勤に無駄なエネルギーも取られない。

根本:そうですね。

津田さん:ただ、東北大来ると東京行くしかないようなところあったりするんですよね。

根本:あぁ、それは少しありますね。地元で就職しようとして『東北大卒だ』と言うと逆に引かれてしまったり。

津田さん:そう、そうなんですよ。

根本:そうなると自分で仕事を作るという方向にせざるを得なかったというところも?

津田さん:そうですね。アルバイトしていたところに『仕事持ち込むから雇ってくれない?』と言ったこともあったんですけど、みんなに『えぇっ』と驚かれてしまって。

根本:あー、びっくりされてしまう。

津田さん:そう。だから僕の事例は特殊なところもあると思うんですけど。

事業立ち上げの経緯

根本:たとえば…就職活動をしないと決めた時や、事業を立ち上げようと思った時、不安だったなどはなかったですか?

津田さん:そうですね…会社勤めしたことは経歴としてはないんですけど、一時期はサラリーマンに近いような生活はしていたんですね。専門学校で講師やったり、測量会社で都市計画の仕事をしたり、それはみんな大学院通ってた時に食うためにやってた仕事なんですけど。午前中だけその仕事やって午後は大学院行く、みたいな生活をしてたんですね。

根本:なるほど。

津田さん:それでたまたま都市計画のコンサルの仕事をやってた頃に、すごく小さい会社だったんですけど、そこで会社の中身というか、仕組みを勉強させてもらった。ちなみにというか…今は敷紙にしか使ってなかったんですけど、こんなことやってたんですよ。

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根本:『仙台市都市計画表』…

津田さん:ええ。この図面を書くような仕事をしていた。

根本:はー!この色というのは?

津田さん:色はですね、赤が商業地域、緑が住宅地域、青が工業地域。

根本:へぇー!

津田さん:僕がやっていたのは、この地域はどの色に割り当てるべきか、そこにあるそれぞれの建物はどのような目的で使われているか、そういったことを調べてました。これを1年ほどやってました。

根本:そうだったんですね。

津田さん:まぁ、社会人になる前のインターン的な体験があったから、そこからすんなり自分の事業を起こすことができた。

根本:なるほど。学生でいきなり事業起こそうと思っても会計も経理も分かりませんし、なかなか難しいですよね。

津田さん:たぶん学生さんが卒業してすぐというのは無理だと思いますね。今は大学のなかでもビジネススクール的な、そういったものを勉強できる講座があるのは分かるんですけど、たぶん無理なんじゃないかな(笑)

根本:なるほど。そういったところよりは、なんというか、民間というか。

津田さん:そうですね、それはオン・ザ・ジョブトレーニングで学んでいくしかないので。

根本:なるほどなるほど。

津田さん:だから(自分で事業を)やりたい人はそういったアルバイト的な、インターン的な仕事でも、仕事を盗むであるとか社会の仕組みをよく勉強するためにやるというのは僕は必要だと思いますね。

根本:そうですね……。宗形さんや津田さんの働き方を少しだけ見ると、ほんとに超人のように思えてしまっていたんですけど、ここにたどり着くまでには色々なことがあったんですね。

津田さん:ええ、そりゃあもう紆余曲折ありましたよ(笑)いきなりできるわけないじゃないですか(笑)

根本:なるほど、そうですよね(笑)

今後の展開について

根本:お仕事自体とか、放射線測定の方もそうなんですけど、これからやっていこうとしていることなどがあればお聞きしたいです。

津田さん:そうですね…子どもが小さいこともあって、ママ友のお母さんに『夏休みの自由研究やらせたいんだけど、どういう風に教えたらいいか分からない』という相談を受けたことがあるんですね。科学館とかでも、やってるにはやってるんですけど、もうちょっと気軽に色々できるところがないかなぁと。

根本:あぁ、たしかにそうですね。

津田さん:『今日は太陽にでっかい黒点ができているらしい』という話になったら望遠鏡で見てみたりとかね、顕微鏡で身近で捕まえてきた虫たちを拡大して、そうやって見えた面白い映像を見て、『なるほどこうなってるのか』と気付いたりね。

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根本:なるほど!

津田さん:そういった日常生活の中のワクワク感ですね。こんな目に見えないものがこういう風に気軽に見えるんだなという、そういう体験を子どもができる場をつくりたいなと。

根本:いいですね! 場所は、ここでやるイメージですか?

津田さん:えーとね、それをどうしようかなぁと悩んでいまして、ノラヤさんでやろうと思ったんだけど土日開けるのは難しいそうなので、日曜日に公園に行って近くのもの取ってきて、『どんな花があるかな』とか『どんな虫がいるかな』とか、そういう観察会をしながら、じゃあ捕まえたものを顕微鏡で見てみよう、みたいなことをやれるといいなと思ってます。

根本:なるほど。『子ども科学教室』みたいなことを、大きなイベントとしてやるというよりは、ちょっとずつ、町中の公園などでやっていくような。

津田さん:そうですね。天気のいい日曜日に勾当台公園でなぜか三脚で覗いている人がいて、通りかかる人が『なんですかこれ?』と聞いてきたら『いや、今太陽にでっかい黒点が出ていてですね…』みたいな、そういうことをゲリラ的にやっていくのがいいかなと(笑)

根本:いいですね(笑) でもきっと、それで科学に興味ある子どもは立ち止まったりして、気になったりしますものね。

津田さん:そうですね。

根本:日常の中から、科学に触れ合うきっかけをつくっていく、ということですかね。

津田さん:ええ。そんなことができればと思ってます。

コワーキングスペー「ノラヤ」に引き続き、仙台で自由な働き方をされている方を知るため行った今回の取材ですが、非常に深く、勉強になるお話をお聞きすることができました。

津田さんはtwitter等でも放射線や原発関連の情報についてわかりやすく解説されていますので、今回の記事で興味を持たれた方はぜひフォローしてみてください。
「放射線」や「働くこと」そのものについて、自分の理解が大きく広がった取材でした。

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