地震に耐えられる墓を残す 「墓石設計・販売しんせい」
2014年9月に一般社団法人ワカツクと河北新報が主催した記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が班ごとに取材した記事を紹介します!
地震に耐えられる墓を残す
無数の墓石が倒れて重なり合い、通路を塞ぐ。
「バカヤロウ」
東日本大震災から2日後、仙台市の墓地を訪れた米田公男さん(59)は悔しさをにじませた。
【倒れにくい横長の墓を説明する米田さん=仙台市青葉区輪王寺】
米田さんは、宮城県利府町で墓石の設計、販売を手掛ける「しんせい」を営む。
県内は地震が多く、墓石業界は全体として耐震への意識が高い。
それでも、震災は想定以上の被害をもたらした。
「建て方が甘かったんじゃないか」
そう思わずにはいられなかった。
「墓はただの石ではなく、故人と生きる人とをつなぐ場だ。やわな墓はつくれない」
米田さんのモットーだ。
新たに墓を建てる客には、従来の縦長ではなく横長で背が低い墓を薦める。
震災後に受けた注文のうち、横長の墓は6割に上る。
地震の揺れで墓石が倒れないよう、土台と墓を囲む外柵に鉄柱を差し込んで補強したり、
石に溝を掘って上下の石をはめ込んだりするなど工夫を凝らしている。
米田さんが「究極の墓」とよぶ墓が仙台市泉区の寺にある。
三角柱を横に倒したような形で「もう倒れようがないでしょう」と説明する。
2004年の新潟中越地震を経験した男性から絶対に倒れない墓を要望され、特別に設計した。
震災は墓の重要性を再認識するきっかけにもなった。
11年4月、修繕の依頼が舞い込んだ。
生活再建が優先される状況の中、当分墓屋にできる仕事はないと思っていた米田さんは驚いた。
「墓が壊れたままでは、先祖に忍びない」と客は口にした。
「お盆に墓参りができる。そんな当たり前のことが出来るようにしよう」
被災地の墓屋として、今やるべきことだと米田さんは思った。
墓を建て直せば、気持ちが整理でき生活の一部が戻る。
墓参りをすれば、震災前の日常を感じ、安心感を得られる。
米田さんは墓づくりへの思いを新たにした。
「形として長く残る墓づくりに関われるのは、幸せだ」
この道30年の米田さん。
墓を守ることで人の心を支えている。
福島大3年 石塚奈津美
明治大3年 中島大地
法政大2年 神田翔太郎
宮城大3年 伊勢千乃
この記事を書いた人
- 一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪
この人が書いた記事
- 記者インターン2019.05.09「Volume1(ver.)」人と音楽の縁結ぶ
- 記者インターン2019.04.25「タンヨ玩具店」お客さんと共に守る
- 記者インターン2019.04.11「PHOTOスタジオONE」写真で紡ぐつながり
- 記者インターン2019.03.28「Lamp of Hope」希望の灯火きっかけに