記者インターン

人生の止まり木 「ひきこもり」の再出発 NPO法人わたげの会

記者インターン 記者インターン
2,240 views 2014.10.04

2014年8月に一般社団法人ワカツクと河北新報が主催した記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が班ごとに取材した記事を紹介します!

人生の止まり木 「ひきこもり」の再出発

8月下旬の昼過ぎ、仙台市郊外のアパートに、ワゴン車が停まる。
降りてきた男性4人は、トランクから掃除用具を取り出した。
部屋の扉や階段の手すりを水拭きし、敷地内の草刈りを黙々とこなす。
「ここやった?」「はい」。
交わす言葉は短い。
彼らは、元「ひきこもり」だ。

NPO法人わたげの会は、対人恐怖や挫折から自宅に閉じこもりがちな若者の支援を行っている。
清掃作業などの就労体験のほか、食事会やスポーツでの交流を通して社会性を育む。

太白区八本松の施設には現在、20~32歳の26人が通う。
1997年の設立から17年間で、関連団体も併せ約100人の就学・就職を後押しした。

清掃作業をまとめていたスタッフの佐々木龍大さん(32)にも、ひきこもりの経験がある。
就職活動でつまずき6年間、やる気が起きず変化のない毎日を送っていた。
09年、母親の勧めで、わたげの会の施設を訪ねた。

SONY DSC【清掃作業中、指示を出す佐々木さん(左から2人目)=8月末、仙台市内】

趣味のパソコンの話をしたり、ふざけあったりして、会は素の自分を引き出してくれた。

新しい居場所となり、顔なじみが増えた。
誰にでも好かれる優しい性格が買われ12年、スタッフに加わる。
「施設に通う男性からトランプに誘われたことが嬉しくて」
佐々木さんは仲間の変化を喜ぶ。
「復帰にかかる時間は人それぞれ。自分の経験では対応できない場合もある」
今までに会が関わったひきこもりの事例を調べ、支援に生かす。

ひきこもりの若者は、自分の力を発揮したいと願っている。
東日本大震災の直後、就労体験の代わりにボランティア活動に従事した。
外壁が壊れたマンションでがれきの片付けを手伝い、
津波が襲った家屋で泥のかき出し作業に汗を流した。
人の役に立てると感じ、自信をつけた。建築に興味を持ち大学に進学した人もいる。

「人との関わりの中で自分の世界を広げ、社会に出るための土台にしてほしい」
施設長の秋田憲一さん(36)は願う。

わたげの会は、人生の一通過点だ。
ここを止まり木に、若者たちは羽ばたいていく。

河北新報社インターンシップ7期 I班
東北福祉大2年 武内裕子
茨城大学3年 山本宗宏
立教大学2年 赤崎夏野
next_action

この記事を書いた人

記者インターン
記者インターン
一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪