石井屋ドラマ「一冊の手帳がつなぐお菓子とパンの味」
木の葉が色づく勝山公園の真向かいに、洋菓子とパンのお店「 FRESH BAKERY & CAKE石井屋」はあります。
会社名は「有限会社パン工房ウェルストン」。
毎日、車を駐車場に誘導する警備員さんがてんてこ舞いするほどお客様がひっきりなしに買い物に訪れる石井屋。
社長である兄、伊藤憲保(のりやす)さん、弟の専務の芳裕(よしひろ)さんが切り盛りし、社長の奥様で常務の伊藤祥江(さちえ)さんが二人をサポートしています。
そのお店に、地元テレビでも取り上げられメインキャスターを感動でうるっとさせたという“ドラマ”が潜んでいるなんて思ってもみませんでした。
▲左から社長の奥様の常務・伊藤祥江さん、社長である兄、伊藤憲保さん、弟の専務の芳裕さん。石井屋のマスコットの「こねたん」と一緒に
元々は和菓子屋として創業した石井屋。
今や80歳前後の人でないと、そのことを知っている人はいないでしょう。
洋菓子やパンを手がけ始めたのは2代目社長の伊藤良三さん。
現在の3代目の社長、伊藤憲保さんと専務の芳裕さん兄弟のお父様です。
2代目の良三さんは、和菓子、洋菓子、パン、なんでもできる人だったそう。でも、まだまだこれからという時に病に倒れてしまいます。
それから半年後、53歳で良三さんは亡くなりました。
当時、憲保さんは東北学院大学を卒業して約3年、他のお店の洋菓子部で修行していました。
修行の後は東京に行く予定だったんだ。
でも病気がわかってそれもなくなって。
ある程度覚悟はできていたけど
気持ちを固める必要があったかなぁ。
それからは弟の芳裕さんと2人、ふとんで寝る暇もないほどの日々でした。病院に行ってはレシピを口伝えで教わって、それをお店で再現して…
その時にレシピを書きとめていた手帳って今は?
まだお店に置いてあるんじゃないかな
と、見せてくださったのが
年季の入った黒い手のひらサイズの手帳。
そのページはまるで美味しいパンの色のよう。
読んでみると、様々なレシピが鉛筆で書きこまれています。
当時はまだ和菓子の雰囲気が濃く、赤飯、饅頭、揚まんじゅうなどを出していたのであんこの練り方の図も。
走り書きの文字からは、まだ20代の社長が、寝る間も惜しんで味を引き継いでいこうとがむしゃらに取り組んでいる姿が浮かんでくるかのようでした。
さらに書かれたものをよく見てみると、「匁」?「斤」??
なんだか見慣れない文字。
どうやら分量らしいのですが、どの程度の量のことか全く検討がつきません。
“匁”は「もんめ」(1匁は3.75g)、
“斤”は「きん」(1斤は160匁、600g)と読むそうです。
これは昔使われていた尺貫法に基づく単位。
和菓子を扱っていたこともあって、材料の分量を量るのに使っていたそうです。
はかりの重りに書いてあるんだ
結構、長いこと使っていたなぁ。
さすがに今は使ってないけど
時代にあわせて重さを計る単位や道具こそ新しくなってはいますが、その頃のレシピはちゃんと引き継がれ、お店に息づいています。
▲今もお店で売っているメロンパンは昭和28年頃から伝わる味
石井屋では洋菓子は兄、パンは弟、広報・宣伝・営業などは社長の奥様の常務が主に関わるなど業務を分担。また、今年2013年11月の創業85周年感謝祭のようなイベントごとにチーフクラスのスタッフと委員会を立ち上げ、社員一丸となってお店を盛り上げています。
石井屋に支店はなく、ここ1店舗のみ。
今後もここで地道に、自分たちのできる範囲内でやっていくのが丁度いいと考えているそうです。
▲石井屋のマスコットキャラクターこねたんも仕事中(?)
ここで最後に疑問が。
なぜ「石井屋」なのに
社名は「有限会社パン工房ウェルストン」なのでしょうか?
あぁそれは登記が取れなかったんだよ。
“石井屋”って、ほかにもあるみたいでさ。
だから石井屋を英語にして
ストンは「石(Stone)」で、
ウェルは井戸(Well)の「井」だけど
「良くなる(Well)」って思いも込めて
それを逆にしてウェルストンね。
なんと!私たち「いぐする仙台」にも通じるような命名!
今年で創業85周年を迎える石井屋、
常にお客様の姿が店内にある様子をみていると、先代から口述で伝えられた味とチームワークの良さ、お店の温かい雰囲気や活気が多くの人を惹きつけ、地元にしっかりと根付いていることが伝わってきます。
「職人にはこれだけやっておけばっていうのはないからねぇ。
一生のものだから」
取材中、ふとした瞬間につぶやかれた言葉が印象的でした。
▲正面のガラスに向かいの勝山公園の木々が窓にうつる。2階はカフェスペース。
「 FRESH BAKERY & CAKE 石井屋」有限会社パン工房ウェルストンの情報は
こちらをご覧ください。
http://www.ishiiya.com/
「こねたん」の記事はこちら
http://igusuru.com/237.html
この記事を書いた人
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「そんなに寒くないよ」と言われる仙台の冬が苦手な冬生まれ。
おいしいもの大好き。美味しいお店から発せられるオーラ(?)を感知するのが得意。
活字中毒気味。働いてなければ間違いなく冬ごもりします。
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