記者インターン

「リモージュ洋菓子店」亘理と共にこれからも

記者インターン 記者インターン
696 views 2018.11.15

2018年8月から9月にかけて、河北新報社と一般社団法人ワカツクが主催した、記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が執筆した記事を紹介します!

亘理と共にこれからも

店に入ると、ショーケースに並ぶ21種類の色鮮やかなケーキが目を引く。入口の横には、亘理町をPRする多数のパンフレット。壁には店を想う住民から贈られた、千羽鶴が飾られている。決してきらびやかでない店内だが、これまでの店の歩みを確かに刻んでいる。

今年オープン13年目を迎えた「リモージュ洋菓子店」は、東日本大震災を乗り越え、宮城県亘理町に店を構える。
「亘理にこだわり続けたい。この場所が好きだから」。店主の村上親義さん(70)は笑顔で話す。モットーは「安くて、おいしくて、かわいい」。ショートケーキは310円で提供。地元住民が手に取りやすい価格にこだわっている。
「息子、これしか食べなくって」。亘理に帰省した子どもに、大好物のケーキを買っていく母親。お小遣いを握りしめて、目を輝かせてやってくる小学生。自分の作ったケーキが、住民に評価されているのがうれしかった。リモージュは亘理のみんなに支えられていた。

limoge2.jpg

2011年3月11日。津波で店が浸水し、オーブンや冷蔵庫など店の機材すべてが使用できなくなった。「続けていけるのか」。村上さんがそう思ったのは、店の被害だけでなく、地域の被害を目の当たりにしたからだ。店周辺は浸水被害が大半であったが、数100メートル離れると瓦礫が広がっていた。亘理のみんなに支えられていた実感があったからこそ、店舗再建への不安が募った。

「またリモージュのケーキが食べたい」。住民の言葉が、村上さんの心を動かした。「ケーキでみんなを支えたい」。

国や地方公共団体の支援もあって、3か月で営業を再開。真っ先に避難所にケーキを届けた。亘理名産のイチゴが生産を再開すると、従来の仙台産から亘理産に切り替えた。“亘理”のケーキ店。思いが強くなった。

今、亘理の町は変化を続けている。町にあったスーパー、商店街が徐々に姿を消した。震災以降、帰って来られない住民もいる。
だからこそ、亘理には変わらぬ何かが欲しい。リモージュのケーキだ。「ケーキを食べて、亘理を感じて、安心してほしい」。町は変わりゆくが、リモージュの味は変えない。変わらないからこそほっとする。安心を亘理に届け続けるために、今日もケーキを作り続ける。

limoge1

取材後記

リモージュは、地域の方に愛されている店でした。被災から3か月後、営業を再開するとお客様が泣いて喜んでくれた、震災によって亘理を離れることになった人が故郷の味を求めてやってきたなど、エピソードは挙げればきりがありません。しかし、リモージュははたから見ると、ただの洋菓子店です。店を眺めるだけでは、数々の素敵なエピソードがあることは想像できませんでした。取材をしてみると、リモージュという洋菓子店を通して、店主の村上さんや亘理に生きる人々の生活、想いを垣間見ることができました。これはとても素敵なことだと思います。私自身、非常に心躍る体験でした。
今回のインターンでは、取材のノウハウを学ぶと同時に、魅力にも触れることができました。加えて、魅力的な取材をするためには記者のなぜ?どうして?という好奇心が大切であることも感じました。これからの生活でも常にアンテナを張って、些細な気づきも大切にしていくことで、様々なことに好奇心を持って接していきたいです。

取材協力

リモージュ洋菓子店

文・写真

河北新報社インターンシップ18期D班 
立命館大学2年 千田 慎太郎(2018年9月当時)

next_action

この記事を書いた人

記者インターン
記者インターン
一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪