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「有限会社ヘルシーハット」化学物質過敏症への理解訴える

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56 views 2018.10.18
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2018年8月から9月にかけて、河北新報社と一般社団法人ワカツクが主催した、記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が執筆した記事を紹介します!

化学物質過敏症への理解訴える

「匂いのない、この洗剤を使ってみたら」。
体調不良の原因が化学物質だと気づく人は少ない。仙台市宮城野区のアレルギー対応製品 販売店「有限会社ヘルシーハット」では、店を訪れた「化学物質過敏症(以下、CS)」のお客さんに、店主の三田久美さん(63)が丁寧にアドバイスする。
1984年に創業してから、さまざまなアレルギーに悩む人々に対して支援の手を差し伸べてきた。店内には食品や日用品など、約2500点が所狭しと並ぶ。その中には、CS患者の使える石鹸や洗剤もあるが、病気の認知度は低くまだまだ商品開発が行き届いていないという。

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CSは、ごくわずかな化学物質に触れるだけで、頭痛やめまい、脱力感に襲われる病気だ。国内の患者数は70万人とも100万人とも言われているが、病気の発症に気づかない人も多い。重症化すると病気の完治は難しくなり、日常生活を送ることすらも、ままならなくなる。

ヘルシーハットがCSの支援を強化したきっかけは、他ならぬ三田さんのCS発症だった。店舗で働く従業員は全員、患者が店内で安心して過ごせるように、化学物質の含まれないシャンプーで洗髪し、無添加の洗剤で洗った衣服を着るようになった。
「病気のことを理解し、協力してくれる周囲の存在が一番大切」。三田さんは強く訴える。

2011年の東日本大震災のとき、同店の従業員たちは、被災地にアレルギー対応の支援物資を届けた。人がすし詰め状態になった避難所は、段ボールや合成洗剤の匂いで満ちていた。
「これでは、CSの患者が近づくことすらできない」。
病気の社会的認知の低さを改めて痛感した三田さんは、患者の実体験を冊子にまとめたり、全国各地で講演をしたりして、病気の周知に努めてきた。

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「勧められた商品を使って楽になった」と喜び、店を再び訪れてくれる人もいる。自身の経験を踏まえて相談に乗り、一人一人と真摯に向き合うことで「自立のための支援をしていきたい」と、三田さん。ヘルシーハットは、社会に埋もれる小さな声をすくい上げて、今日も手を差し伸べる。

取材後記

「化学物質過敏症」という病気との出会いは、突然でした。“アレルギー対応商品を販売している”という予備知識を携え、初めて取材に伺ったとき、お店の方から「私は化学物質過敏症(CS)です」と書かれたリーフレットを手渡されました。初めて聞いた名前に戸惑いながらも、店主の三田さんにお話を聞くと、合成洗剤やシャンプーのわずかな化学物質にも反応してしまうCSの深刻さに衝撃を受けました。「この病気のことを伝えたい」。班員のなかに、共通の意識が芽生えたのも、この時でした。
限られた文字数の中で簡潔に、“CSとは何か”を伝えるのは、決して簡単なことではありませんでした。取材のために何度もヘルシーハットへ足を運びましたが、その度にお店の方は「いらっしゃい」と温かく迎えてくださいました。本当にありがとうございました。
私の過ごす環境は“自分だけに快適な環境”ではないだろうか。ヘルシーハットでの取材を重ねるなかで、この疑問が頭に浮かびました。良い匂いがする洗剤も、CSの患者さんにとっては症状を引き起こす原因へと変容します。
東京で暮らす私にとって、東日本大震災は「考えずとも生活できる」ものですが、被災地には震災が「考えざるを得ない」ものであるという方もいます。インターン中、何度も自分の世界の狭さを痛感しました。物事を自分の中だけで完結させてはいないか。この問いをこれからも持ち続けようと思います。

取材協力

有限会社ヘルシーハット

文・写真

河北新報社インターンシップ18期A班 
上智大学3年 木村 紗綾(2018年9月当時)

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この記事を書いた人

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一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪