「布久満」繋がりゆく着物の文化
2018年2月から3月にかけて、河北新報社と一般社団法人ワカツクが主催した、記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が執筆した記事を紹介します!
繋がりゆく着物の文化
「着物は日本文化の中心にあるもの」。そう語るのは仙台市長町にある店「四季のきもの布久満(ふくみつ)」を営む谷政子さん(65)だ。店は夫と28年前に創設した。
幼い頃、祖母がよく着物を繕っているのを目にしていて、着物が好きだった。着物と人の距離を近づけたい。そう感じたことが店の始まりだ。店名は夫が「布を幾久しく満足に」の意味を込めて名付けた。店名を胸に刻み、仕事に励んだ。
布久満は、販売以外にもお直しや着物教室も行っている。現代の着物は値段が価値を生む品になってきており、普段着として当たり前だった着物姿は時代と共に消えてきている。着物店として着物を売ることは当然。だが「押し売りはしない。顧客個人をさらに引き立てる着物と巡り合わせたい」。そのためなら何度でも相談に乗る。運命の着物は購入者にとって一生の宝物になるからだ。
着物は何度でも縫い直して着られる。祖母から母へ、そして娘に。着物は受け継ぐ想いをのせて時代を生きてきた。いわば、「リサイクルの究極」だ。だが、バブルなどの時代転機を経て、直すより新品を買う傾向が増えた。それでは愛着もなく、簡単に捨てる。「古くから繋がれてきた着物の良さが消えてしまう」。谷さんは着物の販売と共に魅力を伝える事に努めている。
東日本大震災当時、石巻の顧客から電話がきた。「ドロドロになった着物を直して」。着物は20枚を超え、ゴミ袋に入った状態で数回に渡り、送られた。顧客の着物への愛着、想いが伝わった。取引先の京都の業者に依頼し、できる限り修復、状態がひどい着物も泥をとって反物まで直すことが出来た。着物をこれほど大事にしてくれる人がまだいる。肌で感じた。
「文化を伝えることが使命」。高校で外部講師として浴衣の着方を教えたり、小学校で祖母の着物を着て見せ、着物の伝統を伝えたりと魅力を届けている。着物の袖を通し、見せてくれる笑顔が谷さんの原動力だ。谷さんは今日も着物の帯を締める。
取材後記
「もっと着物のお話を聞きたい」。布久満さんで取材をした後に、班のメンバー全員そう感じました。谷さんは、反物、帯、そして伝統ある地域独特の折り方など1つ1つ説明してくださり、日常で着物に馴染みのない私達にとって、初めての知識ばかりでした。記事にも書いたように、着物には着物だからこその魅力があります。「多くの人に知ってもらいたい」と話す谷さんの思いを記事に書き、読者に伝えたいと感じました。
谷さんは、お客さんが自分にぴったりの着物と出会えるために、親身に何度も対応します。谷さん自身が愛する着物と、着物を求めるお客さんを繋いでいるのだなという印象を持ちました。私は将来、地域の人のニーズに合い、貢献できる仕事をしたいと考えています。職種は違えども、谷さんの仕事の姿勢を目指したいと思いました。
このインターンでは、東北、被災地の今を知り、今の自分に何が出来るかを感じさせられました。また、多くの方との出会いがありました。今回生まれたこの縁を今後も大切にしていきたいです。
取材協力
四季のきもの布久満 http://www.kimono-fukumitsu.jp/index.html
文・写真
河北新報社インターンシップ17期C班
東北学院大学3年 渡辺紗彩(2018年3月当時)
この記事を書いた人
- 一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪
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