人のチカラで社会を支える「アコードセキュリティ」
警備業という仕事の存在はみなさん知っていると思いますが、実際にどんなことをしているのかはあまり知られていないと思います。今回は、そんな警備業の裏側を探るべく取材をしてきました。
アコードセキュリティってこんな会社
通りをたくさんの車が行きかう仙台市卸町、工場や中央卸売市場が立ち並ぶ地区の一角に事務所を構えている「株式会社アコードセキュリティ」。主に宮城県内で事業を展開するこの会社は、創業が平成23年と県内で一番新しい警備会社です。2017年12月には、岩沼営業所を開設し、会社の規模を拡大させています。社名には、“調和(アコード)の取れた警備を”という社長の鈴木修さん(54)の思いが込められています。
警備業は、1号警備(施設警備)、2号警備(交通誘導)、3号警備(貴重品運搬)、4号警備(身辺警備・ボディーガード)と、大きく4つに区分されています。
アコードセキュリティでは、このうち1・2号警備を受け持っています。施設警備の業務内容は、夜間の建物の巡回やイベントでの手荷物検査と見張り、駐車場での誘導などで、みなさんの警備員のイメージに最も近いのではないでしょうか。交通誘導は、工事の際に道路などで、一般車の迂回といった安全管理を行う業務です。
△これは2号警備の現場ですね!(提供:アコードセキュリティ)
若手社員のチカラ
「うちは若手が多いからね」鈴木社長はそう笑顔で話します。業界では珍しく、若手社員の多いアコードセキュリティ。今回、一緒に取材を受けてくださった我妻佑樹さんは26歳です。そのため、現場にも活気があり、会社の強みとなっています。例えば、今後も継続的に発注してもらいたい取引先には、活きのいい若手を派遣。“人のチカラ”で、多くの同業者がひしめく業界を生き残っていくというのが、一つの戦略なのだとか。
△我妻さん(左)と、鈴木社長(右)
また、警備の仕事においても、大事なのは“コミュニケーション”。仕事中におしゃべりはできませんが、仕事の前後でのやり取りや休憩中の雑談、さらに挨拶はとても大切で、現場での雰囲気の良さが、会社の評判に繋がります。通常の営業だけでなく、現場での取引先と警備員とのコミュニケーションが、営業の1つになっています。
社内には、一般企業と同じように営業部・総務部などの部署があります。警備員としての業務をずっとやるだけでなく、能力に応じた部署に配属されることが、若手社員のモチベーションにもなっています。
△我妻さんは現場の警備員から、現在は警備部統制管理課という管理の仕事に
女性こそ活躍できる職場
警備業のイメージというと、50~60代のおじさんが働いているイメージが強いのではないでしょうか?年齢は「ミリョク1」でステレオタイプが崩れましたが、男性のイメージも変わりつつあります。アコードセキュリティには、数名の女性警備員が在籍していて、引っ張りだこ。現場の雰囲気が和むといった声が多く、女性警備員のニーズはとても高いそうです。警備業は力仕事ではないため、平均的な女性であれば十分こなせる仕事です。鈴木社長は、「これからより女性警備員の獲得に力を入れていきたい」と言います。
現在、女性警備員が増える上で、トイレなどの設備が課題となっています。しかし、現場も変わってきており、近いうちに県内で多くの女性警備員が活躍する姿が見られるかもしれません。働く女性の新しい職場として、警備業が広まっていくかもしれませんね。
徹底した人材育成
警備員になるためには、きちんとした訓練や研修を受けなければなりません。我妻さんによると、警備員として働く際は、アルバイトも含めて登録が必要で、審査を経て働けるようになります。一般的な社員研修としては、法で定められた内容を、警備員指導資格責任者という国家資格を持つ人が教えるのが基本です。
しかし、「その人自身の人柄や信頼がそのまま仕事に反映される警備業だからこそ、社員の教育は大切だ」と鈴木社長は言います。アコードセキュリティでは、前述の研修のほかに、動作やあいさつの指導、社会人としての心構えや人格・コミュニケーションも教えています。新人には、仕事ぶりを見るために見回りも行っています。さらに、1人1人に合ったチェックリストや、毎月1回の社内報を作成。業務中の注意点や社内での出来事を共有し、繰り返し注意喚起するとともに、社員同士の結束も高めています。こうして、“誰から見ても信頼される社会人”として育成された社員が、業務に携わっています。
社会から必要とされる警備業に誇りを持って
アコードセキュリティは、震災後にできた会社です。震災直後、鈴木社長は“復興”のために何ができるかを深く悩んでいました。そんなときに、知人に勧められたのが、警備業。復興には、道路などのインフラの整備が欠かせません。工事の際は、法律で警備員の配備が義務付けられていますが、慢性的な人材不足のために警備員が必要とされていたのです。そんな助言を受け、鈴木社長はオーナーとして起業し、現在は取締役として会社を経営しています。
監視カメラや施設セキュリティなど、機械への代替が進んでいる面もありますが、最後は人の目によって安全が守られています。「警備員は人でないとできない。警備業はずっと必要とされ続ける業種だ。復興を支え、社会に貢献する、非常に良い仕事をしているという誇りを持っている」と、鈴木社長は力強く語ります。当初2人で始めた会社は、現在は80人を抱える会社へと成長を遂げました。
今後の目標としては、「さらに社員を増やして、3・4号警備など仕事の種類を広げ、宮城県から東北、東日本へと範囲を広げて人材不足を解消したい。そして警備業の魅力をもっと社会に認知してもらい、新卒から警備業を志願する、アコードセキュリティに就職したいと来てくれるような会社にしたい」と鈴木社長。一貫して「うちは人でずっとやっていく」と笑顔で話しました。
この記事を書いた人
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「さいたあつひろ」と読みます。栃木県のとある田舎町出身。
バリバリの理系で、現在は研究室で実験の日々。
研究室の外の世界を見るべく、色んな企業を見て回りたいです。
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