「まぼ屋」創作料理でほやファン広げる
2017年8月に一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催した、記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が執筆した記事を紹介します!
創作料理でほやファン広げる
常識を覆すような店が、JR仙台駅近くに7月オープンした。「ほや&純米酒場 まぼ屋」は、刺身や酢の物で食べるのが常識だったほやの新しい食べ方を提案する。メニューは28品。「ほやカツレツ」や「ほやトマトパスタ」など、今まで誰も思いつかなかった料理が並ぶ。ほやに合う純米酒にもこだわり、東北の地酒を扱っている。
出店を決めた地元飲食チェーン「飛梅」の業務本部長、松野水緒さん(37)は「少しでもほやを助けたかった」と語る。きっかけは、ほやの大量廃棄を知ったことだった。2011年の東日本大震災による津波で、養殖施設はほぼ壊滅。2014年に水揚げを再開したが、震災前、宮城県産ほやの約8割を消費していた韓国が、東京電力福島第1原発事故の影響を理由に輸入を禁止。養殖ほや約7000トンは行き場を失ったままだ。
狙ったのは、新たなほやファンの開拓。今まで苦手だった人でも食べられる料理を模索した。延ばしたり、刻んだり、ピューレ状にしたり…試作と試食を重ねた。味と香りは残しつつ、敬遠する人が多い臭みは消し、食欲をそそる見た目にするために工夫した。例えば「ほやステーキ」は、きれいな焼き目を求めて加熱すると、熱で味わいまでも飛んでしまう難しさがあった。何度か熱の入れ方を変え、ベストの調理法をあみ出した。目玉の「ほやカツレツ」は、ほやの水分量の多さに悪戦苦闘。サクッという食感に欠かせない衣のつけ方は、もはや企業秘密の領域だ。
開店から1か月あまり。様々な年齢層が来店し、週末は予約なしでは入れないほどの盛況ぶりだ。「本当にありがたいことです」。松野さんは手ごたえを感じている。
旬の夏が終わり、活ほやがなくなる秋以降が、正念場。活ほやに負けない「新鮮な冷凍ほや」が入手可能な加工会社と手を組み、人気が通年になることを目指す。「ほや鍋」などメニューを季節に合わせて替え、客を飽きさせない準備はできている。「宮城のほやは1年中うまい」と言わせるため、未知の戦いに挑む。
取材後記
ブランド化が進められている宮城の特産品を知りたい、という思いからほやをテーマに取材することを決めました。宮城県を挙げて行われている、ほやを有名にしようとする動きは、海から離れている仙台市内で生活していても感じます。私たちが「ほや&純米酒場 まぼ屋」を取り上げることで、ほやの魅力をひとりでも多くの人に知ってもらえればと思いました。
取材で出店に込めた思いを聞くと、好きなほやのために努力する松野さんの姿が、とても魅力的に感じました。自ら課題を見つけ、乗り越えるために試行錯誤を凝らす姿に憧れます。ほやは「おじさんの食べ物で居酒屋にある」というような印象がありますが、若い人にも親しみやすくするため、ステンドグラス調の照明やバーカウンター、スツールを取り入れ、今までのイメージを塗り替えようとする熱意が伝わりました。工夫の中にも、取材しなければ気づけないようなこだわりがありました。長時間座っていると疲れやすいスツールは、クッション性の高いものを選び、ゆったりと食事の時間を過ごしてもらいたい気持ちの表れだそうです。これらの細かい企業努力を知るたびに「もっとこのお店や、関わった人たちのがんばりを知りたい!」と思いました。
今でも、ときどきお店には訪れています。その際に、店員の方が声をかけてくださり、縁が続いていることが嬉しいです。これからもお客として、関わっていきたいお店になりました。
取材協力
文・写真
河北新報社インターンシップ16期D班
宮城学院女子大学3年 村山慧子 (2017年8月当時)
この記事を書いた人
- 一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪
この人が書いた記事
- 記者インターン2019.05.09「Volume1(ver.)」人と音楽の縁結ぶ
- 記者インターン2019.04.25「タンヨ玩具店」お客さんと共に守る
- 記者インターン2019.04.11「PHOTOスタジオONE」写真で紡ぐつながり
- 記者インターン2019.03.28「Lamp of Hope」希望の灯火きっかけに