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きっかけは二つ折りの名刺。「普通」の大学生からリピート率90%超の会社社長に

菅野 智佐 菅野 智佐
721 views 2017.08.24

庄司直人さん 株式会社リード・サイン

大学3年まで、自分に強みがないと悩みながら「普通」の大学生活を送っていたという庄司直人さん(34)。ようやく出会ったデザインの道ですが、いざ踏み出すと厳しい現実に直面・・・。
しかし、2008年2月に設立した「株式会社リード・サイン」は、営業ゼロに加えて、お客さんのリピート率は90%超!
会社とともに、庄司さんが辿った道のりを取材しました。

お客さんと誠実に向き合い、深く理解し合っているという強み

「真面目に、良いものを提供し続けている会社が良いお客さんと出会えるように。魅力を再発信するお手伝いをしています」と庄司さん。
ホームページや広告等のデザイン・制作をはじめ、運用のアドバイスまで行い、包括的に企業の情報発信をサポートしています。

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▲打合せの部屋には、これまでにデザインを手掛けた企業の名刺がずらり

“お客さんと直接関わりながらデザインの仕事がしたい”という思いから、起業を決意しました。そんな背景もあって、庄司さんが一番大切にしているのは、実際に会ってコミュニケーションを取ること。
「どんなホームページ・広告にしたいか?」という話をするのではなく、「何を目的に作るのか?」、「何を目標とするのか?」というお客さんの思いを掘り下げ、会社として目指す方向や抱えている課題を確認したうえで、デザインや販売促進の提案を行います。

「丁寧なヒアリングと緻密な提案によって、お客さんの潜在的なニーズまでかたちにできることが、うちの強みですね」と庄司さん。
そんな姿勢が反響を呼び、お客さんが新たなお客さんを紹介してくれるため、営業はほとんどゼロなのだとか。

リピート率も9割を超えており、長い付き合いがあることで、お客さんの良い変化や成長を実感する場面も多いそう。例えば、お客さんを訪ねるたびに、問い合わせメールを印刷したファイルが分厚くなっているのを見て、仕事の順調ぶりを感じたり、仕事への向き合い方が、顧客目線に変わっていることに気づいたり。
「会社の一番の自慢は、素敵なお客さんたちに恵まれていることですね」と嬉しそうに話してくれました。
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▲庄司さんの前にあるのは2014年に法人化した時の記念のお酒

デザインとの出会いは、カラオケでのアルバイト!?

「大学3年まではデザインとは無縁で、自分には何ができるのか、何をしたいのか分かりませんでした」。
庄司さんとデザインとの出会いは、大学時代のアルバイト先だったカラオケ店。接客が苦手で、清掃は丁寧にやりすぎてしまうため時間がかかり、自分にできることは何もないんじゃないかと落ち込んでいたそう。

ある日店長から頼まれた、メニュー表を作成する仕事。チャレンジしてみると、完成したメニュー表は周りから大好評!
「もしかしたら、デザインなら周りから褒めてもらえるかも」と気づいた瞬間でした。

大学4年の4月、仙台市内の専門学校へ入学し、大学と両立しながらグラフィックデザインを学びました。
卒業後、印刷会社に就職するも約1年半で退職し、起業を決意。
「もともと100回に1回くらいしか行動しないタイプだったのですが、その時は、『この道しかない(気がする)』」という思いに突き動かされたんですかね」と庄司さん。

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いざ起業するも、現実は厳しかったそう。
「会社を辞めてから、デザインができるだけでは仕事は来ないのだと気づきました」。
起業当時は、人見知りで名刺交換をするだけでガチガチになり、仕事の話になるとさらに緊張・・・という状態だった庄司さん。
助けになればと作りだしたのが、「二つ折りの名刺」です。

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▲名刺の表と裏になる部分。半分に折ると一般的な名刺サイズに(内側は庄司さんに会った時の楽しみにとっておいてください)

これまでに11回リニューアルを重ねたというユーモアたっぷりの名刺には、略歴や好きな言葉、最近の趣向など、思わずツッコミたくなってしまうような内容が盛りだくさん。
ツッコミを入れてもらったり、相手との共通点が見つかったりすることが会話の糸口となり、場を和ませ心を許すキッカケになってくれたんだそう。

「デザイン業は一見、作るもののクオリティや実績が大事そうですが、最終的には“人”。『こんな人にお願いしたいな』『この人だったら話を聞いてもらえるな』と思ってもらえたことで、仕事がいただけるようになったのかな」。
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お客さんの一番近くで、ともに会社を育てていく

「プロフェッショナルだからこそ、一番親しみやすくありたいです」。
相手に専門性があると、プロだからと敬遠してしまいがちで、それゆえに遠慮して聞きたいことが聞けない、細かいお願いができないなんてこともありそうですよね。

言葉ひとつをとっても、かみ砕いて相手に伝わる言い方を心がけることが、お客さんの安心や信頼にも繋がっています。
「仕事を任されるというよりは、一緒に意見を出しあって、二人三脚で良いものを作っていくという考えです」と笑顔で話す庄司さん。
直接的なコミュニケーションや和やかな雰囲気づくり、細やかなヒアリングが全て合わさった上に成り立つ、お客さんとの親密な関係性がうかがえます。

今後は、宮城県内でリード・サインのことを知っている会社を増やしていきたいそう。
「お肉屋さんから大きな病院さんまで、どんな業種の方とも仕事ができることがデザイン業の良いところ。いくらでもチャンスはあるし、出会いを増やすために、自分たちのこともどんどん発信していきます」。

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もし、インターンシップでもイベントでも、社会人と話すことができるチャンスがあるなら飛び込んでみるといいのでは。必ずしも何かが見つかるわけではないけれど、可能性を広げる1つの手段になるかもしれません。私自身、学生時代に社会人と関わる経験を積んでいなかったことで、選択肢が狭くなっていたと思うときがあります。社会の空気感を知るだけでプラスになるはず。
 常に自分自身にも言い聞かせているのですが、向き不向きは自分で決めないほうがいいですね。私は元々、「こういうことをやるタイプじゃないよなぁ」と決めつけがちでした。向いていると思う選択をしていけば安定するかもしれないけれど、自分自身に飽きるときがあります。具体的には、自分から行動するタイプではないことを自覚していたので、人から誘ってもらったことに関しては、基本的に断らないように心掛けています。
 最近、変化がないなと思うことはありませんか?そんな時は、あえて自分の興味のないことをやってみたり、新しいことに挑戦したりしてみてはどうでしょう。いざ行動してみて、合わなかったら合わないでいいんです。気負わず、自分の「得意」や「好きなこと」を探していきましょう!

取材前にメールでやり取りをしている段階から、文面からユーモアと優しい人柄がにじみ出ていて、お会いできるのが待ち遠しくて仕方がありませんでした。二つ折りの名刺をいただいた瞬間、「私も日本酒大好きなんです!!」と共通点が見つかり、喜びのあまり取材中にも関わらず語り合ってしまいました(笑)
自分から心を開くことが、結果として相手にも心を開いてもらえることに繋がるのだと再認識。
共通点を散りばめるという庄司さん流のコミュニケーション術を、先日大学でプレゼンを行う際に早速取り入れたところ、聞いてくださった方々との会話の糸口をスムーズに見つけることができ、話が盛り上がりました。(ありがとうございます!)
私も、関わった人たちに「また会いたい」と思ってもらえるように、丁寧な関係づくりを心がけていきたいです。

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▲私もいただいた名刺に思わずツッコミを入れてしまいました!一気に緊張がほぐれてこの表情(笑)

菅野 智佐菅野 智佐山形大学(執筆当時)
取材協力:株式会社リード・サイン
文章:菅野智佐(山形大学4年)
写真:藤原佳那(東北学院大学2年)
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この記事を書いた人

菅野 智佐
菅野 智佐
生粋の田舎娘、‘すげのちさ’ と読みます。仙台は都会ですね。よく迷子になります(いつもか)。グーグルマップが手放せません。でも地図を読むのが苦手なので使いこなせない…。笑 こんな私ですが、読者の皆さんを取材現場に連れて行くことが出来るような記事を書いていきたいです!