【社名探りたい】働くことが難しい人も輝く理想の“村”「愛さんさんビレッジ」
社名から会社をのぞいてみよう!
来春から福祉の仕事に就くことになった私。
卒業までに、取材を通して福祉の世界をもっと知りたいと思い、見つけたのが石巻にある「愛さんさんビレッジ株式会社」。
東日本大震災をきっかけに誕生した、高齢福祉と障害福祉が一つ屋根の下に共存する「新しい福祉の形」なのだとか。
いったいどんな場所なの?社名にどんな思いが込められているのか探りたい!
ということで、さっそく石巻に行ってきます!
仙台駅から車で約1時間、三陸自動車道を石巻港インターチェンジで降り、10分ほど。活気ある工場が立ち並ぶ海沿いを通り、住宅地を抜けると大きな看板と建物がありました。
ここは市街地からも近く、石巻駅からは車で10分の場所に位置しています。
「愛さんさんビレッジ株式会社」に到着です。
代表取締役の小尾さんが温かく迎えてくれました!
高齢福祉×障害福祉の会社
名前に「愛さんさん」が入っている会社は2社あります。
老人ホームを経営し、高齢福祉を担うのが「愛さんさんビレッジ」、
「愛さんさん宅食」は障害福祉を担っています。
代表取締役 | 小尾 勝吉(おび かつよし) |
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事業内容 | 有料老人ホーム、通所介護、居宅介護支援、(予防)訪問介護、家事代行サービス |
従業員数 | 15人 |
創業 | 2017年2月1日 |
代表取締役 | 小尾 勝吉(おび かつよし) |
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事業内容 | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、配食サービス、障害者向け福祉人財養成学院 石巻教室 |
所在地 | 〒985-0052 宮城県塩釜市本町12-5 |
従業員数 | 50人 |
創業 | 2013年3月11日 |
誰もが「燦々と」輝ける社会を目指す
2013年に塩釜市で始めた高齢者向け配食サービスで「愛さんさん宅食」という名称を使っていました。当時の社名は「株式会社ソーシャルプロジェクト」。震災後すぐに立ち上げた会社で、社会課題を解決する会社という意味でつけました。「愛さんさん」を社名にしたのは2016年からで、美空ひばりさんの『愛燦々』という曲名に由来しています。
3つの思いを込めました。
① さんさんと輝く光となり、様々な方々を照らせるように
② 働く仲間やお客様、地域に愛されるように
③ 英語にすると、「愛さんさん」は「i sun sun」。つまり「私、輝く」という意味に。通常働くことが難しい方も、良いところに光をあて、それを伸ばしながら、輝いて働けるようにという思いも込めているんです。覚えやすくていいねえと言っていただけています。
「理想の村づくり」をしたいと考えたからです。
家族愛を理念に、まずは働く仲間が大切な人を守れる自分になる事を全力応援する組織にしたいです。そうでなければ、本質的にお客様によいサービスを提供できないと考えています。働いている一人ひとりがやりがいや生きがいを見出し、会社を自己実現の舞台としながら、お客様が何を求めているかを常に考え、心に寄り添いながら、リハビリの先にある夢を叶えるお手伝いをする。そして、障害のある方も高齢の方も職員も、皆で寄り添い、感動を分かち合う大家族を目指していく、その先に、「理想の村」があると思っています。
施設案内!介護と障がいを持つ方の働く場所が共存する空間
有料老人ホーム「愛さんさんビレッジ」の建物は2階屋です。同じ建物内には、「愛さんさんデイサービス」に加え、「愛さんさん宅食」の調理や盛付を行う配食センターと「福祉人財養成学院 石巻教室」が併設されています。
最初に見せていただいたのは、1階と2階に部屋がある老人ホーム「愛さんさんビレッジ」。
入居者の方々が暮らす空間は全体的に木を基調としています。廊下や20室ある部屋は車いす同士でも楽に生活できる広さ。大きな窓が沢山あり、降り注ぐ光が施設内を温かく包みこんでいます。
最大の特徴は、「自立支援」に特化していること。入居時には、まず利用者の夢、例えば「もう一度畑仕事をしたい」、「孫の結婚式に出たい」といったことを聞いて、実現に向けてリハビリプログラムを作成し、介護度やADL(日常生活動作)・IADL(手段的日常動作)の改善をはかります。
愛さんさんビレッジでの介護職員の仕事は、利用者の夢を叶えるプロデュースをする事です。
2階の奥には、介護人材の担い手を育成すべく併設された「福祉人財養成学院 石巻教室」が。軽度の障がいや難病を持つ方が、生活のリズムを整えながら就職や復職する支援を受けたり、介護職員初任者研修の勉強を約1年かけてして資格を取ったりすることが出来ます。これまで5人が資格を取り、愛さんさんビレッジで実習をされたり、働いているそう。
愛さんさんビレッジで使われている一部の椅子やテーブル、ベンチなどは福祉人財養成学院の生徒や職員等が大工さんと一緒に作ったもの。施設づくりから共に関わる事で、一体感を創ることが目的だそう。しっかりとした作りでかなり本格的!
続いては、1階に戻り、「愛さんさん宅食」の石巻配食センターへ。
天然だしを使うなど食材にもこだわっている「愛さんさん宅食」では、様々な病気や噛む力に対応しています。配達をするスタッフの多くは厚生労働省推奨の認知症サポーター養成講座を受講済み。そのため、お弁当を届けるだけでなく、植木の水やりなど3分以内で出来るサービスも行いながらコミュニケーションをとることで、介護予備軍を早期発見するという役割も果たしているそうです。また、障害を持つ方も積極的に受け入れており、現在、調理と配達合わせて19人が働いています。
調理場の横には、「美味しくいただきました。いつもありがとうございます」といった利用者の声や「沢山の事を学ぶことが出来た」という支援学校の生徒さんからの職場体験のお礼の手紙がありました。
外に出てみると、「自家農園 SUN SUN Farm」がありました。
愛さんさんビレッジの入居者もリハビリを兼ねて畑仕事をすることができます。
「食事を大切にしている愛さんさんビレッジでは小松菜、大根、ニンジン、じゃがいもなど、とれたての無農薬野菜を提供しています」と小尾さんは教えてくれました。
▲写真提供:愛さんさんビレッジ株式会社
取材を終えて
リアルな場を提供し、「『介護が必要である』『障がいを持っている』ことに制限されず、夢を叶えること」を実現させている愛さんさんビレッジ。
特に、働くスタッフのことを「一緒に夢を叶えるプロデューサーのような仕事」だという小尾さんの言葉に心を動かされました。
私も色々な人の生き方を肯定したいという思いから、来年から福祉分野の仕事に就くことが決まっています。大変だと思われがちな福祉の仕事に対して、明るいイメージを持ってもらうことで、一緒に働く仲間が増え、理想とする社会の実現に近づくことができるのではないか、と今後のヒントもいただきました。
近日公開予定のワタシゴトでは、小尾さんの仕事観にさらに迫っています。
起業までの道のりや、働く仲間への思いをたっぷり伺ってきたので、お楽しみに!
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取材・写真協力:愛さんさんビレッジ株式会社
文章・写真:菅野智佐(山形大学4年)
この記事を書いた人
- 生粋の田舎娘、‘すげのちさ’ と読みます。仙台は都会ですね。よく迷子になります(いつもか)。グーグルマップが手放せません。でも地図を読むのが苦手なので使いこなせない…。笑 こんな私ですが、読者の皆さんを取材現場に連れて行くことが出来るような記事を書いていきたいです!
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