記者インターン

「岩見組」町のためにできることから

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715 views 2017.08.10

2017年2月に一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催した、記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が執筆した記事を紹介します!

町のためにできることから

「地元の資材を生かし、地域の困りごとを解決したい」。宮城県山元町の建設会社「岩見組」岩見圭記社長(51)は力強く話す。常磐自動車道、山元インターチェンジ近く。事務所脇にダンプカー、ショベルカーが並ぶ。1972年の創業以来、道路工事や建物の基礎作りなどに携わってきた。現在は仕事の7、8割を東日本大震災の復興事業が占め、新市街地づくりを担う。

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公共事業は年々減少していた。「これからどうしていこうか」。社員が知恵を出し合い新たな需要を掘り起こしていたころ、震災が起こる。山元町沿岸部は津波に襲われ、多くの町民が犠牲となった。敷地にあるがれきを運搬し、全半壊した家屋を解体。「とにかくがれきをどかさないと、何もできなかった」。次々舞い込む仕事、無我夢中で働き続けた。
仕事が増え、経営は持ち直した。一方、町内には生活の立て直しに懸命な人たちがいる。「忙しくなっていいね、という言葉が耳に残っている」。大変な出来事で仕事を得ていることへの葛藤が続いた。地域への使命感が一段と強くなった。
3年前、地域住民の意見をもとに開発したのが庭に敷く「里山マット」。当時、町ではお年寄りの転倒によるけがを心配する声が上がっていた。木のチップでできたマットを踏むと、土のように柔らかい。転んでも、衝撃が吸収されるため、けがの心配が少ない。町で取れた資材を使い、地産地消も意識した。
会社を支えた復興事業もやがては減少していく。今後を見据えれば、地域に根差した事業が必要になるだろう。「まずは里山マットをより良いものにする」。より柔らかく、チップが剥がれにくい、満足のいく製品を作るまで改良を続けていく。
「困ったときには岩見組」。地域に必要とされる会社であり続けるために土木業の枠を越えることもいとわない。町に寄り添い、町のために働く。今後も姿勢を貫く。

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取材後記

「こんなに町を思う会社があるのか」。取材の感想を一言で述べるならこれに尽きる。町の変容を最も間近で見てきたのは、建設会社ではないだろうか。震災の翌日から瓦礫の撤去、全半壊した建物の解体。この前まであった町を元通りにするのではなく、もっと元気にしたい。岩見さんの話は、胸に響いた。その言葉は町の復興のために行動してきた人にしか語れないものだと思う。
町の困りごとを解決したい。私自身、地元は大切に思っているし、空気・人柄・風景が好きだ。だが、好きだからといって私は町のために行動してきただろうか。地元の人の声を聞いて、困っているところがあればどんなに小さなことでも手助けをするということが、私にはできるだろうか。しばらく考えたが、できる、と言いきることはできなかった。
岩見さんの取材を通して、何よりも感じたことは行動することで初めて思いが体現化されるのだという事実だ。相手に気持ちが伝わらないのは、言葉にしていないからかもしれない。知人を怒らせてしまうのは、本気で謝罪していることを行動で示せていなかったかもしれない。過去の自分の行動を振り返ると、反省することだらけだ。今からでも遅くはない。岩見さんのお話を胸に、思うだけでなく、その思いのために行動しようと心に決めた。

取材協力

株式会社 岩見組

文・写真

河北新報社インターンシップ15期A班 
法政大学2年 北本優葉(2017年2月当時)

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この記事を書いた人

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一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪