テラス

「株式会社ごんきや」五十嵐守人さん・遠藤清子さん【いぐするテラス】

藤原 佳那 藤原 佳那
468 views 2017.08.03

伝統を継承し未来へつなぐ企業のあり方とは?

7月5日のいぐするテラスは、株式会社ごんきやの五十嵐守人さんと遠藤清子さんをゲストに開催されました。ごんきやは、今年で創業202年の老舗企業。お葬式の対応から墓石や仏壇・仏具の販売など、仙台市や塩釜市を中心に葬儀に関わる事業を展開しています。五十嵐さんと遠藤さんは渉外営業課の課長の傍ら、採用も担当。遠藤さんは「終活カウンセラー」としても活躍しています。
「伝統を継承し未来へつなぐ企業のあり方とは?」をテーマに、ごんきやの仕事の魅力やこれからの取り組みついて聞きました。

こだわりのお葬式

葬儀を終えてから後悔しないように、亡くなった方の生きた証を上手く引き出すのが葬儀社の仕事だといいます。そのため、ごんきやの特徴は「こだわりのお葬式」。さまざまな仕掛けを盛り込み、故人らしいお葬式にこだわっています。
昔は一般的に、生前にお葬式の準備をするのは死を意識して縁起が悪いとされていたそうです。しかし今では、亡くなる前に本人や家族がお葬式に関する情報を得て、準備をするケースが増えています。後悔しないお葬式にするために、準備の過程では本人や家族のさまざまな要望に応えます。
さらに、故人らしさを出すために、ごんきやから遺族にサプライズも行っています。故人が釣りを好きな方だったら祭壇に釣り竿を差したり、ゴルフ好きだったら緑が多めの祭壇にしたりするなど、遺族の気持ちをくんでお葬式作りをしています。
こうした気配りやサプライズに対して、遺族から感謝されたりお礼の手紙をもらったりすることも多いといいます。「人生最後のセレモニーの瞬間に立ち会えることは奇跡に近いことで、遺族に寄り添い感謝されることはこの上ない喜びです」と、五十嵐さんと遠藤さんは仕事のやりがいを語りました。

gonkiya2017-6

後悔しない人生を始める活動「終活」

遠藤さんは、お姑さんの知り合いがごんきやに勤めていたことをきっかけに、中途採用で入社。葬儀社自体があまり良いイメージを持たれていないと感じていたため、葬儀社で働くことで周りの人からどう思われるのか、当初は周囲の目を気にしていました。
東日本大震災で、七ヶ浜で同居していた義理の両親を亡くした遠藤さん。思いがけない身近な人の死と向き合ったことで、「終活カウンセラー」の活動に力を入れ始めました。終活と聞くと、お墓やお葬式など残される家族の負担を軽くすることや、自分自身で死を迎えるための準備を想像するのではないでしょうか。しかし、最近は「死ぬまでにどう生きるか」の人生設計をする活動になってきています。
遠藤さんは、震災をきっかけに「終活カウンセラー初級」を取得。終活セミナーの開催や、エンディングノートの書き方や書くきっかけを提供しています。「生きた証を残すためにも、生きている間に何をするのか、後悔しないためにどうするかが大事」だと遠藤さんはいいます。そして、若者にもぜひ終活をして欲しいのだそう。「震災をきっかけに、生と死が隣り合わせだと感じた人は多いはず。いつ死が訪れるか分からないため、後悔せずに良い人生が送れるように取り組んでみて」と。

gonkiya2017-4

変わらないために変わる

五十嵐さんは、もともと総務経理係として入社しましたが、現在の会長に「対外的なコミュニケーションが得意なのではないか」と言われたことがきっかけで葬儀を担当するようになり、現在の採用担当に繋がっています。
ごんきやでは中途採用が主でしたが、徐々に新卒採用を増やしています。「若手社員やキャリアの浅い社員が意見を言える場を設けると、当たり前になっている部分を改めて言われ、はっと思い知ることがあります」と五十嵐さんはいいます。葬儀が、亡くなった方を葬るための儀式であることは変わりませんが、時代とともに変わらなければ、葬儀本来の意味を失いかねません。時代の変化に合わせるためにも、若手社員の意見を取り入れ、お葬式のサプライズなどに繋げています。
また、外国人の葬儀を行うこともあり、どんどん増える県内の外国人に対して、各国の葬儀事情も学ぶ必要があると五十嵐さんはいいます。宗教の教えに応じてそれぞれの形があるため、依頼者に喜んでもらうためにも、ますます宗教を学んでいきたいと意欲を示していました。

gonkiya2017-3

様々なことへの関心が興味の幅を広げる

この日参加したのは、大学生と若手社会人の3名。ゲストのお話をメモしながら、時に「へー!」と参加者全員が驚くような場面もありました。終活について「どのように生きれば後悔しないか考えることが大切だと感じた」と興味を示していました。少人数の対話形式だからこそ、疑問を直接ぶつけることができました。
私は、葬儀社は、悲しい場面に立ち会う辛い職業だと思っていましたが、そのイメージは無くなりました。「故人の生き様がお葬式に出ていて、人生勉強をその場で見ているようでいろいろなことを学ばせてもらえる」と言っていたのが印象的でした。また、大学2年生ということもあり、徐々に将来について考え始めていましたが、自分がしたいことがどの職種に当てはまるのかということが分からずにいました。ですが、葬儀社という職種では想像できないグローバルな一面があるということを知って、勝手に職種だけで興味がないと決めつけるのではなく、いろいろな職種について調べたり話を聞いたりすることで、興味の幅を広げられると感じました。自分で範囲を狭めずに、さまざまなことに関心を持っていきたいです。

gonkiya2017-2

取材協力:株式会社ごんきや
文章・写真:藤原佳那(東北学院大学2年)

next_action

この記事を書いた人

藤原 佳那
藤原 佳那
いぐする仙台の元学生編集長、藤原佳那です。
生まれも育ちも仙台の、生粋の仙台っ子。趣味は映画鑑賞で、仙台パルコ2に映画館ができたこともあり映画好きに拍車がかかっています。
画面の見過ぎで視力がどんどん大変なことに・・・