従業員の半数が女性、東北のダイバーシティ経営をリードする「株式会社 佐藤金属」
文系の私にとっては未知の世界…胸を躍らせて取材に行ってきました!
佐藤金属ってこんな会社
宮城県の南部に位置し、2018年10月に開催された「東北・みやぎ復興マラソン」のランニングコースにもなった岩沼市。大型トラックが行き交う、岩沼臨空工業団地の一角に「佐藤金属」はあります。
到着して最初に目に飛び込んできたのは、壁に大きく書かれた「佐藤金属」の文字。会社のホームページで見ていましたが、改めて間近で見ると、いよいよ取材が始まるんだと気が引き締まります。
取材に答えてくださったのは、社長の佐藤克己さん(53)です。
▼写真左が佐藤社長
主な事業内容は、金属リサイクルと産業廃棄物処理。契約先の大手製造メーカーから、リサイクル製品の集荷・引き受けを行っています。
製品の解体は、メーカーごとに手作業で行います。ある程度、手解体してから、最終的には金属を取り出す製錬(せいれん)会社などに出荷します。
「金属リサイクルは製造の逆」と佐藤社長。素材から製品をつくるのが製造だとすると、製品を解体・選別して素材に戻していく金属リサイクルが、佐藤金属の仕事です。
お母さんが活躍!“ダイバーシティ経営”
佐藤金属は、2015年に「経済産業省ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれました。ダイバーシティ経営とは、性別や年齢などに関わらず、多様な人材を生かして価値を生み出す経営のことです。
佐藤金属では、従業員15名のうち約半数を女性が占めています。そのほとんどが子どもを育てながら働くお母さんで、主に製品の解体や分別で活躍しています。流れ作業ではなく、一人ひとりで作業が完結するため、子どもの夏休みなどのタイミングに合わせて休みをとったり、産休に入ったりしやすい仕組みになっています。
このような働き方を可能にしたのは、社長の思いがあります。小さい子どものいるお母さんにとって、子育てと仕事の両立は大変です。時にはいらだってしまったり、子どもと会話する時間を持てなかったりと、様々な問題が出てきてしまうでしょう。
「できるだけ子どもと過ごす時間を作ってあげたい。そうすることで、従業員の子どもが愛情を感じて育ってくれるのでは」と佐藤社長。
現場の柔軟な対応を可能にする“脱マニュアル”
父が創設した会社を継いだ佐藤社長。大学での学部は文系で、金属を専門に学んだわけではありませんでした。しかし、幼い頃から遊び道具として、日常的に金属と触れる機会が多く、自然と金属の知識が身につきました。
自身の経験から、従業員の教育は実際の業務を通して訓練するOJTが中心となっています。また、1つの作業に特化したスペシャリストではなく、ジェネラリストの育成に努めています。従業員の働きやすさと効率性を考え、作業を現場で柔軟に変えられるように、敢えて細かい作業マニュアルを設けていません。代わりに、大まかなガイドラインを作成しています。
地域にいながら“世界情勢”を感じられる仕事
金属の相場は、変動が激しいといいます。そのため、相場の動きに常に目を光らせて、出荷するタイミングを図らなければいけません。
相場の変動は、国内にとどまらず世界の情勢も大きく影響するため、佐藤社長は世界中の情報を広く浅く収集しています。世界を捉える広い視野を持つ必要がある仕事、地域にいながら世界情勢に直結している仕事ができます。
東北を“一人前”に
社長に就任して、今年で10年目。「這いずり回った10年だった」と佐藤社長は振り返ります。
就任の1か月後に起きたリーマンショック。それを乗り越えて、やっと経営が安定してきた頃に、東日本大震災が発生。
「そのつど抱いた感情の積み重ねがあるからこそ、今がある」という佐藤社長の言葉が印象的でした。
▲震災で津波が押し寄せた高さに、目印が貼られています。
現在、日本の人口に占める東北6県の人口は、約11%で、全国のGDPにおける東北6県のGDPは、約6%です。いわば「東北は半人前ということになる」と佐藤社長。
東北を“一人前”にするために、今後は「会社としてできることを増やしていきたい」と言います。最近では、素材に戻せる製品がつくられるなど、環境やリサイクルについて本格的に考えられているため、佐藤金属にとっては“追い風”の時代。新しい機械の導入といった設備投資が必要にはなりますが、取引先の開拓やリサイクル品目を増やすことを通して、「東北に資源を循環させていきたい」と語っていました。
また、取材の中で「大手製造メーカーと本社契約していることもあり、なかなか公にできない部分がある。やっていること自体は面白いと思うが、学生向けの就職説明会では自社のことを魅力的に詳しく説明できない」という佐藤社長の言葉があり、いぐする仙台で地元企業の魅力を発信する意義を感じました。面白い企業だとしても、学生にはなかなか知る機会が無く、企業側も学生に話せることに制限があります。そのため、そういった悩みを抱える企業と、企業について知りたいと思っている学生をつなげる架け橋に、いぐする仙台がなりたいと思いました。
この記事を書いた人
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いぐする仙台の元学生編集長、藤原佳那です。
生まれも育ちも仙台の、生粋の仙台っ子。趣味は映画鑑賞で、仙台パルコ2に映画館ができたこともあり映画好きに拍車がかかっています。
画面の見過ぎで視力がどんどん大変なことに・・・
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