学生記者がお仕事の魅力を発見!仙台イケてる会社訪問
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少ない雨でも植物が育つ!緑化の技術力「株式会社 丹勝」

藤原 佳那 藤原 佳那
748 views 2019.08.08
藤原 佳那 藤原 佳那 東北学院大学
仙台市の自宅近くにある錦町公園では、四季折々の植物を楽しむことができます。中でも色鮮やかに咲く、花壇のチューリップ。「私達が育てました」と書かれた看板があり、いくつか並ぶ社名の中から「株式会社 丹勝」を見つけました。

普段見かける花壇などがどのように整備され、そうした緑化にどのような思いで取り組んでいるのか興味を持ち、取材してきました!

丹勝ってこんな会社

JR仙石線の小鶴新田駅からバスで5分ほどのところに、工場や倉庫など企業の建物が多く建ち並んでいます。その中に、屋根や壁面にたくさんの植物が植えられ、ひときわ目立っている建物が「丹勝」の本社です。


▲緑化された屋根

昭和52年(1977年)に、現社長の丹野勝治さん(77)が創業しました。

主な事業内容は、法面(のりめん)事業と緑化事業です。

法面とは、土地を切ったり盛土をしたりすることで作られる“人工的な斜面”のことで、高速道路などの両脇にある、あれ(下の写真)です。
そして、その法面を、植物やコンクリートによって安全かつメンテナンスが容易になるように整備するのが「法面事業」です。


▲法面工事前の例


▲法面工事後の例

「緑化事業」では、法面や建物の屋上、壁面などの緑化を行います。
公共事業が主で、高速道路や避難道路の法面の緑化を手がけています。その他には、仙台駅近くのビルの屋上や、亘理や塩釜などで震災時に使用されていたプレハブの屋根の緑化を行ったそうです。

屋根や屋上の緑化を行うことで、夏には屋根の温度を10度近くも下げて涼しく、冬は保温効果により暖かくなります。


▲屋上緑化の例

仙台の企業魅力

試行錯誤を重ねた技術力

壁に飾られているのは全て「特許証」です。ここに飾られているほかに、有効期限が切れてしまった特許もあるため、これまで取得してきた特許の数は40以上になります。


▲特許の数に驚き!

丹勝独自で開発した「植栽マット」や「アンカー」が代表例です。
緑化をすると、水をあげたり雑草を抜いたりと、あれこれ手間がかかってしまいます。ですが、そこに植栽マットを敷くことで、少量の雨水だけで植物が育ち、雑草が生えにくくなるので、メンテナンスが簡単になるそうです。


▲植栽マット

アンカーは、樹木を植える際に動かないように固定する道具で、一度固定するだけで何十年経っても動かない上、しっかりと根っこの部分から固定することで樹木にも栄養が届きやすく、育ちやすい利点があります。

「この仕事は追跡調査など時間がかかる仕事。失敗を積み重ねて研究してきたからこそ自信に繋がっている」と丹野さんは言います。
従業員50名のうち、緑化事業に携わる緑化部はたったの4、5名。社長を中心に、少数精鋭で試行錯誤を繰り返してきたからこそ、数多くの特許を取得できる技術力に結びついています。

仙台から海外に進出できる仕事

「日本のみならず、海外にも視野を広げて技術を広めていきたい」と丹野さんは話します。
暑くて植物が育ちにくい国や水不足で困っている地域でも、丹勝の技術があれば少ない水で植物を育てることができます。

しかし「日本は緑化に美的要素を求めるが、外国は植えられていれば良いという考え方がある」と、国ごとに文化や認識の違いがあるそうです。これまで何度か緑化の提案をするために大使館を訪れましたが、なかなか事業には結びつきませんでした。

この違いを乗り越え、技術を広めていくためには、日本の大学と現地の大学とが繋がり、窓口になってもらうことで、壁が低くなるのではないかと丹野さんは話します。「植物や緑化の研究をしている大学同士で、技術の共有や緑化事業の展開に繋げてほしい」。


▲取材中の様子。真ん中は、松島営業所の中西所長。

資金面の壁を乗り越えて

日本には、敷地面積の一定割合以上の緑化を義務づける「都市緑地法」という法律があります。ですが、緑地が足りない分を植えて最低基準を満たす程度にしか考えず、美化や環境を意識している人が少ないため、屋上や屋根の緑化を依頼する人は少ないといいます。法律で義務づけられてはいますが、予算に余裕がある企業しか取り組まず、自治体も資金面の壁に尻込みをしてしまうのが現状です。

「杜の都仙台と言いつつも、緑が少ない」と丹野さん。杜の都である仙台から、緑化を広めることを目指しています。

また、長年緑化に携わってきたことから「草も人間も一緒。ほったらかしておくと枯れてしまう。枯れないように教育して育てることが大事。若い人たちに技術やノウハウをバトンタッチしていきたい」と話していました。

実際に丹勝の屋根緑化を見て、部屋の温度を緩和する効果があるだけではなく、緑があるだけで和み、非常に魅力的でした。緑化の技術はなかなか表からは分かりにくいですが、縁の下の力持ちのような存在で必要不可欠だと実感しました。また環境問題は、今年6月に開催された「G20大阪サミット」でも議題の1つとなりました。「世界の緑化に意欲的に取り組みたい」という丹野社長の思いにもあるように、緑化の技術を世界と共有することで、もっと多くの人々が緑化に興味を持ち、環境問題を解決する糸口になってほしいと思いました。
藤原 佳那藤原 佳那東北学院大学
文章:藤原 佳那(東北学院大学4年)
写真:株式会社 丹勝、安本 亮(東北大学4年)
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株式会社 丹勝
http://www.tankatsu.co...

この記事を書いた人

藤原 佳那
藤原 佳那
いぐする仙台の元学生編集長、藤原佳那です。
生まれも育ちも仙台の、生粋の仙台っ子。趣味は映画鑑賞で、仙台パルコ2に映画館ができたこともあり映画好きに拍車がかかっています。
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