学生記者がお仕事の魅力を発見!仙台イケてる会社訪問
イケ社

魚嫌いでも食べられる!女川の鮮魚を加工する「ワイケイ水産 株式会社」

河原 颯 河原 颯
813 views 2019.08.22
河原 颯 河原 颯 東北学院大学
港町の塩釜市出身で、海がいつも隣にある環境で育ってきました。塩釜市は練り物などの水産加工業が盛んで、子どもの頃から仕事内容に興味がありました。水産加工って具体的に何をしているの?と疑問を持つ人は、私だけではないと思います。今回取材した「ワイケイ水産」は、水産加工を通じて“食の大切さ”を発信しようと努めている会社です。記事を通して、ワイケイ水産の魅力・女川の魅力をお伝えします!

ワイケイ水産ってこんな会社

震災後に建てられた新しいJR女川駅から、海の方に車で行くこと約15分。湯気が立ちのぼる工業地帯の一角に、「ワイケイ水産 株式会社」はあります。

去年(2018年)、創立50周年を迎えました。サンマや鮭などの魚を加工していて、頭や骨を取るなど加工の種類はさまざまです。製品は、主に他の食品会社に卸していますが、オンラインショップで子育て中のお母さんなどをターゲットに直接販売もしています。「幼い頃から鮮度の良いものを食べていると、食生活を豊かにする。食卓に鮮度の良い商品を提供したい」と、取締役の木村悦子さんは話します。

女川汁(温かいすまし汁にさんまのすり身を入れた食べ物)に使われる「さんまのすり身」が一押し商品。

2011年の東日本大震災では、被害総額およそ18億円と甚大な被害を受けましたが、巨大冷蔵庫などの設備が無事だったため、その年の9月11日に営業を再開することができました。

震災前から毎年秋に行われている「サンマ収穫祭」は、取締役社長の木村喜一さんが企画したイベント。震災後も継続して行い、女川振興にも力を注いでいる会社です。

▲取材に応じる木村喜一さん(左)と木村悦子さん(右)

仙台の企業魅力

“魚嫌いでも食べられる”商品へのこだわり

“魚嫌いでも食べることができる”ことを理念に掲げるワイケイ水産の商品は、全く臭みがありません。さんまのすり身を使った料理をご馳走になりましたが、癖がなく魚の旨味だけが残っていました。

商品へのこだわりは2つあります。

1つ目は、3枚におろしてからすり身などに加工していること。骨などの除去作業がしやすくなり、効率のいい加工ができます。作業を素早くすることで、鮮魚の温度が上がると発生する「ヒスタミン」などの食中毒成分も抑えられます。臭みを抑えるだけでなく、衛生面にも良い効果があります。

▼取材に伺った時間は、工場で鮭の加工をしていました!

2つ目は、鮮度の良い魚を使っていること。「女川一と周りからも言われます。私たちの強みの1つです」と悦子さん。朝水揚げしたばかりの魚を自慢の目利きで見極めて、昼には加工しています。鮮度が良いほど、魚のおいしさが残ったまま商品になります。

この2つが、“魚嫌いでも食べることができる”商品へのこだわりです。

社内に行き届く“お客様第一”のマインド

「お客様に安心・安全でおいしい製品を提供し続けることが第一」と悦子さんは話します。震災後、商品の付加価値を高めるため、食品の管理手法「HACCP(ハサップ)」に基づいた工場に作り直し、衛生面により重点を置きました。「ワイケイ水産のザルやタンクは、女川で一番きれいだ」と、同業者からも称賛の言葉をかけられると言います。

私も工場を見学しましたが、きれいな設備と魚臭くない空気を実際に見て感じました。安心・安全を意識し、お客様に満足してもらえる商品を作り続けるための工夫を実感できました。 

▼きれいに清掃されたサンマの加工設備

お客様第一のマインドは、従業員の間でも共通の認識になっています。従業員の皆さんは、口々に「おいしそうな魚だな~、かせってな~」と呟いているそう。(かせるは方言で「食べさせる」という意味)

おいしい魚をお客様に早く届けたいという思いが、どこか故郷に戻ってきたような懐かしさを感じる味を作っています。

人手不足の中で…若者や外国人実習生へのアプローチ

現在、業種を問わず「人手不足」が社会問題になっています。水産加工業では、深刻な人手不足に悩まされているのも事実です。

そこでワイケイ水産では、若者の関心を高めるために、去年からインターン生の受け入れを開始。「インターン生は終始目を丸くして、たくさん質問してくれた。若者に関心を持ってもらうための活動を、今後も続けていきたい」と、悦子さんは話します。

従業員の対象は、日本の若者だけではありません。外国人実習生の受け入れも毎年行っていて、現在9名が現場で活躍しています。「人手不足を補いたいという目的だけではなく、日本の技術や文化を学び、自分の将来に役立ててほしい」という悦子さんの言葉が印象的でした。

実習生とは、実習が終わった後も関係が続いていくそう。「結婚式に来てほしい!と頼まれ、実習生の母国まで出席しに行ったことがあります」と、心温まるエピソードも聞くことができました。

印象深かったのは「サンマは女川の宝物。それを今後もみんなで守っていきたい」という悦子さんの言葉。従業員一人ひとりの思いを代弁しているようにも感じました。サンマ、そしてお客様への思いが共有されているからこそ、優しい味のすり身が生まれているのだと思いました。
また、今回の取材で、社会の仕組みを少し知ることができました。経営規模が大きくなるほど、経営者と従業員の思いには乖離が生じやすくなりますが、「ワイケイ水産」としての思いが社内で明確に共有されていることに驚きました。「うちの従業員は、本当に仕事が早いんですよ」。悦子さんの言葉に、従業員との信頼関係を感じたことも印象的でした。実際に“チームワーク”が活かされている現場を見て、私も社会に出た時に意識していきたいと思いました。

▼最後に、悦子さんと看板を挟んで1枚!

河原 颯河原 颯東北学院大学
文章:河原 颯(東北学院大学3年)
写真:ワイケイ水産 株式会社、安本 亮(東北大学4年)
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ワイケイ水産株式会社
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この記事を書いた人

河原 颯
河原 颯
生まれも育ちも、宮城県塩釜市です。生まれ育った塩釜市、さらに宮城県の人、企業の良さをさらに引き出せるような記事を執筆していきます!
趣味は、休日に古着屋さんを回って服を見ることです!