「ジェラテリア ナチュリノ」地域の思いをジェラートに
2017年2月に一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催した記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が執筆した記事を紹介します!
ジェラテリア ナチュリノ 地域の思いをジェラートに
口にした瞬間、とびきりの笑顔と「美味しい!」の声。色鮮やかなジェラートが並んだ店は、寒い日にも関わらず満足げな表情で溢れている。
名取市にあるジェラート専門店ナチュリノ。2015年7月に開店した。18種類ある商品のほとんどに地元産中心の素材を用いる。イチゴなら宮城県亘理町産で、イチジクならお隣の山元町産。原料の生乳は毎朝、色麻町から仕入れる。「美味しいと思ったら、今度は食材も買ってほしい。ジェラートを通じて、地元食材の魅力を知ってもらうのが店の役目」。代表の鈴木知浩さん(41)の願いは、地域振興にある。
名取市に生まれ、地元食品卸売会社の二代目として家業を継いだ。故郷の農地は東日本大震災の津波で傷つき、地元農家が懸命に蘇らせた作物は、福島原発事故の風評被害という第二の壁で販路がしぼんだ。「いつまでもやられっぱなしではいられない。頑張りが報われる道はないか」。ひらめいたのは、万人から愛されるジェラート作りだった。地場の素材を探し求め、県内で被災した生産者らを訪ね歩いた。 看板メニュー「お米のジェラート」は、名取市の農業法人「美田園マルシェ」のひとめぼれを用いる。専務の大友慎吾さん(32)は、「目の前で売れていくことが嬉しく、励みになる」と感謝する。ナチュリノは地元生産者と消費者をつなぐ懸け橋だ。
「恵みを感動に」をコンセプトに、新鮮さに重きを置く。だから冷凍食材は使わない。そのため1店舗だけでは使える農産物の量に限界がある。「素材の美味しさを伝えながら、安定的な収入を望む生産者の期待に応えられる方法はないか」。理念と現実の間に悩んだ末、たどり着いたのは冷凍のノウハウを生かした低価格の新ブランド。17年4月からネット販売にも乗り出す。地元食材を使い、地域の結び役となるナチュリノ。「被災地」の名を溶かし、これからも地元生産者の思いを日本中に届ける。
▲ジェラートの魅力をアピールする鈴木さん。店には生産者の写真を大きく掲げる
取材後記
「食は人に元気を与え、笑顔にしてくれる」福島県に住んでいる私が、東日本大震災で被災をして身をもって感じたことです。私は食の力を改めて知りたいと思い、飲食に携わる企業への取材を考えました。
鈴木さんの最終的な目標は、「子ども達がこの地に残って生活をすること」。そのために、元々持っていた冷凍のノウハウと地元の食材とを組み合わせた新しい販売方法を用いて、地域に寄り添い続けています。被災地個人の思いが集まり、次第に具体的な形となっていく姿は、私が今まで見ていなかった世界でした。地域と人の結び役となるナチュリノを取材して、私も鈴木さんのように地域の力になりたい、何か行動に移したい、と心動かされました。見たことのない世界はとても刺激的で、新鮮です。今回の取材を通し、一人ひとりの新しい考えを知り、自分自身の考えも深められたのではないか、と思います。
今後、無力ながらも学生の視点を大切に、企業にとどまらず地域一人ひとりの思いをもっと聞いていきたいです。
取材協力
文・写真
河北新報社インターンシップ15期C班
尚絅学院大学1年 遠藤優佳(2017年2月当時)
【参加者募集】河北新報社「記者と駆けるインターン2017夏」
8月14日(月)~26日(土)の期間で、地元中小企業を取材し、記事執筆のノウハウを学ぶインターン。
詳細や参加方法は、特設ページからチェック!皆さんの参加をお待ちしています。
申込締め切り7月14日(金)
この記事を書いた人
- 一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪
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