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水産業にICT技術を活用!?震災後の海に挑む「アンデックス株式会社」三嶋順さん

シズカ シズカ
516 views 2017.02.16

水産業にICT技術を活用?!震災後の海に挑む

「水産」と聞いて思い浮かべるのはたくましい漁師さんの日に焼けた顔や美味しい海産物。どちらかというと「最先端の技術」や「ICT」という言葉と組み合わせてイメージする機会は少ないのではないでしょうか。1月26日のいぐするテラスは「水産業にICT技術を活用?!震災後の海に挑む」と題してアンデックス株式会社の代表取締役、三嶋順さんをゲストにお招きしました。
アンデックスが今、力を入れて取り組んでいるのは大学の研究室や大手通信会社と組んで開発している「海に出なくても漁場の状況がわかる」システム。
ITベンチャーのアンデックスがなぜ水産に関わることになったのか、三嶋さんに聞いていきます。

水産を次世代につなぎたい。技術を活用して「新たな仕組み」づくり

イグテラ-アンデックス1

社員が45名ほどのアンデックスは技術集団の会社。本業の7割がコンピューターのシステム受託開発、3割は自社開発、研究開発です。本社は仙台で、他に東京、盛岡、青森に出先機関があります。
水産にICTを組み合わせることができないかと取り組み始めたのは3年ほど前から。
これまでは船で一か所一か所周り測っていた海水温を収集できるよう水温センサ付ブイを開発しました。海に浮かべるブイに、水温を測るセンサを取り付け、データは通信システムを利用して収集できるのです。「ブイが増えれば点でしか分からなかったものを面で把握できるようになる。海のアメダスのようなものになれたら」。大学の研究室や大手通信会社と組み、現在は漁業だけでなくカキの養殖も盛んな松島湾で実証実験中です。
ブイの普及には課題があります。「値段が高いのがネックなんです」。でも、西日本の地域や海外から問い合わせもあるそう。
現場の問題解決や地域課題を解決することが地域貢献となり、みんなが幸せになると三嶋さんは考えています。「ノルウェイでは水産は進んでいて人気の職種。でも日本では漁業は若者の参入も少なく高齢化しています。壁になっているのは初期投資や経験や長年勘を磨かなければ稼いでいけないというところなのではないでしょうか。このブイのようなツールで収集したビッグデータを次の世代に向けた教科書にしていければ」。続けて言います「ただブイをつくるだけではなく、課題から最後の利用者までを見て、その中で自社はここができると役割を考える。色々な人と協力しながら水産を変えていたい」。

いぐテラ-アンデックス2

野球を通してみんなに応援されたという感動。恩返ししたい

「なぜこんなに身体が大きいのかってところから話していこうかな」と快活に話す三嶋さん。それもそのはず、東北高校の野球部で3回も甲子園に出場した経験があるのだとか。「小さい頃からずっと周囲の人に応援されてきた。甲子園の時はそれこそ県内のたくさんの人から。みんなに応援されたという感動、幸せ。社会に恩返ししたいという気持ちがある」。
仙台生まれ、仙台育ち。50年間仙台以外で暮らしたことがないんだと笑う三嶋さんは、高校卒業後は食品メーカーや水産系の商社に勤務。7、8年働いた商社時代は現場をみた方がいいと港にも通っていたといいます。その後、趣味を通じて出会った社長に誘われITベンチャーへ。31歳でIT業界に転身するのは遅い方と話します。これまでの経験を自分なりに考え「営業と企画と管理は得意かな」と、転職を決意したそう。そこで10年務める中で、総務や経理、人事にも関わるようになり、会社の運営を覚えたといいます。
「独立するなら応援するよ」。周囲のお客さんからそう声をかけられアンデックスを立ち上げたのが2008年、41歳でした。会社は2017年で9期目に入りましたが、ここまで決して順調ではありませんでした。会社を立ち上げてすぐにリーマンショックが起き、応援してくれていた企業も業務縮小で苦しくなりました。そして、これからと思った矢先に東日本大震災が発生。「会社、つぶれるかなと思った」けれど、全国からの応援をしっかり受けて会社を立て直し雇用を維持していこうと思い直したといいます。助けてもらった分の恩返しで考えたのが「水産」と「ICT」を組み合わせた事業です。
いぐテラ-アンデックス3

自分でできることは限られるから考える

「IT会社の社長だけど、自分ではプログラムをつくれない」と笑顔の三嶋さん。「人ってできることは決まってくるから、だからどうやってやればいいのかを考える。自分はなにができるのか、どうしたらできるのか、できないのであれば、誰と手を組めばいいのか」。水温センサ付ブイも、大学の研究室や通信会社と組んでいます。なにかを成功させるのであれば、一人じゃ無理。だから、成功するためになにが必要?どうすればいい?誰と組む?人、モノ、金など色々な視点で三嶋さんは考えます。
いぐするテラスに参加した学生は三嶋さんの話を聞いて「自分がやれる得意分野を発見し、それを強みにしていく『何が足りないのか』『自分の何が使えるのか』を考える力も経営の核」と感じたそう。別の参加者も、「自分にできることは限られる。目的の達成のために足りないところはできる人を連れてくる。自分にできること、できないことを認識してできることをやりぬく」と聞いて、自分にできることをやればいいと焦りがなくなったと言います。
「一次産業へのかかわり方について、自分にできるかかわり方をすればいいんだと思えました」。自分たちの疑問だけでなく個人的な悩みに対しても経験を交えながらアドバイスしてくれる気さくな三嶋さんに、参加者は親しみをもって次々に話しかけていきました。

取材協力:アンデックス株式会社 
文章・写真:安部静香(いぐする仙台)

次回のいぐするテラスは2月23日

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この記事を書いた人

シズカ
シズカ
「そんなに寒くないよ」と言われる仙台の冬が苦手な冬生まれ。
おいしいもの大好き。美味しいお店から発せられるオーラ(?)を感知するのが得意。
活字中毒気味。働いてなければ間違いなく冬ごもりします。