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役職が人をつくる「株式会社パンセ」佐々木聖彦さん

シズカ シズカ
602 views 2016.03.29

2月23日のゲストはパンを製造、販売する株式会社パンセの佐々木聖彦(ささき・まさひこ)さんです。参加者は大学生と社会人の4人。「将来像を描くヒントを探している」、「働くってどういうことなんだろう?」「ビジョンはあるけれど、実感ができない」と話す参加者たち。「パンセのパンが好きで来ました。ついこの間もお店に行ったばかりなんです!」という人もいました。

役職が人をつくる

佐々木さんは入社5年目の27歳。入社後、南中山本店、本社がある福室本店で勤務した後、石巻本店で製造チーフになり、現在は富谷本店で製造チーフを担当しています。「パンセは社員にどんどん役職を与えていくんです」。入社して5年なので、まだよくわからないけれどと、続けます。「社長は『役職がその人をつくる』と考えているそうです。社員にポストを与え、経験をつませて、成長させてくれるんです」。
現在、パンセの店舗は宮城県内に10店あります。各店舗には「店長」、「製造チーフ」、「販売チーフ」が一人ずつ。店作りは店長の裁量に任されています。同じ「パンセ」という看板を掲げ、各店舗間で情報は共有されるものの、商品開発や、どんな商品を並べるのか、棚のレイアウトもお店ごとに違うのです。製造チーフの佐々木さんの主な仕事は富谷本店で製造しているパンの全ての工程がきちんとできているのかを見たり、スタッフのシフトを組んだりすることです。「ちゃんとしたものが商品として出ているのか、責任をいただいてやっています」。

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パン屋の仕事

パンセではパンの製造工程を分業しています。生地をこねて発酵させる「仕込み」、パン一つの分量に生地を分ける「分割」、パンの形にする「成型」、オーブンで数分~1時間程度焼いた後、色を整える「焼成」。他にも「サンドイッチ」、機械で生地を伸ばしバターを折りこんで作るデニッシュなどの「折りこみ系」、焼きあがったパンの飾りつけなどの「仕上げ」があります。販売の方は「品だし」と「レジ」に分かれます。社員はそれぞれのポジションを経験し、ローテーションしていくことで仕事を覚えていくのです。
パン屋の仕事に対しドラマで見るようなきれいなイメージを抱いていた佐々木さんは入社した後、パンを釜で焼く「焼成」に配置されました。「イメージしていたよりも過酷な場所でした。製造部門は朝5時に出勤。釜の側は高温で湿度も高い。夏は40度以上になるし、油で汚れるし」。90キロあった体重は70キロに落ちました。辞めたいと思ったことは何度もあるけれど、続けることが大切だと思っています。「まだ27歳だし、もうちょっとやっていると違う世界が見えてくるかもと続けています。社長にも恩返しができていないですしね」。

続けることで見えてきたもの

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佐々木さんが入社したのは2011年。東日本大震災が起きた年です。「就職活動をしていた頃は超氷河期と言われていた年でした。でも、真剣に動きだしたのはかなり遅くて4年生の冬から。『このままじゃダメだな』と思って」。中小企業の合同説明会に行ってパンセに出会い、面接を受けたのは2011年3月10日でした。「その後、連絡もないのでもう絶対にダメだと思っていました。また翌年がんばろうかなと」。無事に就職が決まり、社長に対して「就職活動の大変さも経験した中で拾っていただいたという気持ちがあります。恩返ししたいですね」。
大学で学んでいたこととは分野が違う仕事。パンのことも知らないままに入社しましたが、会社にはサポートしてくれる人も、勉強会もあります。「いくら製造チーフになっても、後から入ってくる人の方が詳しいこともあります。勉強になるので素直に聞いて、吸収していきたいと思っています」。製造チーフになれたことで経験者でなくてもやっていけるという自信もつきました。

「続けた方が偉いとかではなく、目標があったらそっちに進めばいい。やりたいことがあったらやるべきだと思います」。一緒に入社した新卒の同期は4人。今もパンセで働いているのは佐々木さんだけです。入社した時は漠然と3年は続けるとしか考えていなかったけれど「今の状況の中でやりたいことがあるというのが違いです。続ける中で目標を見つけました」。
宮城県大崎市出身の佐々木さんは今も大崎の実家から通っています。「家は米の兼業農家です。だから就職も食品関係で探していました」。美味しいおいしいといってもらえる姿を小さい頃から見ていたからこそ、食に携わりたい。米農家だけど、パン屋になっちゃったと笑います。「パンセで働いていて、つながる部分もあります。米粉パンは、米粉を使うことで米の消費を増やせます」。
いずれは大崎にもパンセに出店してもらいたい。地元の大崎で地産地消のお店を出したい。佐々木さんは社長にも話しました。「今のところ出店の要件を満たさないので厳しいと言われました。でも、どう状況が変わってくるか、いつチャンスがくるか分かりません。自分を磨いて準備していたいです」。

参加者の声

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苦しくても続けてきた佐々木さんの話を聞いて「人生の選択肢が広がった」と満足そうな参加者たち。パンセは好きだったけれど、これまでお店で働いている人のイメージがなかったと話します。パン屋での仕事だけでなく、社会人の考え方を知ることができたという人も。サークルが忙しく、なかなか自分の時間がとれなくてマイナス思考になっていたという人は、「まずは続けてみようかな」と話してくれました。「継続が大事だと知りました。続けていくことで見つかる何かがあるかも。見つかるまでがんばってみます!」。
最後はみんな、お店ごとに違う商品を見てみたい!食べてみたい!「パンセめぐりしたい!」とわいわい話していました。

画像提供:株式会社パンセ 
文章:安部静香(いぐする仙台)
写真:澤畑学(いぐする仙台)

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この記事を書いた人

シズカ
シズカ
「そんなに寒くないよ」と言われる仙台の冬が苦手な冬生まれ。
おいしいもの大好き。美味しいお店から発せられるオーラ(?)を感知するのが得意。
活字中毒気味。働いてなければ間違いなく冬ごもりします。