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東北のお米を全国へ!お客さんの声を大切に、時代の変化に対応「タカラ米穀」

及川 愛結 及川 愛結
1,779 views 2016.01.19
及川 愛結 及川 愛結 宮城学院女子大学(執筆当時)
朝食はお米派ですか?パン派ですか?私は断然お米派です!朝に限らず、3食とも口にするくらい大好きです。私たち日本人の食生活には欠かせないお米。主食としてだけでなく、せんべい、みそ、日本酒、焼酎などと姿を変えて楽しませてくれます。「米どころ」である宮城県のお米を全国に向けて発信する地元企業を取材しに、仙台市の北隣・富谷町へ行ってきました。

タカラ米穀って、こんな会社

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タカラ米穀はお米を生産する農家と、口にする私たち消費者をつなぐ役割を果たしている会社です。登米市や加美町の農協や各地の集荷業者・卸会社から玄米を仕入れ、精米と、レーザーを使って異物を取り除く作業を行います。精米が終わって包装されたお米は倉庫で管理し、宮城県内を中心に全国のスーパーやドラックストア、飲食店、大学の学生食堂や企業の社員食堂へ販売します。本社倉庫近くにあるホームセンターが仕入れているお米もタカラ米穀の商品だそうです。

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社内に入ると、お米が入ったショーケースが出迎えてくれます。一般的な白米以外にも、タカラ米穀が製造して販売している無洗米や特別栽培米、お餅などが飾られています。専門性を活かし、ニーズに応じた多彩な製品を生み出しているのです。

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今回の取材には会長の中川浩志さんと、管理部課長の深澤司さんが応じてくださいました。

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▲取材に応じてくださった中川会長(右)と深澤課長(左)

仙台の企業魅力

東北各地の品種を宮城県から発信!

体育館を思わせるような大きさの本社倉庫の中には、天井近くまでお米が積まれています。取り扱う品種はひとめぼれ、ササニシキ、あきたこまちなど10種類以上にのぼります。

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▲本社倉庫の中。たくさんの米袋が積まれています。

精米したお米は販売先によって異なる袋に梱包されます。食堂や飲食店で使うお米は無地の袋、スーパーやドラックストアで直接消費者に販売されるものはイラストやロゴマークが印刷された包装袋に詰められます。多数の品種を扱っていても、配送先は一目瞭然です。

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▲食堂や飲食店に配送する無地の袋に入ったお米

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▲スーパーやドラックストアに配送するお米

袋には必ず産地・品種・生産年が表記されます。品種については「ひとめぼれ」などの単一米は銘柄名を表記し、国内の数種類の品種を混ぜ合わせたブレンド米は産地を特定できないため「国内産」と表記されているそうです。お米を買うときはぜひチェックしてみてください!

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農家から仕入れたお米の袋には品質が表示されています。水分量や成熟度、粒の大きさをもとに一等米、二等米、三等米に分類されているそうです。水分量が多く、しっかり成熟していて、大きな粒がそろっているお米が一等米となります。

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▲「●」が2つ縦に並んだマークは二等米

緑色のシールがついたものは特別栽培米で、一般的な栽培をしたお米と比べて農薬や化学肥料の使用を半分以下に減らしています。手間がかかり生産量も少ないため、高価なんだそうです。

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▲緑色のシールが特別栽培米の証

タカラ米穀では精米したお米だけでなく、電子レンジで温めるとすぐに食べられるパックご飯、白米と一緒に炊くおし麦なども扱っています。「たくさんの商品が扱えるのは、全国の同業他社や食品会社とのつながりがあるから。他の米屋では真似できないよ」と中川会長は誇らしげに語ってくださいました。
幅広いネットワークと長年培った専門性を活かして多彩な商品を取り扱い、東北のお米を全国へと届けている会社が、タカラ米穀なのです。

お客さんの声を直接聞き、良い商品作り・会社作りへ

タカラ米穀の業務の99%は企業へ向けたお米の販売ですが、一般家庭向けの販売も行っています。「お米を食べるお客さんの声を直接聞いて、ニーズに合ったお米を提供したい」という思いからです。
その一つとして、毎月最終日曜日の朝7 時30 分から12 時の間、本社倉庫の入口で「生活応援セール」を開催し、地域のみなさんにお米を安く販売しています。始めた頃の2 年間は周りに家も少なく赤字だったそうですが、中川会長は「赤字だからとすぐにやめてしまったら成長しない」と言い、周囲の農家と連携して野菜や果物も売り始めます。宮城の新米の時期から3 か月くらい早い7 月に九州の新米を買えるようにするなど、工夫を凝らしながら続けたことで、回数を重ねるにつれてお客さんが増え、なんと15 年も続いているそうです。

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▲「生活応援セール」のチラシ

また、3 年前からはネットショッピングでの販売も行っています。インターネット通販が盛んになり、これを利用して全国各地のお客さんに東北のお米を届けるため、また「お米を買っても重たくて持って帰るのが大変」というお客さんの声に対応するために始めました。お米の品種や品質にこだわる人向けの「伊達の蔵出し本舗」と、安価で購入できる「スターライス」と2つのサイトを運営しています。

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▲お米の味にこだわる人向けの「伊達の蔵出し本舗」

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▲安価で購入できる「スターライス」

ネット販売は県内だけでなく全国のお客さんに対応する大変さはありますが、宮城県を始め東北のお米のおいしさを広く知ってもらうために続けているそうです。「直接お客さんに向けて販売を始めたことで、お客さんの好みに合った商品を提案しやすくなりました。『ありがとう』『おいしかったよ』などと、言葉をかけられることが励みになります」と深澤課長は言います。古くからの得意分野である卸売の範囲を越えた消費者への直接販売という事業にあえて乗り出したことで、お米を食べる人の嬉しい声・残念な声に直接耳を傾けることができるようになりました。さらにそこから「良い点は伸ばそう、反省点は改めよう」と社内全体で考えることによって、より良い商品を提供できるようになるとともに、お客さんのことをしっかりと考える会社作りにつながっているそうです。

社会問題に目を向けて、環境を気遣う取り組み

1980 年代の高度経済成長期。琵琶湖で、富栄養化による水質汚濁である「赤潮」が目立ち、公害問題となりました。赤潮はフナやドジョウが大量死するなど、周辺環境に甚大な影響を与えます。たくさんの原因が挙げられましたが、沈殿してガス化したお米のとぎ汁も一因だと考えられました。赤潮対策のために滋賀県は、工場や農業で出た排水を川へ流すことを禁止する「琵琶湖条例」を制定し、京セラやパナソニックといった大手企業が工業排水への対策を始めました。こ
の頃、大阪に出張へ赴き、企業の取り組みを目の当たりにした中川会長は「大手企業が環境への
取り組みを行っている。タカラ米穀としても、何か取り組みを始めなければならない」と考えました。その結果、とぎ洗いせずにお米を炊くことができる無洗米を扱い始め、売るようになりました。当時、無洗米はまだあまり知られていなかったため、「お米を洗わずに炊いて、きちんと汚れは取れているのか」と抵抗を持つ人も多かったそうです。無洗米は汚れが綺麗に取り除かれた状態まで精米していること、洗わないため栄養分が損なわれにくい利点があることを伝え続け、だんだんと無洗米を選ぶ人が増えていきました。

東北で無洗米を製造販売したのは、タカラ米穀が一番早かったそうです。普通のお米と比べると1 ㎏あたり15 円高いですが、消費者に支持され、現在では全国で約45%のシェアだといいます。先駆的な取り組みが時間をかけて評価された結果です。
2013 年5 月には、本社倉庫に太陽光パネルを設置しました。無洗米に続き、環境に配慮した取り組みです。社会や環境の問題に対応していこうとする姿勢は、企業理念の中にも「人と地球にやさしい」という言葉で表されています。自社のことに集中していると、広い視野で社会の状況をとらえて働くことは難しいと思います。しかし、そんな難しさの中でも理念をしっかりと形として現わしているのがタカラ米穀の大きな魅力であり、強みだと感じました。

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▲応接室には常に見やすい場所に企業理念が掲げられています

時代の変化を前向きにとらえて進化する

昨今は24時間営業のコンビニなどが増え、食生活が多様化していることや、ご飯よりも片手で食べられるパンを選ぶ人が増えたことにより、お米の需要が減ってきています。「現代は精米したお米を買って自宅で炊くというより、すでに炊いてあって温めれば食べられるパック詰めのご飯を買う人が多い時代へと変化している」と中川会長。精米したお米を多く取り扱っていますが、人々の生活習慣の変化に合わせて扱う商品を変化させていく柔軟性を持っています。また、小麦アレルギーの子どもが増えていて、米粉パンの要望もあるそうです。「思いがけない要望だけど、小麦アレルギーの子どもが増えた現代の問題にうちの力で対応できるなら取り組んでいきたい」と変化を前向きに捉えています。

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また、「グループ会社全体で六次産業化をしていこうかな」と深澤課長。六次産業とは、生産・加工・流通の一次・二次・三次産業をすべて担う新しい経営形態です。お米の生産から販売までを一貫して行うことで、他社を通す際に発生するお金がかからなくなります。「インターネットが発達してから、すでに六次産業化を行っている農家もいる。グループの炊飯会社『ボン・リー宮城株式会社』と一緒に行えば、会長の言うパック詰めのご飯をもっと提供できる」。深澤課長の頭の中にはいろいろなアイディアが浮かんでいるようでした。
時代がどのように変化しているかに注意を払い、常に先を見て新たな挑戦を続ける。お2人のお話から、そんなタカラ米穀の企業姿勢が伝わってきました。

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今回お話をお聞きして、次にどんな時代の変化が起こるのかを広い視野で見ているタカラ米穀の姿勢が分かりました。先を予測するのは簡単なことではないけれど、予測したからこそ時代の変化に柔軟に対応できるのだと思います。
農家の孫として生まれた私はスーパーでお米を買った経験がほとんどなく、どのように流通しているのかもあまり考えたことがありませんでした。今回どのように消費者の元へ届くのか一連の流れが分かり、新たな学びを得ることができました。倉庫の中にあった30㎏の茶色いお米が入った袋はよく目にするものですが、ランクが表記されていることは知りませんでした。私が食べているお米には一等米のマークがありました。
消費者の元へ届くまで多くの過程を経ることが分かり、ご飯を食べるときに「お米にはたくさんの人の思いが詰まっているんだ」と考えるようになりました。時代の変化に対応しながら私たちの食卓にお米を届け続けてくれるタカラ米穀のような企業で働くみなさんにも感謝して、これからも美味しくお米をいただきたいと思います。

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及川 愛結及川 愛結宮城学院女子大学(執筆当時)
■文章・写真担当者
文章:及川愛結 宮城学院大学 3年
写真:千葉真理子 山形大学 3年
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タカラ米穀株式会社
http://takara-rice.jp/

この記事を書いた人

及川 愛結
及川 愛結
同じ名前の人に未だ出会ったことがない「あゆ」です。某水族館に行くとオイカワとアユが一緒の水槽で泳いでいます(笑)でも水槽ではなく、本屋さんかIKEAに住みたいです。しゃべるとギャップがあるらしいので、ぜひ引き出しを開けてみてください!