学生記者がお仕事の魅力を発見!仙台イケてる会社訪問
イケ社

お客様のため、宮城のため。信頼関係を大切に、新たなチャレンジを!佐々木印刷所

菅野 智佐 菅野 智佐
986 views 2015.10.02
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菅野 智佐 菅野 智佐 山形大学
仙台駅前で買い物をしていた時、偶然開催されていた仙台みやげ展で発見したカラフルな「マッチ箱」。
「か、かわいいっ!!」
思わず駆け寄り、中箱を引き出すと、手書きの文字とイラストがぎっしりのミニ観光ガイドブックと、こけし型の付箋や松島のイラストのクリップが入ってる!中身を見て、箱のデザインを見て、また中身を見て…どれを買おうかしばらく悩んでいると、私の周りにも同年代から年配まで多くの人が集まっていて、「かわいい!迷うー!」と、目をキラキラさせていました。
小さな箱にはたくさんの思いが詰まっていそう。作っているのは印刷所!?気になる…ということで、佐々木印刷所へいざ潜入!

佐々木印刷所ってこんな会社

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仙台駅から東に数キロ、トラックが行き交い活気づく工業団地の中にある株式会社 佐々木印刷所。
主に宮城県内の官公庁や学校、テレビ局などから依頼される一般印刷、商業印刷、チラシやポスター、伝票の製作を行う老舗の印刷所です。
部署は、営業、製作、印刷、製本の4つ。営業がお客さまと商談を行い、そこで出された要望をもとに製作室でデザインを作り、アルミで出来た刷版という板にデザインを焼いたものを印刷機にかけ、製本し、商品が完成します。

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↑こちらは製作室、お客様の要望に応えるため皆さん真剣な表情

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↑このような大きな印刷機が何台も!

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↑刷版を作成中。刷版とは印刷機に取り付けるアルミ板のことで、凸になった部分にインクが付くことにより印刷されます

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↑製本作業。いよいよ商品ができあがります!

佐々木印刷所では、印刷業の枠にとらわれない様々な取り組みも行われており、私が偶然見つけた「マッチ箱マガジン」もその一つ。マッチ箱や中身のガイドブックの印刷もここで行われています。

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印刷には機械を使用しますが、組み立ては手作業。ガイドブックと一緒に中箱に入れるファイバー紙製のクリップも、レーザーカットをした後、人の手で形をきれいに整えます。
細かい手作業での組み立て工程にびっくり。使うのがもったいないくらいです! 

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また、佐々木印刷所は宮城県の環境配慮実践事業者にも認定されており、節電のため建物内の電気は全てLED。印刷に再生紙を使用しているのはもちろん、「ベジタブルオイルインク」という再生可能な植物由来の油をリサイクルして作られたインクを用いているとのことでした。環境に優しい印刷を届けるため、見える部分だけでなく、陰でも努力もしているんですね。 

仙台の企業魅力

87年続く理由は、お客様との信頼関係

佐々木印刷所の創立は昭和3年。以来、「より良い印刷を迅速に」という理念を3代にわたって受け継いできました。
「取引先は、主にお客様からの紹介で広がってきました」と現社長の佐々木英明さん(46)。
「期待して仕事を頼まれているのだから、きっちり仕事をし、信頼で返す。この姿勢が紹介に繋がっていると思います」。
佐々木印刷所では、印刷物を作るにあたって提案やデザインの工程から行っています。
例えば、使用する紙の種類によって、質感など仕上がりの雰囲気が全く異なります。
お客様のこだわりを聞いて、予算とイメージに合う紙や印刷方法、デザインを提案し、納得がいくまで一緒に作り上げるのが佐々木印刷所のスタイル。
「工場にある機械は他の会社と同じようなものかもしれないですが、お客様にとことん向き合うことで、いいものを提供できる自信がありますね」。

信頼関係を築くことが出来るのは、印刷に対する妥協のない熱い思いがあるからだと感じました。「お客様のために」という姿勢は、一見当たり前のようで、難しく、一番大切なことなんですね。

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宮城のために。その思いが生み出す新たなチャレンジ

2011年の東日本大震災では佐々木印刷所も大きな被害を受けました。当時はこのまま印刷業務を続けていいのか悩み、辞めてしまいたくなったこともあったと言う佐々木さん。

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↑震災直後の佐々木印刷所

そんな時、鹿児島県の奄美大島から「頑張って下さい!」という寄せ書きが届きました。以前、集中豪雨で文房具が流されてしまい、一万冊のノートを寄贈した奄美大島の子どもたちからでした。
「本当に嬉しかったなあ。励まされました」と佐々木さん。
「その時に、ただ待っているのではなく、仕事は自分たちで作り出していこうと決心しました」。

そして震災から約1年が経った頃、旅行雑誌や旅行特集に、それまではたくさん掲載されていた宮城県の紅葉や温泉地の情報が少なくなったと感じた、と言う佐々木さん。
「せっかく素敵なところがたくさんあるのに、風評被害で来てもらえない。なんとかしなければと思った」。

そこで、仙台市の「クリエイティブ・プロジェクト助成事業」に応募し、採択され、地元のイラストレーター達とタッグを組んで「マッチ箱マガジンプロジェクト」が始まりました。
この事業は、震災復興に向けた創造性豊かなプロジェクトを育成し、クリエイティブ産業と他産業との連携によって新たな事業の創造を目指すというもの。採択後、審査員だったイラストレーターの方にイラストを担当してもらった他、数人のイラストレーターを紹介してもらい、仙台で活躍するクリエイターと佐々木印刷所の技術とのコラボレーションが実現しました。

「マッチ箱マガジン」は現在第一弾〜第三弾まで発売されており、冒頭でも紹介したように、小さく折り畳まれた観光ガイドブックと、こけしの付箋やクリップなどの文房具が入っています。

「マッチ箱」というアイデアは、元々マッチ箱の収集が趣味だった佐々木さんならではのもの。
掲載先は、イラストレーターが実際に現地を歩いて、地元ならではの目線を大切に普通のガイドブックには載らないような場所も選定。あえて写真は使わず、イラストや手書きの文字にその土地の温かみや制作者の思いを込めました。

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↑国連防災世界会議の開催の際は、英語版のガイドブックも作成!

佐々木印刷所では「マッチ箱マガジン」の他にも震災復興に貢献する商品を作っており、「こけし付箋紙」は売上げの一部を被災したペット達の餌やシートの寄付に充てました。こけしの顔は地域によって全く違うため、博物館に通うなどして勉強を重ね、地元工人のもとでデザインを何度も確かめたそうです。

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↑こけしの顔の違い、分かりますか??佐々木さん、今では完璧に見分けられるそう。

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↑被災した動物たちへの救護活動に対し、仙台市から感謝状を贈られました。

本業に留まらない多彩な取り組みを聞いて、私は、どうしてここまで宮城のことを思って様々なチャレンジが出来るのか、疑問に思いました。佐々木社長に尋ねてみると、「地元の人たちからお仕事をもらっているのだから、地元に還元したいんだ」と、嬉しそうに答えてくださいました。

私は、ハッとしました。心の底から宮城が好きで、商品作りを楽しんでいるからこそ出来るのだと。
そんな思いが詰まっている商品だからこそ、たくさんの人が手に取り、心を動かされているんですね。

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社長の行動力を支える社員との絆

現在、佐々木印刷所の社員は32人、平均年齢は40代で、定年を過ぎて再雇用された方もいます。
工場長の髙橋雄一さん(60)は元々は製版会社で働いており、当時は佐々木印刷所が取引先。15年前に転職し、現在は事務全般と進行管理をしています。
「職場環境は非常にいいね。活気があって働きやすい」と髙橋さん。

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社長である佐々木さんについてお聞きすると、
「普通の『社長』ってイメージとは全く違う人だね」。
髙橋さんからみた佐々木社長は、自ら営業として飛び回り、色んな人に接して、どんどん新しいものを生み出している人。「これからも、今作っている商品で知名度を上げていけるように一緒に頑張っていきたいです」と話してくださいました。

「これまで、水害や地震を経験しましたが、立ち上がる時には社員達が頑張ってくれた。隣の席にいてもパソコンでやり取りするような時代だけど、社員と直接コミュニケーションを取ることを大切にしています。」と佐々木さん。
社員のみなさんへの感謝の気持ちとともに、「社長として働くことは社員の家族の生活も背負っているという責任を持つことだ」と、力を込めて話します。お互いの信頼関係があるからこそ、新しいことにチャレンジできる。社長と社員のつながりの強さが佐々木印刷所を支えてきたのだと思いました。

様々な取り組みで会社を牽引してきた佐々木さんが、いぐする読者に向けてメッセージをくださいました。
「テレビや雑誌を見て面白そうだなと思ったことはすぐやってみる。やらずに終わるなんてもったいないから。経験することは楽しいことだから、若い人にはたくさんの経験をしてほしいと思う。アルバイトをしている人なんかは、いろんなことを学ぶといい。僕も、今でもアルバイトで得た知識や技術がアイデアとして生かされることがあるからね」。

現在は、以前から作りたいと考えていた手ぬぐいの製作にも挑戦しているそう。仙台の武田染工場にお願いし、注染という、裏表無く染め上げる伝統的な技法を用いています。
また、新商品として、呉服屋の息子さんが新たにデザインした「石巻こけし」を広めるべく、こけしの形をしたファイバー紙のクリップを作成し、発売しました。
どちらもやはり、伝統の技法を伝えていきたい、観光地をもっと盛り上げたいという「宮城のために」といった思いが詰まっています。
佐々木印刷所が生み出す商品はこれからも、宮城の魅力と私たちとを結んでくれることでしょう。

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↑「石巻こけし」のクリップ

佐々木印刷所は「印刷業」という枠にとらわれない、様々な取り組みがされている会社だなあと思いながら取材を進めていくと、見えてきたのは、お客様からの信頼で成り立つ本来の「印刷業」をとても大切にしているということ。
安くて便利なネット印刷などが増えていく中で、お客様に誠意を持ってじっくり向き合い、「信頼」してもらえる仕事を続けてきたからこそ、佐々木印刷所には87年という歴史や築きあげられた人間関係があり、その上で新しいことに挑戦出来ているのだと思いました。
地元の人たちのために仕事をしたいと思い、実行できるのは、素敵なことですね。
取材を終え、佐々木印刷所が愛する宮城をもっと知りたくなってきました。マッチ箱マガジンを片手にまずは、温泉地を巡ってみようかな。

菅野 智佐菅野 智佐山形大学
文章:菅野智佐 山形大学2年
写真:進藤陽介 東北大学2年
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株式会社 佐々木印刷所
http://www.sasaki-prin...

この記事を書いた人

菅野 智佐
菅野 智佐
山形大学
生粋の田舎娘、‘すげのちさ’ と読みます。仙台は都会ですね。よく迷子になります(いつもか)。グーグルマップが手放せません。でも地図を読むのが苦手なので使いこなせない…。笑 こんな私ですが、読者の皆さんを取材現場に連れて行くことが出来るような記事を書いていきたいです!