学生記者がお仕事の魅力を発見!仙台イケてる会社訪問
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革新的な店舗経営で“憧れの東北”を創る!地域に根差し世界へ羽ばたく「ハミングバード・インターナショナル」

鈴木里緒 鈴木里緒
2,909 views 2015.07.03
鈴木里緒 鈴木里緒 山形大学3年(執筆当時)
もちっとした食感でコシのある生パスタにアツアツの濃厚ミートソース。取材後お腹を空かせていた私は「ハミングバード」のパスタを食べ、衝撃を受けました。
「こんなにおいしいパスタがあるのだろうか」。
元々、通りすがるたびに気になっていた、石畳と木でできたあたたかい雰囲気のお店。仙台で初めてのパスタ専門店としてオープンしたのがこの「ハミングバード本町店」なのだそうです。

他にも、焼き鳥店やバーなどを経営していますが、どのお店も、どこかおしゃれで洗練されています。これは、面白そうな会社だ!
「株式会社ハミングバード・インターナショナル」で食レポ・・・じゃなくて取材してきました!

ハミングバード・インターナショナルってこんな会社

地下鉄南北線広瀬通駅から徒歩3分。多くの人や車が行き交う大通りから、おしゃれなレストランが立ち並ぶ青葉区本町の裏路地に入ると「ハミングバード本町店」があります。

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1階部分が店舗になっていて、上の階に厨房や会社の事務所があります。

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本町店はハミングバードの1号店。2015年に36周年を迎えました。

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カウンター、テーブル合わせて36席のこぢんまりとしたイタリアンレストランです。内装はシックな赤とあたたかな木目調で施されており、まるで隠れ家のよう。店内ではおしゃれな音楽が流れてきます。ピーク時になると食事を楽しむ人たちの笑い声がこだまし、落ち着いた中にも楽しげな雰囲気が伝わってきました。

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ハミングバードの始まりは1957年。現社長の青木聡志さん(40)の祖父にあたる人が仙台駅前に「キッチンエリーゼ」という小さな洋食店を開店しました。その後、1975年には法人化し、1980年に仙台で初めてのパスタ専門店「ハミングバード」をオープンしました。この時の社長は青木さんのお父さん。青木さんは1998年に入社し、一般社員、店長、営業部長、専務、常務を経て、2014年に代表取締役社長に就任しました。

「ハミングバード」は英語でハチドリという小鳥を意味しています。ハチドリは、小さいながらもコツコツと幸せを運んでくれる象徴として知られています。また「ハミング」には鼻歌という意味もかけあわされています。「『食を通じてお客さんにささやかな幸せを運んであげられるような会社でありたい』という思いを込めて、ハミングバードという名前にしました」と青木さんは教えてくれました。

仙台の企業魅力

これまでにない飲食店の形を追い求めて

ハミングバードのポリシーは常に「革新的な何かを打ち出すこと」。前例のないことに対して果敢に挑戦していきたいという精神で経営を行っています。

「ハミングバード」が開店した当初の仙台では、あらかじめ茹でた麺に出来合いのソースをかけるナポリタンやミートソーススパゲティが主流でした。注文を受けてから麺を茹で、バラエティーに富んだ味付けをするという今では当たり前のスタイルは当時の常識を覆すもので、はじめはなかなか受け入れてもらえずに苦しい思いをしたそうです。
それでも、テレビCMのロケ地に本町店が起用されたり、新聞や口コミで紹介されるなどするうちに徐々に知名度が上がりました。

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開店当初のハミングバード本町店
(写真提供:株式会社ハミングバード・インターナショナル)

時代や状況に応じて変化し続けることも忘れません。
ハミングバードの特徴はもちもちとした生麺ですが、開店当時は乾麺を使用していました。乾麺は約15分のゆで時間が必要なため料理の提供に時間がかかり、お客さんを待たせてしまう。早く提供できて美味しく味わえる麺はないものかと当時の社長が頭を悩ませていた時、東京で生パスタが流行り始めたというのを聞きつけました。早速食べてみたところ、その味と食感に「ウチでも出したい」と感銘を受けたそうです。試食と研究を重ね、1994年頃からモチモチした食感を味わえる生パスタを使うようになりました。当初は製麺業者から仕入れていたそうですが、現在は100%自社工場で製造されています。

パスタ店にとどまらず、多角的な経営をしていることも大きな特徴です。県内に5店舗あるハミングバードの運営の他、焼き鳥店「炙屋十兵衛」、南欧バル「INATÕRA(イナトーラ)」、炉地BAR「八兵衛」、千葉に店舗を構える「たんや十兵衛」といった様々なジャンルの飲食店を経営しています。これらの店舗に共通するのはやはり「先進性」。例えば「炙屋十兵衛」では、女性も入りやすいシックな雰囲気にして焼き鳥店の大衆的なイメージを覆したり、「INATÕRA」では、仙台に初めてバル文化を取り入れました。

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(写真提供:株式会社ハミングバード・インターナショナル)

「憧れを持たれる土地にしたい」宮城に根付く会社としての取り組み

ハミングバードの経営する店舗で提供する料理には、地元宮城の食材が多く使われています。

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(写真提供:株式会社ハミングバード・インターナショナル)

これは蔵王産モッツァレラチーズとバジルのポモドーロ。バジルは宮城県内にある契約農家で作られています。

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(写真提供:株式会社ハミングバード・インターナショナル)

こちらは塩竈産藻塩を使った塩ミートソースです。ハミングバードの定番生パスタとして人気を博しているメニューです。

また、メインディッシュのローストステーキには、宮城県北部登米地方で生産された梵天豚という種類の豚肉を使用しています。にんにくとバターの香ばしい風味が食欲を誘います。
野菜は「ハミングファーム」という県内の契約農家から仕入れていますし、魚介類も三陸産のものを多く使用しています。

こうした取り組みは、「カッコいい東北をつくりたい」という青木社長の思いから来ています。きっかけは社長に就任する前、農業に関する講演会に行ったことでした。その時に知った、現在、農業人口の7割が65歳以上の高齢者であるという事実に衝撃を受けたのだそうです。

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「食材を生産してくれる農家の方がいるからこそ、自分たちは今、飲食店を経営できているんだ。農業の灯を絶やしてはいけない」。青木さんは、自分の生まれ育った東北の地にもっと貢献したいという思いを持ちました。

2012年から2シーズンにわたり、従業員総出で「コメ作り」を行ったのも、その一環です。
宮城県内の田んぼに出向き、田植えや稲刈りを手伝いました。「普段お世話になっている農家さんへの恩返しをするとともに、自分たちが使う食材がどんな過程でどんな思いで作られているか知ることができる。従業員にとっても得るものが多いんです」と青木さん。食材についての知識が増えたり、生産の裏話をお客さんに話すことが出来るようになるなど、接客トークも豊富になったと言います。

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(写真提供:株式会社ハミングバード・インターナショナル)

「東北は人材や物の供給地で、首都圏をはじめとした経済の要所を支える『縁の下の力持ち』ながらも、なかなか表に出てこない。東北はダサいよね、というイメージを払拭したい」と青木さんは考えています。そのために「食という切り口で東北の良さを発信し、憧れを持たれるような土地にしていきたい」と話してくださいました。

「生活」のためだけではなく「学び」となる仕事を

ハミングバード・インターナショナルでは「ステップアップ制度」という教育システムを採用しており、スタッフは仕事の習得度に応じて、段階的に昇進していきます。ほとんどの人が初めはアルバイトとして入社し、すぐにホールスタッフやキッチンスタッフとして各店舗に配属され、接客や調理技術といった飲食業の基礎を学びます。店舗によって異なりますが、アルバイトにもランクがあり、最高ランクのアルバイトは社員とほぼ同等の権限を持つそうです。
副店長、副料理長、店長、料理長は社員が担当し、アルバイトスタッフはもちろん新卒社員もこれらのポジションを目指します。店長・料理長になると、本部スタッフを目指すことができます。
この仕組みだと次のステップに上がるのに必要とされる目標や課題が明確になっているため、達成するための段取りを決めて仕事に励むことができます。また、全員に社員登用のチャンスが与えられているので、可能性を持って働くことができるのだそうです。

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株式会社ハミングバード・インターナショナルWEBサイトより転載(http://www.h-bird.co.jp/)

「飲食業はちょっとした仕草や反応など、お客様が言葉にしないことも読み取って行動することが求められます。そのためには自分で段取りを組むことや臨機応変に対応できる力をつける必要があるんです」と青木さん。
入社1~2年目の新人社員が運動会や料理コンテストといった社内行事の企画・運営を担当するのも、若手社員育成の一環です。
運動会?料理コンテスト?遊んでいるの?
いえいえ、社内行事とはいえ本気です。どんな音楽をかけるか、プログラムの時間配分は適切かなど、青木さんや先輩社員の入念なチェックが入ります。楽しみながら必要な力をつけることができるよう工夫されているんですね。

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運動会の様子
(写真提供:株式会社ハミングバード・インターナショナル)

さらに、日々の仕事に対するフィードバックの場として、「ありがとうカード」という独自の制度を設けています。

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(写真提供:株式会社ハミングバード・インターナショナル)

従業員同士が、それぞれの良かったところをカードに書いて店内にあるポストに投函し、回収されたカードは給料日に、宛名に書かれた従業員の元へ届けられます。
カードをもらうことが励みになるとともに、よりよい仕事をするためにはどうしたらよいのかと、自分を振り返るきっかけとして有効活用されているそうです。
「『ありがとう』とお客様や仲間に喜んでもらうためにはどう自分を表現していけばよいか、悩んで失敗して怒られながらも自分で気づいて成長する。経験を通して、困難を乗り越えていく力がつく。仕事にとどまらず今後の生きる力にもつながります。飲食業はブラック産業と揶揄されることが多いけれど、生活や人と密接に関わることができ、働くことで充実した学びを得られる場です。従業員一人ひとりが可能性を持ち、胸を張って働ける業界に出来るよう自分たちから変えていきたいです」と青木さんは力を込めて語ってくださいました。

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ローカルからグローバルへ。グローバルからローカルへ。

常に最先端の飲食スタイルを発信しているハミングバード。次のステージとして見すえているのは、ズバリ「海外進出」。現在、アジア圏を中心に海外出店の計画を進めています。社名にある「インターナショナル」には海外への志向が表れているのです。

青木さん自身、学生時代にアメリカ留学に行った経験から「外に目を向ける大切さ」を実感したそうです。
「自分で自分の限界を決めつけてしまう傾向が今の従業員にも多いと思います。世界は広いということを海外進出を通して、伝えたい」。海外進出は会社のためであるとともに従業員のためでもあるんですね。

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また、これまで以上に地域に根差した企業になるために現在進めているのが「食のコングロマット構想」。生産の一次産業、加工・流通の二次産業、そして営業・販売の三次産業を融合し「食」に関することを一手に担うことで地域を活性化していく考え方です。自社農園を作ったり流通関連の事業を行ったり、物販店を開店する予定とのことでした。

「これからもお客さんや従業員が楽しい時を過ごせるような場づくりをしていきたいですね」と終始熱いまなざしで語ってくださった青木さんでした。

「仙台を、宮城を、東北をかっこよくしたい」という一心で人々を「あっ」と言わせるような食文化を発信してきたハミングバード。3年以内に70%の店が潰れるといわれている飲食業界で30年以上続けてくることができたのは、新しさを求めながらもお客さんや従業員など関わる人を大切にしているからなのだと思いました。
取材後、店舗でパスタをいただいたとき、笑顔で話しかけてくれる店員さんが印象的でした。義務として話しかけているのではなく、心から幸せなひとときを過ごしてほしいという気持ちが伝わってくるようで、青木さんの経営の精神がしっかりと伝わっていると感じました。特別な日にはハミングバード。今後、たくさんお世話になりそうです。

鈴木里緒鈴木里緒山形大学3年(執筆当時)
文章:名前(○大学○年)
写真:名前(○大学○年)
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株式会社ハミングバード・インターナショナル
http://www.h-bird.co.jp/
住所仙台市青葉区本町2-6-16 青木ビル3F