身近な大人に聞いてみた はたらくってどういうこと?
ワタシゴト

大切なのはお客さんとの距離を縮めること。オーダーメイドスーツの営業

武藤 大紀 武藤 大紀
4,079 views 2015.06.30

佐藤 育さん(32) 株式会社モーダクラトーレ

オーダーメイドスーツやカジュアルファッションの販売を手がける、株式会社モーダクラトーレ。店舗を持たず、製品を受注生産にすることで生産のロスを無くし、コストを削減しています。高品質の製品を低価格で提供することが可能なこのスタイルを支えるのが入社6年目、営業を担当する佐藤育(さとう いく)さんです。

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会社を支える「もみくちゃにされる営業」

「自分で言うのも何ですが、僕はいじられキャラだと思うんです」営業について話を聞いていくと、ぽろりとこんな言葉が口からこぼれました。モーダクラトーレでの「営業」は、オーダーメイドスーツの注文を取ってくることですが、基本はお客さんとのコミュニケーション。佐藤さんは臆することなく地元企業の社長クラスにも売り込み、持ち前の「いじられ力」を発揮して結果を残しています。顔馴染みになると、会った瞬間もみくちゃにされることもあるとか。図らずも導きだした「営業×いじられキャラ」という形が、佐藤さんの大きな武器となっています。

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「でも、全員が全員、そういう雰囲気を望んでいる訳ではないからケースバイケースの対応が求められます」。店舗を持たないモーダクラトーレには、お客さんがふらりと来ることがありません。積極的に顧客を訪問し、売り込むことが売り上げの要となります。経験が育てた確かな観察眼が、佐藤さんの仕事を支えています。

苦悩の日々と浮上のきっかけ

今では頼れる営業マンとして辣腕を振るう佐藤さんですが、入社してから数年は苦悩の日々を送っていました。
大学を卒業して勤めていた人材派遣会社から縁あってモーダクラトーレに入社、営業を任されました。前職でも営業を勤めていたこともあり、売るものが違っても大丈夫だろうと気持ちを楽に構えていた佐藤さん。「甘くなかった」と言う声色から、当時の暗澹とした気持ちが伝わってきました。なんとか会社に貢献しようと旧友や知り合いに連絡を取るも、「売り込む時だけ連絡してきやがって」と思われているのではないか、と精神的に辛い毎日が続いていました。


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そんな佐藤さんに救いの手を差し伸べたのは、人材派遣会社時代から懇意にしてくれていた取引先でした。営業を快く受け入れてくれたのはもちろん、新たな取引先を紹介してくれ、バックアップしてくれたのです。佐藤さん自身も、支えてくれる人にこのまま甘えてはいけないと一念発起。地元企業が親睦を深めるための交流会に飛び込み、次々と取引先を開拓していきました。

当時肝に銘じていたのが『凡事徹底』。「謙虚でいること、素直でいること、分からないことを分からないままにしておかないこと、知ったかぶりをしないこと。まずは自分自身を見つめ直し、人から好かれる人を目指したんです」と、佐藤さんは語ります。「今のように自分の持ち味を生かした営業が出来るようになったのも、『また買わされちまった』と笑いながら常連さんに言われる喜びを味わえるのも、辛い下積み時代があったからこそだと思います」。


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自分の可能性を追求する

 「オーダーメイドの製品を通して、お客さんに笑顔になってほしい」と今後の展望について佐藤さんは言います。モーダクラトーレのオーダーメイドスーツは口コミで徐々に注目を集め、今では仙台のプロサッカーチームやプロ野球の選手も着用しています。
イタリア語でモーダは「流行」を、クラトーレは「世話人」を意味します。
「モーダクラトーレに、俺はなる!とまでは大仰だけど」と照れくさそうに笑う佐藤さん。「人同士の結びつきを大事にして、最先端の流行を提供していきたい。人から必要とされる人になっていきたいです」。流行の世話人は、今日もお客さんの元へ営業に向かいます。


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【シゴト道具】

生地見本

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営業で使うスーツの生地見本。顧客の好みや気分に合わせて生地を選んでもらえるように何種類も持ち歩いています。流行を先取り、佐藤さんからお勧めすることも。

メジャー

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生地見本と同じく営業には必需品のメジャー。使い込んだため目盛りの数字が見えにくくなっているが、「ずっと使っているから手に馴染んでいて、採寸しやすい」と佐藤さん。

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出会いと努力を大切にしよう

努力したことは必ず結果に結びつきます。具現化するまでの辛抱。そして、結果にこだわるなら努力を怠らないこと。凡事を徹底することでどうにかなる。諦めなければ結果がついてきます!
そして人と人との繋がりは一生の宝です。どんな出会いがどう変化していくか分かりません。大事にしてください。大学生なら与えられた時間は自分のために使って、人脈を増やすのがいいと思います。友達はもちろん、遠い親戚だったり、地元の企業だったり。とにかく全ての繋がりを宝物にしてください!

今まで縁が無かった営業という仕事に対して、佐藤さんの下積み時代の話や、やりがいを聞いていくうちに、なんとなくイメージを掴むことができました。営業の世界でもいじられキャラは愛され、そういった自分を知ってもらうのが営業の第一歩なんですね。いじられっ子世にはばかる」と言った感じでしょうか。また今回の取材を通して「人と人との結びつき」が重要だということに改めて気づかされました。私はよく薄情者と言われるので、これからは佐藤さんの言葉を胸に、今ある関係を、そして新しい出会いを大事にしていきたいと思います。
武藤 大紀武藤 大紀東北福祉大学3年(執筆当時)
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