テラス

世界に誇れる南部鉄器を「タヤマスタジオ株式会社」田山貴紘さん

武藤 大紀 武藤 大紀
992 views 2015.12.15

11月27日にHSGビル1Fの共有カフェスペース「ごくり」で行なわれたいぐするテラスは「いぐするテラス×三陸LIVE!~三陸で働くという選択~」ということで、県外からのゲストをお招きしました。
 
今回は、岩手県盛岡市にあるタヤマスタジオ株式会社から、代表取締役社長の田山貴紘さんが足を運んでくれました。鹿児島からインターンシップで訪れた学生も飛び入りで参加し、会場は10名ほどに。大きなテーブルを囲んで、和気あいあいとした雰囲気でいぐするテラスがスタートしました。

宮城県にはこけしが、石川県には漆器が伝統工芸品としてあるように、岩手県にも古くから伝わる「南部鉄器」があります。南部鉄器の製造・販売だけではなく、輸出業務、企画も手がけるタヤマスタジオは2013年設立。そこで活躍する田山さんは「伝統工芸を取り巻く環境を変えていきたい」と、熱い想いを語ってくれました。

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自分にしかできないこととは何か。葛藤を胸に抱えていた東京での会社員時代。故郷の岩手にUターンする決断を後押ししたのは、東日本大震災でした。「地元を支えて、貢献したい」堅い決意が、経営者として、そして南部鉄器職人としての田山さんを生み出しました。

二足のわらじを履いて

田山さんは、南部鉄器職人である父親の元で修行を積みながら、製品としての南部鉄器を一から見直しました。「まず、流通面を見直さなければならなかった」と田山さんは当時を振り返ります。

「職人は『作る』ことが本業で、『売る』ことに関しては専門外というパターンが多い。だからこそ、誰かが潤滑油にならなければいけない」

田山さんは職人と顧客の間を取り持って、円滑な製品の流通をサポートしています。また、南部鉄器の魅力をより多くの人に知ってもらうために、一ヵ月半にも及ぶインターンシップの受け入れを行い、その中でラジオや新聞へのプレスリリースなど、幅広い活動を精力的に続けています。

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▲インターンシップの取り組みについて語る能登谷さん(写真右)

「仲間と共に成長できた時間でした」と話すのは、今年2月から行われたタヤマスタジオでのインターンシップに参加した東北大学3年の能登谷唯華さん。民家に眠っている鉄瓶のリサイクルプロジェクトに取り組みました。各家庭で割れたり壊れたりして使われなくなった鉄瓶を厚意で譲ってもらい、それをタヤマスタジオの工房で溶かして南部鉄器に生まれ変わらせるというプロジェクトです。

製品として販売されるだけでなく、鉄瓶の買取り相当額は、地域の未来に貢献する団体に寄付され、活動に役立てられています。この一連の取り組みは新聞にも取り上げられ、大きく評価されました。価値が失われていた鉄瓶が製品となり、経済を動かす役割を与えられる。そんなイノベーションを経験した能登谷さんも、南部鉄器の魅力に気づかされた一人です。

世界に誇れる南部鉄器を!

「伝統工芸は儲からない、後継者がいない、何より、イケてないというのが、世間のイメージだと思います」

いぐするテラスも佳境に差し掛かったとき、田山さんの口から思わぬ言葉が発せられました。

「伝統工芸には、日本人の持つ美的感覚、空間感覚、精神性といった「深み」がある。「わびさび」がある。そしてそれは日本のみならず、世界から評価される」

田山さんはそう語ると、確かな眼差しで、今後の展望を述べてくれました。

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▲タヤマスタジオ株式会社フェイスブックより

「この素晴らしい伝統を継承して、革新していきたい。周りから叩かれてもいい。こういう業界にも若い力は必要だと思うし、取り組みを広げていきたい。そのためにも今は、一歩ずつ」

一人ひとりに問いかけるような語り口で締めくくられたいぐするテラス。熱心に話を聞いていた参加者たちも、自分の将来について改めて向き合った様子でした。

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取材を終えて

南部鉄器や伝統工芸の未来について熱く語る田山さんの視線に射抜かれ、高鳴る胸の鼓動を抑えてのいぐするテラスの参加でした。自分にしか出来ないこととは何か、頭を抱えている学生は私を含め数多いるはずです。「故郷のために」「自分のために」「誰かの下で」「自分の力で」数ある選択肢を取捨選択して、茫洋とした近い将来を模索する日々です。

震災をきっかけにふるさとで働くという選択をして、自分の役割を「作り出した」田山さん。一国一城の主となった今、見渡す景色が色鮮やかに写っていることがお話の中から伺えました。物事の皮相をなぞるのではなく、南部鉄器に徹することで自分のアイデンティティを確立する。背骨に沿ってまっすぐに一本、何かが突き刺さるような感覚でした。格好いい。素直にそう思いました。いつか自分もそんな後悔の無い選択をしたいと思います。

写真・文:武藤大紀(東北福祉大学3年)
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