テラス

生産者と消費者を新鮮野菜で繋ぎ、新たな流通の形を目指す「グッドラウンド」吉丸直登さん

菅野 智佐 菅野 智佐
1,511 views 2015.08.04

新鮮野菜で、これまでにない流通の形を

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7月14日、仙台市青葉区北目町のファイブブリッジにて、地元で活躍する大人の話が聞ける座談会、その名も「いぐするテラス」が開催されました。ゲストは、株式会社グッドラウンドの吉丸直登さん。

26歳で起業し、生産者と消費者を新鮮野菜で繋ぐ新たな流通の形を目指す、様々な挑戦について話してくれました!

いい車に乗りたくて就職!?

1人でグッドラウンドを立ち上げたという、吉丸さん。

起業のお話を聞く前に、どんな大学生活を送って、どんな就職活動をしたのか、ぜひ参考にしたい!と参加者みんな興味津々の様子。

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大学時代はスノボ三昧だったという吉丸さんは、就活の時期になっても自分が何をしたいのか分からなかったそう。「ただ車が大好きで、とにかくいい車に乗りたかった。だから、たまたま一番早く内定をもらえた証券会社に就職しました」。

...!?ちょ、ちょっと待ってください!驚愕の真実!笑
思わぬ理由にみんな大笑い。場の空気が一気にほぐれました。

入社して、仙台に配属された吉丸さんの主な仕事は法人への飛び込み営業。
実際に会ってくれる社長さんは100人中1人くらいだったそうです。
「堅くなって商品の案内をするのではダメ、仲良くなって自分の人柄を買ってもらうんです」。
自分が売り込みたい商品のことは話さず、相手の話を熱心に聞き、心を開いてもらうことで、個人的なお付き合いをするようになったお客さんは商品を買ってくれました。

農家さんの一言で起業!?

「お客さんといる時間は楽しかったけれど、ノルマに追われる仕事は辛かった」。
お客さんの社長達と農業や食の話を良くしていたこともあり、自分で農業をやろうと思い立ち、3年目に証券会社を辞めました。恐怖心はなかったといいます。

「私の考えは一般的なこととズレている部分がある。みんなそれぞれ変わったところがあっても『普通』に合わせようとするけれど、僕はそのまま行動しただけ」。

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証券会社で世界を見ていた吉丸さんは、インドネシアで桃を売るために交通の便がいいと考えた山梨へ行き、農業の学校に通おうと思っていたところで東日本大震災が起きました。
「すぐに山梨に行く気にはなれなかった。なんか逃げるみたいで…」
仙台に残り、1年間東北の野菜を全国に広めていこうと、食にまつわる復興の事業所の立ち上げに携わりました。

農家の人の声を初めて直接聞いてみると、農家は販路がないことに困っていることに気が付きました。『農業』がしたかった吉丸さんに、農家の人が声をかけました。
「君、農業をするのもいいけど、体力がなさそうだから販路を見つけてきてくれよ」。

会社存続の理由は、寄り添い、信頼されること

「農家さんにとって使い勝手のいい会社ってとこですかね」。
農家の販路を広げるために、一人でグッドラウンドを立ち上げた吉丸さんは言います。

農家の希望は、「家まで野菜を取りに来てほしい」「お店などで売れ残った野菜を全部引き取って買い取ってもらいたい」。
背景には、人手不足で市場やスーパーに農作物を納品するのが大変であったり、売れ残りの廃棄は農家の責任になってしまったりすることがあります。

グッドラウンドでは、直接農家に出向いて買い付けをし、販売しています。それによって消費者へは新鮮な農作物を提供できているのです。

ビジネスにならなそうだし、普通はやらないことなのでは?
「確かに、誰もやりたがらないですね。でも、どこの会社ともかぶらない、生産者と消費者に寄り添った流通をしているのが存続の理由かなあ」と吉丸さん。

グッドラウンドの立ち上げ当初は利益が出ず、辛い思いをしていました。なんと1年目は約300万の赤字!
経営資金は、証券会社時代のお客様が資本金も含め出資してくれたんだそう。
「サラリーマンの頃に築いた関係に支えられ、救われました」と、言います。
「続けていくと信頼してもらえる。それでここまできました」。

首都圏からの要望もあってグッドラウンドは今後、宮城県だけでなく東北6県に展開していくそう。日本国内だけで見るよりも世界を見るとおもしろいと言う吉丸さんは東南アジア進出も考えています。

参加者の声

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参加者は学部もバラバラの大学1年生から4年生の人たちでしたが、皆さん大満足の様子。
「農業との新しい関わり方を知りました、実際の農家さんの話も交えて聞けてよかった!」
「マーケティングや経営、起業について、人と接する時のコツなんかも聞けて面白かった」。
「経営者の立場から見た若い人の見方や欲している人材を知ることができた!」
お話が終わったあとも、皆さん吉丸さんの周りに集まっていて、まだまだ聞きたいこと、話したいことが沢山あるようでした。

いぐするテラスの取材を終えて

人生は一回きり!まずやってみること

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私は、怒られたり、なにか失敗をしたりすると、ものすごくへこんでしまいます。
「自分は大した人間じゃない、だから失敗して当然。出来たらすごい、失敗したらやっぱりね、位の気持ちでいますよ」。
吉丸さんのこの言葉に、心の奥で自分は出来ると勝手に思い込んでいるのだと気づかされたと同時に、挑戦する時、失敗を恐れるなと、背中を押してもらいました。

「最初は何にも分からなかったけれど、だからこそまずやってみた。ありがちなセリフだけど、人生は一回きりだからね」と照れくさそうに言うこの言葉には説得力がありました。
いろんな道をたどっているようでも全て繋がっている。大学に入って様々なことに取り組みながらも、どこかで将来につながるのか、役に立つのかと不安に思うことが時々あります。
でも、「サラリーマン時代は休日が幸せだった。今は1年で363日働いている、でも全然嫌じゃない。楽しいんです、不思議ですね」。そう言いながら、話す吉丸さんのような仕事に出会えるように、残りの大学生活で様々なことに飛び込んでいってみようと改めて決意しました。

話を聞き終えて、新たな流通の形に挑んだグッドラウンドを支えていたのは、私が大好きになった吉丸さんの人柄だと気付きました。

グッドラウンドの新鮮な野菜が、私の住んでいる山形でも手に入れられる日が待ち遠しいです。

文章:名前(○大学○年)
写真:名前(○大学○年)
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この記事を書いた人

菅野 智佐
菅野 智佐
生粋の田舎娘、‘すげのちさ’ と読みます。仙台は都会ですね。よく迷子になります(いつもか)。グーグルマップが手放せません。でも地図を読むのが苦手なので使いこなせない…。笑 こんな私ですが、読者の皆さんを取材現場に連れて行くことが出来るような記事を書いていきたいです!