製造から点検・修繕まで安全第一!子どもの笑顔を守る「ミヤックス」
大人になるにつれて、自然と目を向けなくなった遊具を、誰かが人知れず用意していると考えたら無性に気になってきました。童心に帰るような気持ちで、遊具の製造・販売をしている「ミヤックス」を訪ねました。
ミヤックスって、こんな会社!
ミヤックスは、仙台市泉区寺岡にあります。住宅街の多い並木道沿いに薄緑色をした三角屋根の建物が本社です。駐車場の二宮金次郎像が出迎えてくれました。
創業は、戦後間もない1949年。先々代社長の髙橋正太郎さんが、新しい日本を担う人材を育てる「教育」の市場で商いをしたいと模索し、机やビーカーなどの学校教材の問屋として株式会社「宮城教材」を栗原市で興します。
仕事を続けていくうちに、学校現場から「遊具が欲しい」という声が多くなり、1960年に自社で製造した遊具の販売を始めました。次第に教材以外の商品も扱うようになり、1994年に社名を「ミヤックス」に変え、本社を仙台市に移しました。
現在の事業は、大きく分けると2つあります。1つは「オフィス空間」を作る事業です。小学校や大学などの教育機関を中心に「働く場」や「学びの場」を整えています。もう1つは遊具の製造・販売業です。栗原市にある自社工場で遊具を作り、販売しています。子どもたちの「遊び場」を作る仕事です。
企画開発室長の髙橋蔵人(くらんど)さん(31)は「共通しているのは、人が集う場づくりをしている会社だ」と話します。宮城県内を中心に、社員30人で事業にあたっています。
Made in Miyagiの遊具!
宮城県内で遊具を製造しているのは、3社のみです。「県内の学校の5割以上は、ミヤックスで作ったものです」と蔵人さん。栗原工場にいる12人の技術職社員が、年間約150基の遊具を製造しています。
公園や学校に遊具を設置する場合、まず管轄の自治体が設置計画を立てます。ミヤックスは計画の段階で、遊具の提案に関わっています。「他県ではこんな遊具を置いているみたいですよ」「こんな遊具が非常に喜ばれていますよ」といった提案をしていきます。その施設に最適な遊具を置く提案ができるように、様々な先行事例を調べることや、公園を見て「何であの公園には人が集まらないのか」などの理由を考えることを日頃から欠かさず行っています。
ちなみに「遊具に流行があるのか」聞いてみました!
「流行はあんまりないかも。変わったものよりは、やっぱりブランコとか滑り台みたいにスタンダードなものが人気だよ」と蔵人さん。長年愛されてきた遊具は、飽きられにくいのだそうです。確かに、公園にある遊具の種類は私の小さい頃と比べても、大きな変化はないような気がします。
栗原工場は、3DCADで設計した図面をもとに製造します。遊具の原料は、鋼管や鋼板です。それらを切断して、組み立て前のパーツ状態に加工します。
製造したパーツは、ばらばらの状態で現場に運び、組み立て、設置します。遊具に傾きが生じて子どもたちに危険な目に合わないか、きちんと測量をして、掘削作業に入ります。地面と水平になっているか、ボルトはしっかりと締まっているか、安全性への配慮は決して怠りません。
圧倒的な実績、1年間で4000基の遊具に関わる!
「遊具で何が一番大事かと言うと、安全性なんだよね。うちは地域に密着しているから、何かあったら電話一本ですぐに駆けつけますよ」と蔵人さん。ミヤックスは遊具の製造だけでなく、遊具の点検・修繕業務に力を入れて取り組んできました。仙台市内の全小学校の修繕作業を請け負うなど、年間約4000基の遊具の点検や修繕を手掛けています。
ミヤックスでは「今あるものを長持ちさせます」をコンセプトに営業しています。「遊具って、きちんと手を加えれば、すごく長持ちするから」と話す蔵人さん。遊具の寿命は、何も手を加えなかった場合、およそ10年です。点検や修繕をして、塗装をし直すことで新品のように使えるものもあります。
ミヤックスは、自治体から定期的に遊具の点検を請け負っています。多いときは1日に7件を見ます。点検はハンマーや点検道具一式を持って、依頼のあった公園・学校へ行きます。
点検個所は、遊具によって異なります。ブランコの場合、まず目視からです。揺れる範囲内に障害物はないかなど安全境域が確保できているか、支柱の根本が雨など腐食していないかを確認します。腐食は、根本を掘り、地中部まで確認します。また、ブランコの吊金具やチェーンの摩耗がないかなども見ていきます。
腐食箇所は、ハンマーで叩き、音の違いで遊具の状態をチェックします。点検作業は、常に2人以上で確認し合いながら入念に行っています。
「何でも修繕すればいいわけじゃないし、かといって危ないからすぐ廃棄すればいいわけじゃない。大切なのは遊具の1つ1つの状態を見て判断するということ」と蔵人さん。65年遊具と向き合ってきた経験をもとに、遊具をどう扱うべきかの判断を下しています。
修繕が必要と判断した遊具は、自治体と相談しながら作業します。ブランコの場合、ボルトやチェーンを新しいものと取り換えることが多いそう。また、腐食した木製の座板部分をゴム製の座板に変えることや、塗装をし直すことで見た目も新しくなり、長く使うことが出来ます。一見すると新品の遊具が、実は小さい頃に遊んでいたものとまったく同じものだった、なんてことがあるのかもしれません。
「本当に欲しい公園」を企業と創る
ミヤックスでは、民間企業と協力した公園づくりをしています。「東日本大震災後は、より積極的に関わっています」と蔵人さん。
震災で沿岸部の公園や学校の遊具が流されたことを受けて、民間企業がCSR(企業の社会的責任)の一環として、公園の整備や小学校に遊具を寄付することが増えてきました。これまでに50件の公園づくり、学校等への遊具寄付に携わっています。
ミヤックスの役目は遊具作りのほかに、行政と企業を繋ぐことです。「民間企業だけでやると、実際に手続きや施工の経験がないから、公園や学校を所管する自治体を置き去りにして、現実的じゃない公園になってしまう」と蔵人さん。自治体の要望に65年応え続けてきたミヤックスは、公園づくりのプロフェッショナルです。「公園のことはミヤックスさんに任せて大丈夫」と行政から信頼される存在になっています。ミヤックスが関わることで、企業と行政の双方の意見をくみ取りつつ実際の「形」にすることができます。
一例として、大手衣料メーカーや石巻市のNPO法人と協力し、石巻市内に「釜っこ公園」と「さくら公園」を作りました。
「釜っこ公園」は「孫たちが遊具で遊んでいるのを横で眺めていたい」というお年寄りの声をくみ取って作りました。公園は遊具のそばにベンチを多めに設置しています。モミの木の植栽をしたのも特徴の1つです。植栽したモミの木には「クリスマスの頃に飾りつけをして、みんなで集まれるように」という意図が込められています。
「さくら公園」は、「春になったら桜を見て、集まりたい」という声から、公園をいっぱいの桜で埋め尽くすように作りました。春が待ち遠しくなる公園になっています。
住民にとって、「あってほしい」と思う公園を実現する事業の一端を担っています。
「人が集う空間づくり」の事業化
ミヤックスは現在、「民間主導の公園づくり」を事業化できるかを模索しています。「これまで通りの事業では復旧はできても、復興は難しいと感じています」と蔵人さんは話します。民間主導の場合、周辺住民が「必要だ」と思うものを作る前に話し合うため、いらない公園づくりをしません。民間企業との公園づくりをしていくうちに、住民にとって必要な公園づくりができる可能性を感じ取りました。
いままでは、遊具を扱う会社としてと、長年の経験を生かしつつ、今後は「こんな遊具を置いて、この木を植えてこんな公園を作りましょう」「ゲームをする子どもが多いから、遊具がなくても、ベンチがあれば子どもたちが集まるのではないでしょうか」と発信する側になりたいと考えています。
「これからは『遊び場、人が集まる場をつくりたい』なら、うちに頼んでもらえるような会社になれたらいいと思っています。正直なところ、ミヤックスの遊具を設置してもらうことが目的じゃない。住民が望んでいる公園を作れればそれでいいです」と蔵人さん。これまでの遊具屋さんからコミュイニティづくりができる会社へイメージチェンジできないか、挑戦を続けています。
新たな事業開発に向けて試行錯誤を続けるミヤックスでは、ワカツクの長期実践型インターンシップに参加する学生を募集しています。地図に残る仕事をしてみたくありませんか?興味のある方はぜひ、こちらのページをチェックしてみてください!
子どもたちの「幸せ」を考えて仕事をする、幸せそうに遊ぶ姿を見られるのが、蔵人さんのやりがいなのだと感じました。「誰かのために、喜んでもらえるように働いていきたい」。4月からそんなふうに働いていきたいです。
資本金 | 1,000万円 |
住所 | 宮城県仙台市泉区寺岡1丁目1番地の3 |
電話番号 | 022-777-5888 |
この記事を書いた人
この人が書いた記事
- イケ社2015.03.30製造から点検・修繕まで安全第一!子どもの笑顔を守る「ミヤックス」
- イケ社2015.03.20掃除で床も心もピカピカに磨き上げる!「ファミリーメイト」
- イケ社2014.12.26アイデアで勝負する!「感動コーポレーション」
- イケ社2014.12.22この道39年のベテラン社員が伝授!営業の武器は雑談にあり!?「瀬戸屋」