私たちのライフラインを支える公共工事のプロ「高野建設」
高野建設ってこんな会社
仙台市太白区にあるJR太子堂駅の目の前。幹線道路沿いにあるマンションに高野建設があります。
高野建設の仕事は99パーセントが「公共インフラの土木工事」で、元請会社として工事全体を管理する「施工管理」に特化しています。
「公共インフラ」とは道路、上下水道、ダム、鉄道、橋梁など快適な生活を送るために必要な公共施設を指し、公共事業として国や都道府県、市町村区など自治体が発注します。
「土木工事」は建築物以外の大半を占め広い分野ですが、高野建設は下水道、電線共同溝、宅地造成に携わっています。
公共工事を行う建設会社は自治体から会社の事業規模と過去の実績に基づいたランク付けをされ、ランク別に入札参加できる工事が設定されています。発注される工事の多くは競争入札方式という自治体が設定した金額から最も低い工事費用を提示した会社が受注する仕組みになっています。
創立は1960年で現在の社員数は13名。代表取締役副社長の高野裕之さん(34)は入社7年目。現社長のお父さんから事業を引き継いでいます。
「地図」に残るダイナミックな仕事
「土木の仕事はミリ単位で設計どおりに作っていく正確さと細かさが求められる世界です」と高野さんは話します。
そこで必要になってくるのが「施工管理」という工事全体を見渡すマネジメントのポジションです。高野建設の社員は、工事現場で協力専門会社の作業員に作業進行の指示をします。業務は幅広く、図面と現場の確認、作業・工程計画、資材管理、発注、施工図作成、品質管理などがあります。
施工管理をするためには「土木施工管理技士」という国家資格が必須です。場合によっては、受験資格が11年半の実務経験が必要というシビアな資格。なぜそこまで厳しい条件がついているのかというと「人の命に関わるから」だと言います。管理者1人で予算が億単位の大規模な工事を受け持つこともあり、作業員だけでなく、近隣住民など多くの人に影響が及びます。少しの不注意で大規模な事故を起こす危険性もあります。
そのため安全面にも余念がありません。穴を掘るときは断面に板を打ち込み、鉄骨で梁を設置し土砂崩れを防ぎます。
また、建設業は人手不足の状況なので1工事に1人しか人材を配置できません。工期内に間に合わないこともあるのではと思いましたが、そこはプロ集団。「震災後の建設ラッシュの時でさえ1度も遅れたことはない」と言います。
工事を完遂するには協力専門会社の作業員の力が不可欠です。高野建設では作業を進めるときには普段から報告・連絡・相談を徹底したり、休憩中にも仕事の話からプライベートな話まで積極的にコミュニケーションをとるようにしています。
「公共インフラの土木工事をしているうえで何よりの魅力はダイナミックな土木建造物をチームで作り上げ、後世に残していけること」と高野さんはうれしそうに話します。
建設会社の中に映像事業部!?
「新しい分野に挑戦し続ける企業でありたい」。高野さんが会社を運営していく上で心掛けていることの一つです。2014年4月、新部署を立ち上げました。その名も「映像事業部」。高野さんが本業と並行しながら1人で業務にあたっています。結婚式当日の様子を撮影した動画や写真アルバムを制作しています。今までに動画4件、写真は6件の発注を受けました。建設会社に映像事業部?しかも結婚式?と疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。
一見本業とは関係ない新しい取り組みをなぜ始めたのか。それは「東北から面白い人材を輩出したい」という思いからでした。首都を支える地方としての存在ではなく、東北から全国で、ひいては世界で戦っていける人を生み出したい。そのために「自分には何ができるだろうか」と考えたと言います。
「映像」は高野さんの「武器」といえるものでした。大学時代は映像サークルで映画制作に没頭する毎日。大学卒業後には、「映像」で何かを伝えたいという気持ちが高じて東京の広告会社に就職しました。仙台市内のゼネコン勤務を経て、高野建設に入社。最近ではインフラメンテナンス時代を見据えてラジコンヘリ(通称:ドローン)を使った、ドローン空撮の事業も行っています。
現在はウエディングムービー&フォト事業や動画プロモーション事業を行っていますが、メイン事業である公共工事にも映像制作の技術を活かしていきたいとのこと。
現在研究を始めたのがバーチャルリアリティー(VR)分野です。例えば、地面の下を調査するときに穴を掘る前にVRで地面の下を見ることが出来れば施工とメンテナンスの効率がアップします。またこれから施工する土木構造物や建築物をVRで先に作り現実との問題のすり合わせに使うこともできます。
それを可能にするデバイスがオキュラス・リフトというヘッドマウントディスプレイ(HMD)です。現在このデバイスを2台調達し、ともに開発を手伝ってくれるIT会社を探しています。「まだまだ、これから。まずは映像事業部の取り組みを、少しでも多くの人に知ってもらわないとね」と今後を見すえます。
「土木のカッコよさ」絶賛PR中!
映像事業部を中心に、現在高野建設では「土木」の仕事のPR活動と人材確保に奔走しています。「土木の仕事は泥臭くてかっこ悪いイメージがあるから若者が就きたがらない。この仕事の印象を少しでも向上できたら」と話す高野さん。その取り組みの一環として映像制作を志している人を対象に「ドローン」を使って撮影した土木工事映像の上映会や「オキュラス・リフト」の実演会を太白区文化センターで行っています。
そこで、実際にオキュラス・リフトを体験してみました!
広い視野に加え、頭の動きと連動してゲーム内の視点を動かす機能が特徴です。内蔵されたヘッドフォンから映像と連動した音が流れ、まさにゲームの世界に入り込んだかのような体験が出来ます。
今回私が体験したのは遊園地にあるアトラクション「フライングパイレーツ」。船をかたどった乗り物に乗り、上下に激しく揺さぶられる絶叫マシーンの映像がプログラムされています。
実際にはその場から動いていないはずなのに、まるで椅子ごと振り回されているかのような臨場感。宇宙にいるような無重力状態を味わえたり、時々1回転したり、どんどん映像の世界に入り込んでいきます。ほんの1分強の体験でしたが、終了後もしばらく目が回りっぱなしでした!
今まで土木の仕事は「土木を専攻してきた人のための専門職」という色合いが強かったそう。それ以外の大多数の市民に仕事内容を知ってもらう努力をしてこなかったため、現在の人手不足が起こっているとのことです。「今業界に必要なのは土木の人間とそれ以外の人間の架け橋になるような人材です」と話す高野さん。認知度を上げるために、広報業務を行う大学生のインターンシップ受け入れを始めました。広報活動を通し、「土木を専攻する若者が土木の仕事に更なる興味を抱けるように。そうでない若者も土木に対する関心を少しでも持てるようになってくれれば」と願いを込めます。
今後は土木のかっこよさを伝えるため、地元仙台の建設会社が中心に関わっている工事現場や働いている人を写した「土木写真集」を制作する予定です。完成したら、広報活動の手段として使うほか、一般向けに販売するそうです。
「3K」から「かっこいい」仕事へ
公共工事は1950年代から1970年代の高度経済成長期以降に大量に行われました。老朽化の目安と言われる50年以上となるものは現在1割程度ですが、20年後には6割近くになるといわれています。
「土木のインフラは今後既存のものをメンテナンスしていく時代になっています。高野建設ではそういったニーズ一つ一つに応えていきたい」。今後は若手を積極的に採用し、育成していきます。
資本金 | 2,400万円 |
住所 | 宮城県仙台市太白区長町南2丁目12番85号 U&H 1F |
電話番号 | 022-248-3351 |
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