有機栽培にかける~届け、甘い野菜 「農業・笠松洋市さん」
2014年9月に一般社団法人ワカツクと河北新報が主催した記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が班ごとに取材した記事を紹介します!
有機栽培にかける~届け、甘い野菜
ホウレンソウの旬にはまだ早い9月。
ハサミで一つひとつの根を丁寧に切り、束を作る。
仙台市若林区笹屋敷の農家、笠松洋市さん(58)は、有機栽培をしている。
野菜との対話を毎日欠かさない。
例えば、畑でホウレンソウの育ち具合を見るとき。
土の栄養が足りないと葉は短くなる。
「ストレスにさらされた野菜はまずくなる。野菜の微かなサインにこたえることが、うまい野菜作りの秘訣」と強調する。
【ホウレンソウの出荷作業をする笠松さん】
試行錯誤の中で、たどり着いた肥料が鶏糞だった。
笠松さんの農地に一番適し、野菜本来の甘みを引き出した。
農薬は使わない。
2011年3月の東日本大震災による津波で自宅を流され、農地も塩をかぶった。
ボランティアの助けを借りて、半年後には野菜づくりを再開できたが、また壁が立ちはだかった。
津波被害を受けて被災地の農地再整備が始まり、国が全国的に推進する農地の集約化が加速した。
すると、特定の野菜が特定の時期に大量に出回るようになり、市場価格が下落。
悩んだ末、ホウレンソウの場合は通常10~12月の出荷を9月に早め、活路を見出した。
震災前は市場への出荷が中心だった。
震災後は新たな販路を開こうと、インターネット販売に着手。
被災地支援のため遠方からきたボランティアらの「食べてみたい」という声をヒントにした。
震災直後は公的援助を受けるために、法人化する農家が増えた。
目指すのは効率を求めた大量生産。
手間がかかる有機栽培を避けようとする在り方に、笠松さんは疑問を抱いた。
「有機栽培ができないなんて、つまらない」
個人農家に徹した。
キャベツ、コマツナ、ハクサイ…。
2.3ヘクタールで多様な作物を育てる。
農業支援に来た学生に有機栽培の魅力を伝えることにも力を入れる。
「栽培の難しさを肌で感じ、うまさと甘みを舌で覚えてほしい」
笠松さんは、またホウレンソウの束を、
わが子を送り出すように詰めていく。
そっと、優しく。
早稲田大大学院修士1年 田中美知生
福島大2年 黒澤和也
千葉大3年 佐藤智美
東北大2年 能登谷唯華
この記事を書いた人
- 一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪
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