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「明かりこけし」が灯す未来  こけしのしまぬき

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691 views 2014.10.01

2014年8月に一般社団法人ワカツクと河北新報が主催した記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が班ごとに取材した記事を紹介します!

「明かりこけし」が灯す未来

東北を代表する伝統工芸品のこけしなどを販売する「こけしのしまぬき」(仙台市青葉区一番町)は、1892年から続く老舗。
市中心部の「おおまち商店街」にある店内には、数ミリから70センチメートルまで、大小1000本以上のこけしが並ぶ。
こけしを描いた手ぬぐいやノート、カードケースもあり、彩りにあふれている。

「東北はこけし発祥の地。なのに、時代とともにこけしに興味を持つ人は減っている。
もう一度こけしが身近にある生活を考えてみてほしい」と島貫昭彦社長(57)は語る。

こけしには約200年の歴史があり、宮城県蔵王町遠刈田地区や大崎市鳴子地方など、
産地によって特徴ある作品が作られ続けている。
「工人が手作りすることで絵柄や形状の多様性を生み出し、木のぬくもりを感じるのも魅力」と島貫さん。
しかし「地元ではありふれすぎていて、多くの人が目を向けなくなった」と残念がる。

こけしに注目してもらうため、2009年にはLEDライトを内蔵した「明かりこけし」を新開発した。
高さ24センチ。
見た目は普通のこけしと変わらない。
中に乾電池が入っており、傾けたり倒れたりすると内蔵ライトが点灯する。
島貫さんは「防災グッズとしても便利なんです」と説明する。

f【あかりこけしを持つ島貫社長。底の部分が光り、いざという時頼りになる】

開発のきっかけは08年の岩手・宮城内陸地震。
防災意識が高まりを見せる中「家にあると揺れに弱く、倒れやすそう」というこけしの常識を逆手にとって
生活の中で役立ててもらおうと考えた。

11年には東日本大震災が発生し、「暗闇の怖さを知った」と手に取る客が多くなった。

島貫さんは、忙しい社長業の合間を縫い、毎日、売り場に立って客と会話する。
「商品開発に大切なのは、お客さまのニーズをつかむこと」
その意欲が、「明かりこけし」のような斬新な商品開発の原動力につながっている。

人気の低迷、職人の高齢化、暮らしの洋風化-。
こけしを取り巻く険しい道筋を、きっと明かりこけしが優しく照らしてくれるだろう。

河北新報社インターンシップ7期 F班
駒沢大学3年 山家達也
東北学院大学3年 板橋貴大
東北学院大学3年 阿部みゆき
日本大学2年 大友千沙希
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一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪