「仙台みそ」を次代に 「仙台味噌醤油」
この8月に一般社団法人ワカツクと河北新報が主催した記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。「被災地の中小企業」をテーマに、参加学生が9つの班に分かれて取材した記事を本日から連続で紹介します。
「仙台みそ」を次代に
大豆と米が蒸し上がる香りが、食欲をそそる。
軽自動車がすっぽり入るほどのみそ桶が十数基連なる。
1919年創業の老舗「仙台味噌醤油(みそしょうゆ)」が、大崎市松山に置くわさび沢工場。
「伝統の仙台みそを守り、次代に伝えていくのが私たちの使命」。
工場トップの取締役製造部長渡辺佳裕さん(42)は、言い切る。
▲昔ながらのみそ桶の前に立つ渡辺さん=大崎市松山の仙台味噌醤油わさび沢工場
仙台みそは、大豆を煮ず、蒸し上げて仕込む。
うまみを煮汁に逃すことなく凝縮する。
蒸し時間や蒸気の圧力は大豆の産地やその日の気温、湿度によって変える。
原材料調達から製造工程管理まで取り仕切る渡辺さんの、17年の経験の見せどころだ。
仙台みその歴史は古い。
約400年前、伊達政宗が日本初のみそ工場を構えたのが始まり。
以来、いまも宮城県内の41業者が一体となって、連綿と受け継ぎ、製法を守る。
組合の規定では「大豆1に対する米の配合割合は0.7まで」。
仙台味噌醤油では米の配合をさらに低く抑え、大豆のうまみを前面に出す。
渡辺さんは「それがすっきりとした独自の味わいを生み出す」と思い入れを語る。
本社機能を創業地の仙台市若林区に残し97年、工場のみを大崎市に移転した。
仙台みそを年間4,500㌧製造する。
みその原料は、大豆、米、塩、水。
良質な素材を求め、全国有数の大豆産地である宮城県の中でも、作付面積1位の大崎市を選んだ。
水が命の日本酒づくりが盛んなことも後押しした。
近年、みそを取り巻く環境は厳しい。
この50年で消費量が半減した。
渡辺さんは小学校の出前授業に出向いたとき、朝食にみそ汁が出る家庭が3割に満たないことを知り、焦りを感じた。
歴史や効用を語り聞かせ、発酵の様子を見せる。新鮮な驚きが子どもたちに広がり、手応えも感じる。
その手応えを形にしようと、みそを使った料理法の紹介や、
東日本大震災以降売れ行きが好調な即席みそ汁の強化にも取り組む。
「子どもたちに、食卓にみそ汁が上がる家庭を築いてほしい」
渡辺さんが思い描く、仙台みその明日の姿だ。
日本大学3年 鈴木絵梨香
東北大学3年 真野純樹
宮城大学3年 小沼早紀
東北福祉大学2年 佐藤杏菜
この記事を書いた人
- 一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪
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