HEY,タクシー!奮闘続ける、まちの足「泉タクシー」
泉タクシーって、こんな会社!
株式会社泉タクシーは、仙台市泉区七北田の国道4号線沿いにあります。創業は1985年で、来年には30年の節目の年を迎えます。現在はタクシー21台、バス28台を保有し、運転士をはじめ105名(パート含)の従業員が働く会社です。この記事ではタクシー事業にスポットを当てますが、バス事業では「泉バス」の名前で、貸し切りバスや泉区周辺にある私立学校の送迎バスなどを運行しています。通学の際にお世話になったという方もいるのでは?
タクシー事業の責任者である専務取締役の高平賢さん(38)にお話を伺いました。
「90年代からの不況で利用者が減っていることに加え、近年は競争も激しくなり、タクシー業界は厳しい状況が続いています。その中でも会社を続けていくために、一生懸命努力しているところです」。
※ある日のJR仙台駅前。泉タクシーは写っていません。
2002年にタクシー事業の参入や増車の規制が緩和され、現在、仙台市を走るタクシーは約3100台。2002年当時の約2500台と比較すると、規制緩和以降に急増したことが分かります。
どの会社も生き残りに知恵を絞る中、泉タクシーは着実に収益を上げ、「1台当たりの売り上げ」が仙台市内で最も大きいタクシー会社なのです。逆風の下でも堅実な経営を続ける秘訣は、どこにあるのでしょうか?
基本に忠実!「接遇」でリピーターを獲得
売り上げを伸ばすには、お客に1度乗ってもらうだけでなく、もう1度選んでもらう、つまり「リピーター」になってもらうことが重要です。このために高平さんが大事にしているのは「タクシーは接客業である」という考え方。タクシー事業を受け持つようになって間もない8年前、タクシー協会で「接遇」研修の講師を担当した経験がもとになっています。
「以前は『乗せてやっている』という意識の運転士もたくさんいましたが、それではダメ。言葉遣いもそうですが、身だしなみを整えることや、車内を清潔に保つことなど、基本的なことから意識を改めてもらいました」。
当時は規制緩和による競争激化でタクシーの運転マナーや接客の悪化が問題になっていた時期でもあります。業界でもいち早く接客の改善に取り組んだ泉タクシーは、多くの利用者の支持を集めることに成功しました。また、65歳以上の利用者や妊産婦(母子手帳発行から2年間)などの料金を1割引にするオリジナル会員カードも好評で、多数の会員を擁しています。
※泉中央は泉タクシーの「ホームグラウンド」。
地域に密着! 半径5キロ作戦
リピーターの多さは営業の効率を上げることに貢献しています。泉タクシーでは、日中の営業の実に7割が「配車」によるものです。配車とは、電話などで車を呼んだお客のもとにタクシーを向かわせること。「タクシーを使うときは泉タクシーにお願いしよう」と決めているお客が多いことを意味します。
「リピーターのお客様が多い地元、泉区に密着した営業を徹底しています。配車のお客様は通院など短い距離のご利用も多いのですが、短時間のうちに何度もお客様をお乗せできるので、トータルの売り上げは大きくなるのです」。
泉タクシーでは、本社の最寄り駅である地下鉄泉中央駅から半径5キロ圏内を重点エリアに位置づけ、地域に密着した営業を徹底しています。狭い範囲に車を集中させることで、地元からの電話予約にすぐに対応することができ、お客にとっても、ワンメーター(初乗り料金:670円)だけの利用でも気まずい思いをする必要はありません。まさに地元に根差した「足」なのです。
※泉中央駅から5キロ圏。
装備も万全! 安心を運ぶ介護タクシー
さらに泉タクシーで特徴的なのは、泉区内のタクシー会社では唯一の「介護タクシー」のサービスです。介護タクシーとは、介護初任者研修の有資格者が乗務するタクシーのことで、乗り降りのしやすさなどに配慮した福祉車両が使われます。利用者には介護保険が適用されるため、料金が低く抑えられているのも嬉しい点です。
泉タクシーでは仕様の異なる3台の福祉車両を保有しています。こちらは、車いすでも楽に乗り降りができるリフトを備えた車両です。
通院や福祉施設への送迎など、多くの利用者の足となっている介護タクシー。特別なのは、車だけではありません。
車いす用の介護タクシーを紹介してくれたのは、運転士の伊藤和典さん(51)。ドライバー歴は10年で、介護タクシーには4年前から乗務するようになりました。運転では、前後の揺れに弱い車いすの特徴を踏まえて、ブレーキ操作には特に気を付けているそうです。伊藤さんが運転技術以上に気を配っているのは、お客とのコミュニケーション。
「お客様にその日の体調などを尋ねるように心がけ、様子がおかしければ病院や施設の職員に連絡するなどしています。お1人でご乗車になるお客様の異変に気付けるのは、私だけですから」。
庄子寿美さん(46)は運転士になって4年目です。以前は音楽関係の仕事に就いていましたが、家族の介護をきっかけに資格を取得し、この仕事に転身しました。
「大切なのは、お客様への敬意を忘れないこと。ちょっとした世間話でも、きめ細かなコミュニケーションを心がけています」。
泉タクシーで介護タクシーのハンドルを握るのは17名。資格や運転技術はもとより、泉タクシーが重視する接遇のさらに先を行く細やかな心配りで、このサービスを必要とするたくさんの人々の安心を運んでいます。
気になっていたことを聞いてみよう!
さてここで、タクシー運転士という職業について質問してみることにしました!
道を覚えるのって、大変じゃないですか?
庄子さんは若林区在住。地元ではない泉区の道路を覚えることに苦労はありませんでしたか?
「それがね、そんなに大変ではないの。建物の特徴や近くの目印を覚えていけば大丈夫。それに、泉は住所を表示する看板が多いから、苦労はありませんでしたよ」。
他の運転士さんからも、「道を覚えるのに苦労した」というお話は聞かれませんでした。その気になれば意外に何とかなる!?
1日の勤務の流れは?
庄子さんに、取材当日の勤務の様子をお聞きしました。
6:50 出勤
アルコール検査や売り上げを記録する日報の作成、車両の点検、清掃を毎回欠かさず行います。
7:15 業務スタート
配車センターの指示でお客を迎えに行きます。1度の勤務でお客を乗せるのは平均で10回ほど。泉区内の短い距離の運転が中心ですが、青葉区の東北大学附属病院や富谷町方面など、比較的遠くまでお客を送り届けることもしばしばあるそうです。
15:00 退勤
勤務内容を会社に報告し、退社します。今回は、勤務を終えた直後の時間帯に取材に応じていただきました。ありがとうございます!
普通の小型タクシーでも勤務の流れはほぼ同じで、入れ替えの時間帯にあたる早朝と夕方は多くの運転士が会社に顔を揃えます。
運転士さんは1匹狼?
タクシー運転士というと、1人孤独に車内で過ごす「1匹狼」のイメージもあります。実際のところを聞こうとすると、運転士さん同士で冗談を言い合って、なんだか楽しそう。仲の良い同僚を「相棒」と呼び慕う人まで。
「確かに、仕事中は1人ですが、泉タクシーの場合は出勤、退勤の時間にほとんどの運転士が顔を合わせます。ですから、お互いのことはよく分かっていますし、それぞれ仲良くやっているようですよ」と高平さん。明るい職場環境は、運転士のモチベーション維持にもつながっています。
「運転士には本当に色々なタイプの人がいます。どんな個性の人も居ていいのがこの会社。そこが面白さでもあります」。
変えること、変えないこと
泉タクシーでは、今年度、小型タクシー18台のうち9台をハイブリッド車に置き換えます。大衡村の工場で生産された最新型で、実際にハンドルを握る運転士さんによると、「今までの車と比べて、給油の回数が半分で済むようになった。びっくりしたよ」とのこと。タクシーの燃費の向上は、経営上のメリットはもちろん、環境保護にも貢献します。実際に乗せていただきましたが、乗り心地も良好です!
積極的な姿勢の一方で、高平さんは、今後の泉タクシーについて大きなビジョンや野心的な目標は特に考えていないと言います。
「タクシー業界の厳しさは今後も続くと思います。自分たちの使命は、この会社を長く続けていくこと。変えていくべきことは変えていきますが、これからも基本を大切に、地域に貢献していくだけです」。
それでも、「タクシー=きつい職場、というイメージは払しょくできれば」とも話す高平さん。今すぐ実践するのは難しいとしながらも、将来的には休日を増やす、夜間勤務を減らすなど、若者でも働きやすい環境を整えられないか考えていきたいということです。
「タクシー運転士というと、年を取ってから就くというイメージもあると思いますが、若くても車が好き、人と話す仕事がしたいという方がいたら、いつでもウエルカムですよ!」
従業員数 | 101名(パート社員含まず)平成26年7月現在 |
資本金 | 10,000,000円 |
住所 | 〒981-3131 宮城県仙台市泉区七北田字新田12-1 |
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