大切なのは継続。震災遺児支援に取り組み続ける「家庭教師、個別指導のアップル」
『1対1』にこだわる理由とは
「私が死んでも支援は続けなければならない」
今年で創業17年目になる「家庭教師、個別教室のアップル」を経営する
畠山明さん(44)は言う。
畠山さんは教員時代に発達障害の子どもに出会い、一人ひとりに応じた教育の必要性を感じた。そこでの経験こそが、『1対1』の学習をコンセプトとした家庭教師、個別教師のアップルの原点だ。
東日本大震災後、たくさんの震災遺児がいることを知った畠山さんは「自分にできることは何か」と考えた。その時、力となったのが、これまで継続してきた『1対1』の学習法だった。
現在は、遺児支援として週に1回、10人の生徒に無料で学習支援を行っている。
その方法は、研修を受けた講師が直接、遺児のもとに足を運ぶのがほとんど。遺児にとって講師は「お兄さん、お姉さん」のような存在なのだという。
『続ける』原点は、家系にあり?!
遺児支援も、変わらない指導法も、『続ける』ことに意味がある。畠山氏の両親は震災以前、宮城県気仙沼市で江戸時代から続く海産物問屋を営んできた。
「うちは家系的にも、続けることが得意なんです」と畠山さんは笑う。
『続ける』ことは畠山さんのこだわりであり、一貫して『1対1』の学習を続けてきたからこそ、震災遺児支援に個別学習のノウハウを生かせた。
▲穏やかな表情で語る畠山明さん(44)=仙台市青葉区
学生も社会人も巻き込んだ活動へ
『続ける』だけではない。支援にあたって、講師たちに遺児のメンタルケアに関する研修会を実施したり、学生、医療関係者、教員など、様々な分野の人が広く活動できるように「一般法人学習能力開発財団」を立ち上げたり、新しい試みにも取り組み続けている。
「サービス品質を高め、今までにないユニークさを深めたい」という畠山さんの言葉には、一貫した『継続』と合わせて、『一人ひとりに応じた教育』の質を高めるために、挑戦し続ける熱い想いが込められている。
震災遺児が高校を卒業するまで
「遺児が震災当時0才だとして、高校を卒業するまで18年間、2019年まで会社の理念は変わらない」と畠山さんは語る。
学習したい遺児がいる限り、それに応え続けるということは、17年間積み上げてきた、『1対1』の一貫した『継続』があるからこそ可能だ。継続の先には、生徒との信頼関係も育まれていく。
震災の記憶は風化しても、子どもたちの心にその記憶は残り続ける。学習、メンタルケア、人としてのつながり。遺児支援は誰にでもできる支援ではない。アップルの『継続』した一貫性と、それに伴う信頼、質を高めるための挑戦は、これからも『一人ひとりに応じた教育』に応え続け、求められる限り、震災遺児を支えていく。
取材を終えて
すごく緊張しました。社長は普段から忙しいと予想していたので、相手の言葉一語一語の意味をきちんと理解しようと、的を射た質問を準備していました。しかし実際に会ってみると、畠山さんはとても穏やかで聞き上手。温かい人柄の社長でした。話をするうちに、私の予想はまったく違っていたと感じ、社長自身の魅力を書きたいと思いました。社長の話し方やしぐさに、独特な雰囲気を感じたからです。もっと引き出せたのではと、悔いの残る取材でした。取材を通して感じたことは、記事を書くことよりも、その人の気持ちや本音を引き出すことはもっと難しいということでした。
この記事を書いた人
- 慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科3年
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