記者(個人)

継続した震災遺児支援を

小林智都 小林智都
153 views 2014.03.02

「私が死んでも支援は続けなければならない」。今年で創業17年目である「家庭教師、個別教室のアップル」を経営する畠山明さん(44)は言う。

畠山さんは教員時代に発達障害の子供に出会い、一人ひとりに応じた教育の必要性を感じた。そこでの経験が、『1対1』の学習をコンセプトにする家庭教師、個別教師のアップルの原点だ。

震災後、現場で震災遺児がいることを知った畠山氏は、「自分にできることは何か」と考えた。その時、力となったのが、これまで継続してきた『1対1』の学習法だった。

現在は、遺児支援として週に一回、10人の生徒に無料で学習支援を行っている。その方法は、研修を受けた講師が、直接遺児の下に足を運ぶのがほとんど。講師と遺児は、お兄さん、お姉さんのような関係だという。

遺児支援も、変わらない指導法も、『続ける』ことで意味がある。畠山氏の両親は震災以前、気仙沼で江戸時代から続く海産物問屋を営んできた。

「うちは家系的にも、続けることが得意なんです」と畠山さんは言う。『続ける』ことは畠山氏のこだわりであり、一貫して一対一の学習を続けてきたからこそ、震災遺児支援に個別学習のノウハウを生かせた。

▲穏やかな表情で語る畠山明氏(44)
=仙台市青葉区

『続ける』だけではない。支援にあたって、講師たちに遺児のメンタルケアに関する研修会実施したり、学生、医療関係者、教員など、様々な分野の人が広く活動できるように「一般法人学習能力開発財団」を立ち上げたり、新しい試みにも取り組み続けている。

「サービス品質を高め、今までにないユニークさを深めたい」という畠山氏の言葉には、一貫した『継続』と合わせて『一人ひとりに応じた教育』の質を高めるために、挑戦し続ける熱い想いが込められている。

「遺児の子が震災当時0才だとして、高校を終えるまで18年間、2019年まで会社の理念は変わらない」と、畠山氏は語る。学習したい遺児がいる限り、それに応え続けるということは、17年間積み上げてきた、一対一の一貫した『継続』があるからこそ可能なことである。継続の先には、生徒との信頼関係も育まれていく。

震災の記憶は風化しても子供たちの心にその記憶は残り続ける。学習、メンタルケア、人としてのつながり。遺児支援は誰にでもできる支援ではない。アップルの『継続』した一貫性と、それに伴う信頼、質を高めるための挑戦は、これからも『一人ひとりに応じた教育』に応え続け、求められる限り、震災遺児を支えていく。

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小林智都
小林智都
慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科3年