【移動販売業】いらっしゃい、いらっしゃい!新鮮な地元野菜あるよ~「産直ぽんぽこ」
2014年3月に一般社団法人ワカツクと河北新報が主催した記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が班ごとに取材した記事を紹介します!
ぽんぽこが届ける、あんしん感
「いつものおいしいみかん、とっといて~」
車道を挟んだ向かいの歩道から、年配の女性が呼び掛ける。
「はいよ」。ハンチング帽の店主、渡辺智之さん(34)が応じる。
仙台市若林区の荒町商店街の一角で、毎週水曜、土曜の日中、青果物販売の露店「産直ぽんぽこ」を開いている。
毎回、午前10時の開店前から、常連客が訪れ始める。
▲常連客と親しげに話す渡辺智之さん(右)=3月中旬、仙台市若林区荒町の「及川酒店」前
渡辺さんは同区荒浜で農業を営む。大震災の津波で実家を失い、広大な農地が塩害を被った。
約1年後の2012年4月、震災で近所のスーパーが閉店したり、慣れない土地に移り住んだりして、買い物が難しくなった人々のためにぽんぽこを始めた。
野菜類は、自作に加え、提携する周辺の被災農家5軒などから仕入れる。いずれも、「仙台地方の穀倉地帯」からの直送だ。
葉に朝露が光るユキナ、土をまとったニンジン、農家特製の手作りおこわやおにぎり。
十数種類に及ぶ色とりどりの地場産野菜類が、広さ6畳ほどの簡易テントの下に並ぶ。
「ぽんぽこで買うようになってから、子どもがトマトをよく食べるようになったのよ」。近所に住む中澤久美子さん(38)はうれしそうに話す。
渡辺さんは毎週木曜、若林区内の仮設住宅にも出向く。
荒浜出身の佐藤智恵子さん(77)は「スーパーは遠く、自転車はかごが小さいから2往復しなくちゃいけない時もあるの。だから、とても助かるのよ」としみじみ話す。
今年2月、仙台は記録的な大雪に見舞われた。
それでも、渡辺さんは普段通りに店を開け、足元の悪い中を多くの常連客がやって来た。
「野菜が売り切れれば、ぽんぽこさんも早く店じまいできるでしょう」と、口々に言われた。
「ホウレン草一把からでも直接届けに行きたい」。お年寄りへの訪問販売や御用聞きもしたいと考えている渡辺さん。
「小さな店だからこそ、地域に根差していきたい」
店名は当時4歳の息子が「お父さんのおなか、ぽんぽこりんだね」と言ったことに由来する。
安心感あるネーミング通り、客の食卓と心を満たしている。
渡辺みなみ(津田塾大卒)
桜田俊介(尚絅学院大3年)
菅原涼夏(東北学院大3年)
石澤脩(東北大2年)
この記事を書いた人
- 一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪
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