記者(個人)

宮城の“食”を裏で支える 復興の拠点

配川瞳 配川瞳
209 views 2014.03.03

 舞台上に魅せられれば、その裏側がみたくなる。「小さい頃、父に連れられて、レストランやホテルの調理場の裏側を見られたことが、少し誇らしかった」。宮城の流通の拠点、仙台市若林区卸町にある業務用卸売り会社「ほまれフーズ」の取締役専務、丹野真衣さん(38)は嬉しそうに語る。

▲食用花(エディブルフラワー)を紹介する丹野さん。
=8月27日、仙台市若林区卸町

 ほまれフーズが扱う商品は、「食」に関わるもの全般だ。野菜や果物だけでなく、箸や皿、洗剤まで多岐にわたる。市場や農家から仕入れた商品を、新鮮なまま宮城県内のホテルやレストラン、老人ホームなど400社以上の取引先に配送する仲介役だ。

 新しくオープンするレストランの経営者と、メニューから値段設定まで相談にのることもある。地元企業ならではの、きめ細やかな対応が売りだ。社員一人一人が商品への深い知識を持ち、情報収集を行うことで、注文を受けるだけでなく、新しい商品の「提案」にも力を入れる。

 東日本大震災が起きた。長時間続いた横揺れで、倉庫内に並べられたビネガーやオリーブオイル、ワイン等の瓶商品は棚から落ち、異臭を放った。他の商品の賞味期限も刻々と迫る。混乱の中、倉庫に保存されていた大量の食料を、近隣に住む人々へ直接小売りした。震災から3日後のことだ。スーパーやコンビニで食料が消える中、噂を聞きつけた人々で長蛇の列ができた。
    
 その後も、自衛隊からの注文や、近くの避難所で行われる炊き出しへの寄付などを行った。「食べ物で、被災地を元気にするお手伝いをしたい」。丹野さんは、震災での経験を通して“食”の大切さを改めて感じたという。

 「この仕事は、直接、お客さんの顔を見ることが少ないので、何の役にたっているのか実感することは難しいです。それでも、私たちがいなければ、食べ物は流通しません」。まっすぐにそう語る丹野さんの楽しみは、取引先のレストランに、自分たちが提案した商品をこっそり食べに行くことだ。「おいしそうに食べるお客さんの笑顔をみると、嬉しい」。

 なかなか、表舞台にはたたない。しかし、ここが宮城の“食”を支える、復興の拠点だ。

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この記事を書いた人

配川瞳
配川瞳
慶應義塾大学3年
慶應義塾大3年 神奈川県出身