「虹のおかしやさん」~障害のある人たちと社会をつなぐ掛け橋
お菓子作りで就労トレーニング
空に浮かぶ「虹」は、色も多様で境目も曖昧。特徴が人によって様々な自閉症はよく「虹」に例えられるという。
ブランド名は「虹のおかしやさん」。宮城県産米粉を100%使用したもちもちのロールケーキや地酒「一ノ蔵」の酒粕を使ったイチジクのパウンドケーキ。こだわり抜かれた食材を使ったおいしいスイーツが食べられるのは、仙台市青葉区大町にあるカフェ「schale(シャーレ)おおまち」だ。
自閉症や発達障がいがある男女10人が、就労トレーニングの場として働く。お菓子作りや皿洗い、料理の下ごしらえなどを通し、社会に出て、働いていくための訓練の役割を果たしている。
「自分が作ったお菓子が、『おいしかったよ』ってみんなに言われることがうれしい。いつか、街のお菓子屋さんで働きたい」。18歳の女性は、ほほを赤らめながら、少し恥ずかしそうに話す。
▲真剣なまなざしで、スコーンの生地を引き伸ばす女性 =2013年8月28日、仙台市青葉区
震災の3日後にはカフェを再開
開業してから10日後、東日本大震災が起きた。日々の変化に敏感な自閉症の人のために、出来る限りはやく日常を取り戻そうと3日後にはカフェを再開した。
カフェを運営する『ぶれいん・ゆに~くす』(仙台市)の事業担当、福原美樹さん(47)は、「なにがあっても、常にここにありつづけることで、お客さんにも、いつも同じ安心感を届けたい」と語る。震災から間もなく2年半。障がいがある人だけでなく、そこに集うお客さんにとっても「ほっとできる空間」を目指している。
カフェから生まれる理解の輪
「虹のおかしやさん」の評判を頼りに、カフェに人が集えば、調理場で働く障がいがある人の姿を見ることが出来る。「まずは、知ってもらいたい」。発達障がいの息子を持つ福原さんは訴える。カフェの片隅にそっと置かれた、自閉症に関する本は、そんな願いの現れだ。
「虹は、希望のシンボル。障がいがある人と社会をつなぐ架け橋になれば」と福原さんは語る。ほっと一息。おいしい香りに誘われて、互いの距離が近づくとき、少しずつ何かが変わり始める。
取材を終えて
慶応義塾大学総合政策学部総合政策学科 配川瞳
「誰のために、何のために記事を書くのか」。インターン期間中、デスクの方々に繰り返し言われ続けていたことです。意識していたつもりだったのに、1回目の取材では聞きそびれたことばかりで、何度もお店にお邪魔してしまいました。最初から取材にご協力してくださった福原さんだけでなく、カフェで働く障害がある人たち、常連のお客さんにまで話を聞き、それぞれにとってこのカフェが大切な居場所になっていることを強く感じました。私もこの場所が大好きになりました。
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