記者(個人)

伝統工芸、新たな挑戦

湯本勝大 湯本勝大
287 views 2014.02.27

見るものの顔が映るほど丁寧に磨かれた漆塗り。龍や家紋など縁起物をあしらった華やかな金具。職人の技が一つの箪笥（たんす）に集約されている。

仙台市若林区南鍛冶町にある門間箪笥店。仙台箪笥を作り続けて１４１年の老舗だ。同社７代目、専務の門間一泰さん（３９）は、仙台箪笥を「見栄っ張りだけど憎いやつ」と表す。

仙台箪笥は元々武士の箪笥だった。他の箪笥よりも漆を塗る回数も多く、たくさんの金具で箪笥を飾る。「正直ここまでやる必要はない」という。伊達政宗の流れを汲み、伊達男たちの好みに合うよう、派手に作られてきた。見栄を張り続けて現代まで受け継がれている。

門間箪笥店は仙台箪笥をビジネスとして市場に挑んでいる。その一環が「monmaya+（モンマヤプラス）」である。２人のデザイナーと共同でコンソールやローテーブルなど新たな作品を発表。時計や花瓶などを置く足付きの机は、欧米文化を感じさせる。日本の伝統工芸である箪笥を洋室にもマッチさせるように変化させた。

「誰が見てもカッコイイものを作りたい」。門間さんは意気込んだ。「カッコよくないとみんな買わないでしょ」

▲monmaya+を横に将来の展望について熱く語る門間一泰さん＝８月２７日、門間箪笥店

なぜ老舗の箪笥屋が箪笥の形にとらわれない商品を生み出しているのか。「箪笥を作る技能を残したい」と門間さんは強調した。

それを強く実感したのは東日本大震災だった。震災以降、箪笥の修理依頼件数は２０件から２倍に増加した。震災対応で家の倉庫などを片付けていた際、祖母の箪笥をたまたま見つけたから。嫁入り道具としてもらったものだから。

直して、また使いたいと思ってくれる人がいることが会社の価値だと思うようになったという。「１００年後、修理を依頼されても、技能が残っていなくて直せなかったら無責任じゃないですか」

技能を残すために「現代の生活様式に合わせることが必要」と訴える。
「monmaya+」のターゲットは３０代から４０代のファッション感覚を持っている富裕層。来年、青葉通に新店舗を出店予定で、２年後には首都圏に、将来的には海外進出も視野に入れているという。

「街中の人々の声を吸い上げて時代のニーズに合ったものを作っていく。強気の情報発信をしたい」と力強く語った。

江戸時代から受け継がれてきた仙台箪笥は平成という時代のもとでさらに「伊達な」ものへと変化しようとしている。

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