【動画】形にないものを形にする~復興を目指す左官屋の今~
みんなのおうちの壁を作る大切な仕事
みなさんの部屋の壁が、どのように出来上がっていくか知っていますか?
今日ご紹介するのは、身近なようで遠い存在、みなさんのおうちの壁を作る左官屋さんのお話です。
震災から3年目を迎える建設業の、意外な状況を聞きすることができました。
ぜひ、こちらの動画からインタビューをご覧ください。
今回も動画の内容を全て文字起こししましたので、動画が観られない方はこちらもどうぞ。
左官屋ってなにをするの?
本日はクレア工業の佐藤社長に話しを伺います。本日はよろしくお願いいたします。
佐藤宏樹 社長
よろしくお願いします。※クレア工業株式会社の若き社長。
目つきは怖いが人柄はとても優しい。
クレア工業さんは左官屋さんということなんですが、『左官屋』というのはそもそもどういうお仕事なんでしょう?
塗装屋さんは液体を塗りますよね。タイル屋さんは個体を張り付ける。左官屋は、その中間のどろっとした、ホットケーキミックスみたいなやつを壁に塗って、壁をまっ平らにするっていうのが、大きく分けると左官の仕事ですね。
畳の部屋のザラザラなアレ
一番身近なところだと、和室の壁。こう指で触ると緑色とかの砂っぽいのが削れてくる壁ありますよね。あれは左官の仕事で、聚楽(じゅらく)壁っていうようなもの。ああいうのを左官屋さんが仕上げている。あとはお寺とか神社の白い壁。あれは漆喰(しっくい)と言って、あれも左官屋さんの仕事なんですね。
復興にかける思い
はい、うちらは建設業でいろんな建物をやってるんですけど、主に復興住宅ですかね。あの東日本大震災でおうちを失くしてしまった方が、住まうための住宅ですね。集合住宅であるとか、そのほか、復興に関わる仕事を今すごく多くやってます。
震災から2年半くらいが経って、まだ復興事業が一番忙しいというのが、やっぱり、私としては衝撃的なお話だなと思ったんですけど、復興事業は今、どういった状況なのか、詳しく教えていただいてもよろしいですか?
はい。震災から2年半、もう少しで3年が経とうとしているんですけど、まずはですね、人がいない、ということ。実際に作業員さんがいないとか、材料がないというのがネックで、震災復興事業としては遅れているのかな、という印象を自分としては持ってます。
人材不足という現実
そこに一気に工事量が(震災によって)爆発的に増えたために、人材不足、材料不足といった状況が起きていますね、はい。
震災復興事業を早く進めなくてはいけないのに、人手が足りていないということで、なかなかうまく進んでいないという状況なんですね。
そうですね。本来ならばもっと早くやらなくてはいけないんでしょうけども、そこが我々建設業としてもジレンマというか、もっと早く工事を進めて、仮設住宅に住んでいる方たちに、寒い思いをしないで、安心で、本当に休まる空間を提供したいと思っているんです。
でも人がいなくて進められないというのが残念というか、悔しい思いをしているところですね。
今、頑張らないで、いつ頑張るんだ
お話をお伺いしていて、クレア工業さんの復興事業にかける思いというのが強く感じられたんですけど、思いを持って関わっているのは、どういうお考えがあってのことなんでしょうか?
震災の時ですね、実際うちの社員の家が、津波にのまれて、土台だけになってしまったりとか、流されなかったけど浸水してしまって住めなくなったりもして、いまだに、仮設住宅に実際うちの社員が住んでるんですね。当社の倉庫も被災して、使えないような状態になってる、ということもあって。
そういった状況をまじまじと自分自身も見たし、社員もそういった状態にあるということを考えると、すごく(震災というものが)身近で、他人事でなくて自分事になっているので、そういったことを見たり聞いたりしていると、やはり我々がやろうとしていた、建設業を営む者の使命というのは、今ここで発揮しないと、我々のいる意味がないというか、ね。
建物を使う人、住まう人に安心安全を提供するのが我々の使命なのに、今頑張らないで、いつ頑張るんだと。この復興は、我々にしかできないという思いが、必然的にそこから湧いてきたということですね。
やっぱり職人さんと聞くと、男性の方がほとんどなのかなというイメージがあるんですけども、たとえば女性の職人さんもいたりするんですか?
はい。確かに建設業全体で見ても左官の業界で見ても、ほとんど男性の世界ですよね。ただ、うちの強みとしてあるのが、『若い世代が多い』というのと、『女の子の職人さんがいる』ということですね。仕事内容は全く同じですけど、実際うちの会社には女の子の職人が2人いて、男の職人となんら作業内容が変わらず、もしかしたら男の職人よりたくましいんじゃないのか、という感じで働いていますね。
左官士という仕事とその魅力
では実際に女性の職人さんにお話しをお伺いしていきたいと思います!左官士さんのお仕事をしようと思ったきっかけを教えていただけますか?
草彅千尋さん
きっかけは、元々宮大工になりたくて、そこからいろいろ思って、左官の方に進もうという気持ちになりました。※女性左官士。
全国でも珍しい一級左官士の資格を持つ凄腕職人。とてもシャイ。
お仕事の、どういうところに惹かれましたか?
元々神社とか仏閣を見るのが好きで、そういう仕事に携わりたいと思っていたので、いろいろテレビで、とか、本とかで調べて、左官という仕事を知りました。
職人さんは男の人が大半だということだったので、職場で周りも男の人がほとんどかと思うんですけども、そういう環境でお仕事をしていてどうですか?
今まで、工業高校出身で、男子の方が多い環境だったので、逆に女子が多い方が、緊張します…。
そうなんですね(笑)
現場で腕磨き資格取得
はい。実地と学科の2部構成って言うんですかね…?
うん、うん。
一級の左官技能士の資格を持っている女性は本当に少ないと聞いたので、すごいなぁ、と思うんですけど。
そうですね。仙台市とか、宮城県でもあまり聞いたことがないですね。
やっぱり(資格を)取るのは大変でしたか?
取る、のは…日頃現場で練習したりとかして……たので。
(笑) 現場で技術を身につければ取れる!という感じですか?
そうですね。
左官のお仕事の魅力ってなんですか?
魅力、ですか? 魅力は……形にないものを、形にすることが、一番の魅力だと思います。
住む人にやさしい家づくり
クレア工業では、復興住宅の建設事業のほかに、左官の技術を生かしたリフォーム事業を行っています。化学物質を含まない、自然の素材を利用することで、住む人にやさしい家づくりを目指しているのだそうです。気になる方は、ぜひ、クレア工業のHPをご覧ください。
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