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おしごとストーリー episode.2~ 「仙台のお正月」を支える仕事

近藤 京子 近藤京子
875 views 2014.01.01
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仙台雑煮に爽やかさを添える“アレ”

お正月に欠かせない料理といえば、お雑煮。
仙台雑煮は、焼きハゼで取った出汁に、ひきな(千切りにした大根と人参をゆでてから凍みさせたもの)、ズイキ(サトイモの茎を干したもの)、鶏肉などが入ったお澄ましに焼き餅。仕上げにイクラとセリを乗せるのが伝統のスタイルといわれています。

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最近のお寒いサイフ事情などにより、値の張る焼きハゼやイクラは省略しても、セリのない仙台雑煮は、締まりません!

うまいセリを訪ねて名取へ

向かったのは仙台市街から10kmほどの名取市下余田。名取川の伏流水が豊富なこのあたりは380年も続くセリの特産地で、「仙台セリ」として県外にも多く出荷されています。
セリといえばこの人、三浦隆弘さん(34)。丸顔に優しい笑顔が素敵な、セリ農家の7代目。冬の仙台グルメとしてファン急増中の「仙台せりしゃぶ」の仕掛け人でもあります。「三浦さんのセリ」と聞いて、ピンとくる人は、なかなかのグルメですよ。

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お邪魔したのは師走も押し迫った12月22日。約30アールの「セリ田」には、みずみずしい緑が一面に広がります。そうです、これが全部セリ!セリが、水を張った田んぼで栽培されるって、知ってましたか?

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収穫の様子を見せてもらうべく、三浦さんの後ろについて、あぜ道を進みます。

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田んぼの深さは、ひざ下あたり。ひざを付いて、セリを摘みます。

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セリ栽培には豊富な水が不可欠で、セリ田は24時間井戸水かけ流し。常にきれいな水が田んぼを循環しています。

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摘んだセリを水の中でゆすりながら洗い、根っこの泥を落とします。

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う…美しい!なんてキレイな根っこ。
三浦さんのセリの特徴は、この真っ白な根本から根っこにかけてのおいしさ。「仙台せりしゃぶ」とは、鴨肉や鶏肉のうまみたっぷりの出汁に、この根っこをしゃぶしゃぶして味わう絶品グルメなのです♪。

三浦さん:食べてみてください。

田んぼで食べる摘みたてのセリ。根っこをいただきます。

近藤あまーーーーーーーーい!

下余田の冬空の下、思わず絶叫!
セリが甘い…衝撃の事実です。えぐみがなく、シャキシャキとした小気味よい食感に覚醒。かむほどに、爽やかな香りが鼻孔を抜けていきます。なんじゃこりゃ~。

生態系のド真ん中で感じること

三浦さんは、宮城農業短期大学に通う学生時代、環境問題に取り組む市民ボランティア活動に出会いました。環境に高い関心を持つ消費者と一緒に活動するうち、収量を多く取る、数をそろえるといった慣行栽培とは別な価値観で、環境を守りながら農業ができないかと思うようになったそうです。
そうして始めた有機栽培は、今年で15年目を迎えました。

三浦さんの1日のスケジュール(冬場)

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セリの収穫は10月末~4月まで。冬は早朝に田んぼの水が凍っていることが多く、室内作業からスタート。セリを摘み、丁寧に根っこを洗い、根気よく選別し、出荷する。寒さの中で行う作業は厳しく、単調な作業の繰り返しです。

三浦さん:毎日の作業が楽しいんです。単調だからこそ、気づくことはいっぱいある。

セリを摘んだついでに田んぼの底から芋虫や小さな巻貝が浮かんでくるのだとか。ドジョウやカエルも増え、それらを狙って野鳥も集まってくる。水面にはかわいらしい小さな水草が浮かんでいます。
薬剤を使わない、有機栽培を根気よく続けてきたことで「生態系が豊かになっていく」様子を日々、実感しているそうです。

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取材中も三浦さんが田んぼに入ると、待ってました!とばかりにセキレイが集まってきました。
お目当ては水面に浮かぶ虫や巻き貝。

近藤:三浦さんの姿は彼らにとってご飯の合図なのかも(笑)

そうして身をもって感じた農業の楽しさを子どもたちに伝えるため、三浦さんは農業のかたわら、「なとり農と自然のがっこう」を主催。セリを収穫して試食したり、田んぼで古代米を作ったり。子どもたちが体験を通して農業の面白さ、食べることの大切さを感じてもらう場づくりにも力を注いでいます。

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セリも人も“刺激”が大事

セリの消費のピークはお正月前後。お雑煮と七草がゆで需要は高まります。

三浦さん:最もおいしくなるのは2月~4月。寒さが刺激となって、甘みが増します。人も順風満帆よりも刺激があったほうが成長できるでしょ(笑)

作業場では三浦さんの頼れるパートナー、奥様の徳子さんがセリの選別作業の真っ最中。

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1本1本、枯れた部分やゴミなどを丁寧に取り除きます。
セリは機械化できない作業ばかり。ヒューマンパワー全開で丁寧に仕上げていきます。

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三浦さんの描く未来って?

三浦さん:生産者の厚みを増していきたいですね。若手の就農支援や農家のインターンシップやキャリア教育もやっていきたい。今までお世話になった人たちの期待に応え、先達から受け取ったバトンをつないでいきたいですね。

新聞も、お雑煮も、それにかかわる人たちの想いや仕事風景を知ることで、めくるページ、かみしめる味も、なんだか変わってきますよね。

今後もたくさんの「きになる おしごと」を取材していきますので、お楽しみに♪

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この記事を書いた人

近藤 京子
近藤 京子
編集長/ライター
編集長の近藤です。ライター歴は十数年になってしまいました。座右の銘は「止まない雨はない」。裏の座右の銘は「締切はゴムひも」。でもこれは撤回しようかなと思っております。最近は「涙腺がゴムひも」。年取ると涙腺が破壊されます…。