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見えないものを超音波で視る?建築物の安全を守る「溶接検査株式会社」

加子 瑞騎 加子 瑞騎
360 views 2019.12.26
加子 瑞騎 加子 瑞騎 東北大学
今年度から大学で「非破壊検査」を学ぶことになりました。非破壊検査とは、文字通り「ものを壊すことなく」内部の情報を知る検査です。身近な例でいえば、X線を使ったレントゲン検査があります。X線のほかにも、超音波や磁力など使う手法はさまざまです。レントゲン以外で使われているところはないだろうかと探したら、多賀城市にありました。今年で創業35周年、気になったので取材してきました。

溶接検査株式会社ってこんな会社

JR多賀城駅から歩いて15分、歌枕(昔から和歌に読まれてきた名所)として知られる末の松山、沖の石を横目に見ながら歩くと、住宅街の中に「溶接検査株式会社」はあります。

建設会社から仕事を請け負い、溶接部の検査を行っています。創業当初から建築物の溶接部を対象としており、今年で35周年。従業員数は検査員12人、事務4人、営業3人で合わせて19人です。

代表取締役の辻󠄀迫隆美(つじさこ・たかみ)さんにお話を伺いました。


▲辻󠄀迫さん。先代社長の体調不良をきっかけに業務提携を結んだ「株式会社シーエックスアール」から、6年前に代表取締役に就任しました。

仕事内容は、溶接部の「第三者検査」です。溶接は金属同士を溶かしてくっつけることが出来るため、建築物の骨組みなどさまざまな用途で使われます。しかし、正しく溶接が行われないと、内部に気泡やひび割れができ、壊れやすくなってしまいます。
そこで、溶接が正しく行われたかを検査する必要があり、溶接を行った会社とは別の会社が行う第三者検査が必要となります。この第三者検査を請け負うことが、溶接検査株式会社の仕事です。

仕事現場は、鉄工所と建築現場の2種類。
鉄工所は溶接の環境も良く、既に社内検査(鉄工所が自社で行う検査)を全ての溶接部に対して済ませているので、対象溶接部の一部を抜取り検査を行います。
対して、建築現場での溶接は屋外で行われるため良い溶接環境とは言えず、全ての溶接部が検査対象となります。


▲第三者検査の様子。

溶接検査株式会社では、「超音波」を使って非破壊検査を行っています。
超音波は非常に高い音で、ものの中に伝わる特性があります。壁越しであっても声が伝わるのを想像するとわかりやすいですね。
また、中身が均質であれば直進しますが、異物や気泡があると反射します。そうして反射してきた超音波を測定することで、溶接部の内部に異常が無いか調べます。

▲超音波を使った非破壊検査のイメージ図。超音波を入射する角度を変えることで、真下だけでなく角のきずも調べることが出来ます。

出張所が青森、山形、秋田にあり、北は青森、南は福島までカバーしています。
元々は東北6県を対象に仕事を行ってきましたが、辻󠄀迫さんが社長に就任してから新たに2つの事業所認定を受けたことで、東北で製造され東京に出荷される建築材の検査も出来るようになり、仕事の幅が広がりました。

仙台の企業魅力

1人1人に受け継がれる技術力

溶接部の検査方法には、「X線」と、溶接検査株式会社が取り扱っている「超音波」の2つの検査方法があります。
X線を使った検査は、レントゲン写真と同様にフィルムに焼き付けた画像が得られるため視覚的にわかりやすいのですが、反面、夜にしか検査を行えなかったり機器が大型化したりするなどの欠点を抱えています。
超音波による検査は、機器の小ささが魅力で、時間や場所に関係なく行えます。しかし、得られる結果は反射してきた超音波という限られた情報です。そこで、検査員には得られた結果を読み解く知識や能力が必要となってきます。

これを可能にしているのが、会社で受け継がれる技術力です。1人前になるまで先輩の検査員について仕事に行き、検査のノウハウを学びます。また検査には資格が必要なので、資格取得のための勉強も行います。
そうして3~4年の長い時間をかけて、1人前の検査員に育っていきます。1人前となれば、1人で車1台・検査機器1台で仕事を行い、現場の方とのコミュニケーションや検査報告書の作成など、多くの仕事をこなせるようになるのです。


▲校正(検査機器の調整)をしている検査部長。1人前になったかどうかの判断は検査部長が行います。

仕事の受注は依頼から

目に見えないものを検査するこの仕事において、「信頼」は絶対不可欠です。
上のミリョク1のように、1人1人が高い水準で仕事をこなすため、顧客の信頼を得て、仕事を行っています。


▲第三者検査を行う上で必要な認定書。

若者に求めること

辻󠄀迫さんは「今の若者にはもっと質問をしてほしい」と話していました。分からないときには、すぐに聞いてほしいといいます。

「最初は分からなくて当たり前なので、恥ずかしがる必要はありません。分からない時に聞くほうが理解も深まりますし、教える側も答えやすいです。特に溶接の現場は毎回少しずつ状況が違うため、質問の機会を逃すと同じような現場が次にいつあるかわからず、分からないままになってしまいます」。

僕は、今まで質問する側として話を遮ることに気を使っていましたが、教えてくれる側の人の考えは違ったのですね。確かに、大学でも「授業中に質問してほしい」と、同じような話を聞いたことがあります。恥ずかしがらずに質問しようと思います。

今後の展望

将来的には、プラント・インフラ関連の検査も視野に入れていきたいといいます。
現在は、建設物への検査を中心に仕事を行っていますが、検査が必要なのは新規に建設を行うときです。ある程度建物が建ってしまうと、老朽化による取り壊しまではそこに新規の建築物は生まれず、検査の需要はありません。そこで、仕事の幅を広げるために、プラント・インフラ関連の検査の受注を目指しています。
うれしい悲鳴ですが、今は建築関係の仕事が忙しく、なかなか実行には移せていないそうです。

非破壊検査がプラント(大型の工場)やトンネルの老朽化調査に使われていることは知っていましたが、もっと身近な建築物にも使われていることは知らず、勉強になりました。仕事を1人でこなすのは、単純にかっこいいと思いました。
取材した中で一番驚いたのは、採用の面接で重視するのが「コミュニケーション能力」だったことです。資格は勉強すれば取れますが、コミュニケーション能力はそうはいきません。現場の方と話す機会の多い仕事柄、欠かせない能力だといいます。どんな仕事であっても人と関わることはあるので、欠かせない能力だと思いました。ぜひ今のうちに僕も身に着けたいです。

加子 瑞騎加子 瑞騎東北大学
文章:加子 瑞騎(東北大学3年)
写真:長崎 陽平(東北大学4年)
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溶接検査株式会社
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この記事を書いた人

加子 瑞騎
加子 瑞騎
出身は愛知です。一人暮らしを機に、料理を頑張っています。せっかく仙台まで来たので、この土地のグルメ、また取材を通して中小企業に詳しくなります!