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タクシーで福祉?社会問題に取り組む「仙台中央タクシー株式会社」神田稔さん

シズカ シズカ
992 views 2016.02.02
いぐするテラス2016年1月12日のゲストは仙台中央タクシー株式会社、専務取締役の神田稔さんです。大正12年(1924年)に仙台市で創業してから92年の仙台中央タクシー。白地に青と緑の線、赤い文字が車体に描かれたタクシーに見覚えのある人も多いのでは。
「いつでも次のことを考えている」と言う神田さんが、タクシー会社の新しい取り組みを話してくれました。

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提供:仙台中央タクシー株式会社

タクシーで福祉?社会問題に取り組む会社

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仙台中央タクシーはタクシー業と介護・福祉を組み合わせた新しいプログラムを検討しています。「人」と「車」に焦点をあてた取り組みです。
その一つが福祉施設への送迎です。福祉業界の人手不足は社会問題としてニュースでもたびたび取り上げられています。また、施設で保有しているバスを使うのは利用者を送迎する朝と夕方。その他の時間、車は車庫に入れたままになることが多いといいます。一方、タクシー会社の役割は人を運ぶことですが、朝と夕方の送迎だけではビジネスとして成り立ちません。そこで、仙台中央タクシーは送迎以外の時間はスタッフとして施設で働ける社員を派遣するプログラムを試みています。
「地域の足をどう確保していくかも大事です」神田さんはいいます。「新たなバスを購入して運用していくことは継続性がない。今の資源を使うことが大事だと考えています」。施設やスーパー、学校で朝と夕方など決まった時間にしか使われない車を交通過疎地域に提供できないか。地域の人に寄り添い、必要な人に対してどうサービスを提供するのか、本業とどうマッチングするのか・・・課題は尽きません。
「福祉に対して社員全員が抵抗なく対応できることが理想だと考えています。そういう志がある人、そこまでではなくても、これからチャレンジしてみたいという社内の雰囲気も大切です」と神田さんはいいます。「最大限のプログラムと人材育成で、最大限役に立ちたい」力強い声で話してくれました。

介護タクシーはライフワーク

生まれも育ちも仙台の神田さん。本当は警察官になりたいと考えていましたが、東北学院大学を卒業後、仙台中央タクシーを経営していた祖父に手伝うよう声をかけられ会社に入ることを決意しました。社会人生活は一社員として現場のタクシーの運転手から始めます。弾んだ声で「こんなにおもしろい仕事はないなーと思った」という神田さんの表情も嬉しそう。「色々な世代の方と出会えたのが楽しかったです。自分ひとりしか乗っていないので、慣れない仕事とお客さんとのコミュニケーションに最初は苦労しました。でも人との距離感だとか話すタイミングを見つけられたことですごく楽しくなりました」。当時はちょうどバブルが終わろうとしていた時代、今では道に客待ちのタクシーが並んでいる国分町も、車が出払ってなかなか乗れないくらいだったといいます。神田さんは現場で1年間勤めた後、内勤の管理者になりました。「朝、運転手や車両の点検が終わるとやることがない。これでいいのかな?と思いました」。
状況が大きく変わったのは平成14年(2002年)の規制緩和後でした。タクシーの参入条件が大幅に緩和された結果、「需要と供給のバランスが崩れてしまったと感じます。平成21年には業界の質も会社の経営状態も悪化していました」。

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仙台中央タクシーが規制緩和の前から取り組んでいたのが「介護タクシー」です。
タクシーの利用者は業界全体でも60歳以上が5割以上だといいます。バスや電車、自家用車と並び、タクシーも重要な交通手段の一つ。利用する目的は通院、買い物など、交通手段がない移動困難者も含まれています。
多くのタクシー会社が介護タクシーに参入したものの、有資格者の不足、申請書類の作成や書類を受付けるための体制づくりなどの煩雑さに対して収益が低いことから撤退しているそう。仙台中央タクシーでは「撤退はしない。将来必ず事業の柱になる」と考えていました。
ヘルパー資格が必要とされる介護タクシーですが、タクシー会社が資格保持者を確保することは難しいといいます。仙台中央タクシーでは、運転手が介護資格や施設研修を受けることで人材不足を解消しました。また、管理者のうち1/3は有資格者なので、いつでも対応できます。
神田さん自身も資格を取得し、担当している利用者もいました。「いつも利用していた方が突然入院して亡くなったときは、落ち込みました。自分の親族以外でこんなに悲しい思いをしたことはなかった。でも」と続けます「経営は厳しい状況でもやり続けないと。困っている人たちのサポートをどれだけできるか。覚悟を決めました」。介護タクシーは、予約して利用するのでお客さんとの関係性が築ける、会社の評価もあがるということだけがメリットではないといいます。「お客さんが待っていてくれていること、訪問することで感謝されることが多いので、サービスを提供している運転手のモチベーションも上がります」。
「今までも介護は妥協しなかったし、チャレンジもしてきました」神田さんはいいます。「これからもビジネスとしても、ライフワークとしても取り組んでいきます」。

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▲福祉車両(寝台車) 提供:仙台中央タクシー株式会社

タクシー運転手を「憧れの職業」にしたい

他にも似たようなことをやっている会社は沢山あると思う。だからこそ、電車バスに代わる第3の交通機関として考えたときに確立していること、仙台中央タクシーにしかできないことを追求していきたいと話す神田さん。「タクシーの運転手も憧れの職業にしたい」といいます。「なんで若いのにタクシーの運転手なんかやっているんだと、お客さんに言われたときに『やっぱりそういう見方をされるんだ』とがっかりした。自分がこの会社でやっていく以上、その疑問が非常識に変わるようにしていきたいんです」。
憧れの職業にするには、他と同じことをやっているだけでは今のイメージは拭い去れません。新しいプログラムを考え、必ずそれはできあがると力強く話す神田さんの話を聞いて、参加者は口々に、「知っているようで知らなかった話を聞けた」、「地元ではタクシーは縁遠い。でもタクシーのあり方に幅があるし、伸びしろがあると思った」と弾んだ声で感想を話してくれました。

文章:安部静香(いぐする仙台)
写真:小幡竜一(東北工業大学4年)
写真提供: 仙台中央タクシー株式会社
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この記事を書いた人

シズカ
シズカ
ライター
「そんなに寒くないよ」と言われる仙台の冬が苦手な冬生まれ。
おいしいもの大好き。美味しいお店から発せられるオーラ(?)を感知するのが得意。
活字中毒気味。働いてなければ間違いなく冬ごもりします。